なり手不足 妙案手探り 34町村議無投票 | くしろぐ

なり手不足 妙案手探り 34町村議無投票

■報酬増の動き

統一選告示日の19日午後4時すぎ。蘭越町議選には現職7人と新顔2人の計9人が届け出ていたが、定数には1人足りなかった。

4時半ごろ、元職の中島信幸さん(72)が立候補に現れた。その30分後、中島さんを含む10人の当選が決まり、選挙が終わった。

「だれか来たら退くつもりだったが、結局来なかった。住民の代表たる議員の欠員は望ましくない」と中島さんは話す。

■「地縁・血縁が左右」

20年ぶりの無投票となった置戸町(定数10)。現職9人が信任された形だが、「定数割れ」になった。

「政策がすばらしいとか、議会で活躍しているとかでは票にならない。地縁・血縁がどれだけ多いかで決まる。しがらみでがんじがらめだ」。当選後、町議の1人はこう漏らした。

今回の統一選で、道内では100町村議選が告示されたが、前回2007年を15町村上回る34町村議選が無投票。議員の担い手不足は深刻さを増している。

選挙戦に入った町村も、事情は変わらない。

中川町議選(定数8)は「定数割れ」が懸念されたが、結局、9人が立候補した。亀井義昭町長も地縁・血縁の弊害を指摘しつつ、「地方議会では公共性の議論が深まらない。そんな様子を見ているから、議員になろうとする人がいないのではないか」と推測する。

このような状況について、山崎幹根・北大公共政策大学院教授(地方自治論)は「地方政治が危機的状態にある」と分析する。

その上で「行政チェックや議会の活性化、情報公開などの活動が確保されるなら、地方議員の役割や対価に見合う報酬アップは認めていい」と提言する。削減される傾向にある議員報酬を「民主主義のコスト」とみる考え方だ。

釧路町議会は昨年11月、議員報酬を引き上げる改正案をまとめた。4年前の町議選が、1955年の町施行以来初の無投票になったことがきっかけだった。

ある町議は「報酬の低さから若い人が出にくい。このままだと資産のある人や定年退職した人しか手を挙げない」と危機感を持つ。

改正案は議員の報酬を19万円から21万円に上げるため、現行定数のままだと年間7千万円近い負担増になる。行財政の再生プランを進める町は「町民の理解が得られない」(佐藤広高町長)と反対姿勢を示し、議論は休止したままだ。

■町長が4割増諮問

一方、白老町の飴谷長蔵町長は1月中旬、議員報酬を20万7千円から8万9千円増(43%)の29万6千円に引き上げるよう、報酬審議会に諮問した。

「今の報酬では生活できず、議員のなり手がいなくなる」との危機感が飴谷町長にはあった。報酬を上げることで、議員となる魅力を高める狙いもある。

同町議会は08年から「通年議会」を導入。年間の活動日数は延べ204日で、導入前より約50日増えた。

ただ議員の多くは「大幅な引き上げは難しい」とみる。町財政が厳しく、町長、職員とも給与を削減しているからだ。

経済状況が好転しない中、仕事ぶりが見えにくい議員の報酬を上げることへの視線は厳しい。住民を代表する議員の資質とともに、その報酬が「必要なコスト」と認識される不断の努力が道内各地で続く。

朝日新聞
http://mytown.asahi.com/hokkaido/news.php?k_id=01000001104220004