【拙文】津波ハザードマップの欠点 | くしろぐ

【拙文】津波ハザードマップの欠点

今回の津波災害を受け、日本全国の各自治体は津波ハザードマップの改訂を行い、それを発表した。
国民の不安を解消すると言う意味では間違いなく有り難い発表である。
各自治体の迅速な対応と努力に心から謝意を表明したい。

しかし、可能ならばその津波ハザードマップがどのようにして設定されたか?の透明化を一人の国民として願い出たいと思う。
自分は個人的に宮城県へ津波ハザードマップの改訂及びその設定がどのようにして行われたか?をEメールにて質問したが、未だにその回答は得られていない(忙しさもあるだろうし、いくら返答が遅れても構わないと考えている)。

そして、その質問には自分が想定する津波ハザードマップの欠点を添えた。
津波ハザードマップの想定される欠点とは以下の通りである。

海洋や河川、湖池には月の重力などの影響から潮の満ち引き(潮汐)が行われるのは殆んどの方々が知っての通りだ。
それらは海洋学で「最低水面」「潮位基準水面」「平均水面」「最高水面」の4段階で認識され、その様子を数値として記載する潮汐表(潮位表/潮見表)では、潮位基準水面を0と考えて潮位基準水面から+-記号を付けて増減を表している。

最高水面はそれ以上に水面が上がらない位置、最低水面はそれ以下に水面が下がらない位置、平均水面はその間の位置、潮位基準水面は水面の上下幅が最も広い大潮の日の最も低い水面の高さである(最低水面と潮位基準水面は別物で、余り高さは変わらないが最低水面より潮位基準水面の方が微妙に高い位置となる)

潮汐表で+150と記載されていれば潮位基準水面から150cm高く、-20と記載されていれば潮位基準水面から20cm低いと言う事となる。
例えば釧路ならば+174が最高水面で、-18が最低水面である。

さて、もし各自治体が想定する津波の最大波高が平均水面や潮位基準水面を基準にして想定しているとするならば一体どう言う事が起きるのであろうか?

釧路市でも今回の津波災害を受けて改訂版津波ハザードマップを公開し、その想定津波最大波高は1200cm(12メートル)との事だ。
これが平均水面や潮位基準水面からの想定だと言うのならば、自分は必ず“想定外”が発生すると断言する。
何故ならその1200cm規模の津波が最高水面を記録する満潮時に発生した場合、単純計算で平均水面想定だと1296cm、潮位基準水面想定だと1374cmの津波となるからである。
釧路では潮の満ち引きを試算に入れると1300cm(13メートル)級、または1400cm(14メートル)級の津波を想定しなければならない。

他の地域でも最高水面から津波波高を想定しなければならないはずだ。
各自治体は早急に何を基準にして津波波高が想定されたかを確認する必要がある。
これは沿岸へ隣接する全ての自治体へ自分が警告する現行の津波ハザードマップに想定される欠点だ。

中にはしっかりと最高水面から津波波高を想定している自治体もあるものだと信じたいが、最もやってはいけない想定は津波波高を陸地の標高から想定する事だ。
海洋以外にも河川や湖池などの水辺は少なからず上下する。殆んど動かない陸地から想定する事は愚の骨頂だ(海岸線は最高水面の位置で決定されているので、海岸線からの津波波高想定は有り)。

何故、自分が地域によっては数十cmの違いにしかならない差へ躍起になるかと言えば、津波は成人男性だと50cmで確実に押し流し、小柄な成人女性または子供は30cmで押し流して死に至らしめる可能性があるからだ。
津波の最も低いレベルの注意喚起である「津波注意報」は50cm以下の津波が予想される時に発令されるものである。
つまり、津波注意報が発令された時点で死者が出るおそれがあると認識して貰いたい。
そして、数十cmの違いが“想定外”を呼び起こすのである。

「想定外だった」と今後は口にしないようこの警告を広く実践して欲しい。

◇参考◇
北海道新聞
http://www5.hokkaido-np.co.jp/motto/20050709/

tide736.net(個人サイト)
http://tide736.net/doc/?page=1#doc01