雄で作る「Mr.ししゃも」 | くしろぐ

雄で作る「Mr.ししゃも」

■色黒はうまみの証し

黒っぽい魚の身を手で裂くと香ばしいにおいが立ちのぼる。釧路市漁協が販売する燻製風味の「Mr.ししゃも」(3匹入り280円)。雄である。

「雄のシシャモの活用は釧路の長年の課題でした」。同漁協総合流通加工事業部の長沢洋介販売二課長(55)は話す。

道内の太平洋にのみ生息するシシャモ。産卵を迎えた魚群は10月上旬から11月下旬にかけて、胆振地方の鵡川や日高の沙流川、十勝の十勝川と東に移動しながら各河川をさかのぼる。

白糠町の庶路川や釧路市の新釧路川周辺の漁はシーズン終盤。成長した魚も多いが、産卵間近は雄だけが見た目悪く、黒ずむ。

シシャモは子っこ(卵)を持つ雌の方が値が高い。味は変わらないのに、黒いとさらに嫌われる。

釧路市内の市場価格で雄は雌の半値から3分の1ほどになるという。「むかわ町など他産地からの引き取り手も少なく必ず余る。困りものでした」

従来から昆布巻きなどがあるが、新たな加工品を試行する中、一昨年12月にアイデアが生まれた。この時期、漁協で製造する「鮭とば」の燻液につけ、乾燥してみた。雌は子っこが邪魔してべたっとするが、雄はほどよく水分が抜ける。一段と黒くなったが、うまみが増した。

液につける時間や乾燥の仕方、日数を工夫し、完成は昨年5月。パートの従業員らから商品名を公募、雄を前面に出そうと「Mr.」とつけた。

昨年7月の発売後、JR釧路駅や釧路空港などの土産物店での販売のほか、ビール会社に協力し札幌でのイベントで酒のつまみに提供。知名度は向上中だ。

さらなる販路拡大がカギで、今年1月に東京都内のデパートの物産展に出品。一週間で1千パックを販売し、居酒屋チェーン店との取引も始まった。

常温保存できるので鮭フレークとともに、道漁連を通じて東日本大震災の被災地に送られた。「本当のシシャモを知らない本州の方が受け入れてくれるかもしれません」。長沢さんは期待をかけた。
(古源盛一)

《釧路市漁業協同組合》 1949年設立。加工部門ではサンマやサケのほか、カレイなどの干物があり、2009年度の加工事業取扱高は約20億円。正・準組合員は53人で、シシャモ漁に携わるのは32人(休漁含む)。

組合の職員は93人。所在地は釧路市浜町3の12。

朝日新聞
http://mytown.asahi.com/hokkaido/news.php?k_id=01000261104130001