道内、途絶える客足 アジア観光客ほぼゼロ 飲食は宴会自粛相次ぐ
東日本大震災の深刻な影響が、道内の観光、飲食、物販など幅広い業界に広がっている。観光をけん引していたアジアからの旅行客が途絶え、道民の間には自粛ムードがまん延。繁華街では宴会キャンセルが相次ぎ、高額商品を扱う商業施設は振るわない。福島第1原発事故の対処も長引いていることで、先が見えない状態だ。
「海外からの旅行客は壊滅状態」。震災の経済的影響への対策を講じるため観光、運輸、商業など札幌市内15団体が23日開いた会議では、窮状を訴える声が相次いだ。
老舗ホテルなどが加盟する日本ホテル協会道支部によると、宿泊予約の30~40%がキャンセルされ、東南アジアからの客はほぼゼロに。別の団体からも、ある大手ホテルで既に800万円の損失が出たとの報告があった。
嘆きは地方からも聞こえる。函館湯の川温泉旅館協同組合の金道太朗理事長(湯の浜ホテル社長)は「湯の川温泉街のキャンセルは宿泊予約の半数を上回り、全体では数万人規模」とし、2000年の有珠山噴火での宿泊取り消し件数の2倍に達するとの見通しを示した。洞爺湖温泉の観光関係者も「宿泊客の3割を占めていたアジア客がほぼ来なくなった」と天を仰ぐ。
追い打ちをかけるのが、道民の自粛ムード。道内旅行を売りにするシィービーツアーズ(札幌)の戎谷侑男社長は「観光気分になれないのか、ツアー客は前年の3割減」。平日は宿泊客の8、9割を出張者が占めるJR釧路駅前の釧路ロイヤルインも「出張客は震災後に例年より2割減った」と話す。
ダメージは飲食店にも及ぶ。すすきの観光協会の篠田政一会長は「3月は12月に続く繁忙期だが、震災後の売り上げは2割減。宴会や結婚式の2次会のキャンセルが相次いだ」とし、旭川観光協会の山崎博幸会長も「謝恩会や歓送迎会が軒並み取り消され、旭川市の中心部の三六街は閑散としている。売り上げは全体で3割ダウンだ」。
商業施設もあおりを受ける。道百貨店協会の山口博事務局長は「多少持ち直しつつあったが消費マインドが冷えてしまった」。海外客でにぎわっていた札幌市中心部の狸小路商店街でも「海外客はぼぼゼロ。売り上げが前年比3、4割落ち込んでいる店もある」(札幌狸小路商店街振興組合の島口義弘専務理事)。「ステラプレイス」などJR札幌駅に隣接する商業施設を運営する札幌駅総合開発でも、震災後売上額が10%強ダウンした。
そうべつ観光協会の若狭幸司副会長(ワカサリゾート専務)は「今こそ、道内客をいかに取り込むかを考えないといけない」と訴える。ただ、被災地が復興段階に入るなど、ある程度の時間を経ないと、反転攻勢を打ち出せないのが現実。東京商工リサーチ北海道支社の立花克則情報部長は「自粛ムードが長期化すれば道内企業の業績を圧迫しかねない」と危惧している。
北海道新聞
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/economic/280641.html
「海外からの旅行客は壊滅状態」。震災の経済的影響への対策を講じるため観光、運輸、商業など札幌市内15団体が23日開いた会議では、窮状を訴える声が相次いだ。
老舗ホテルなどが加盟する日本ホテル協会道支部によると、宿泊予約の30~40%がキャンセルされ、東南アジアからの客はほぼゼロに。別の団体からも、ある大手ホテルで既に800万円の損失が出たとの報告があった。
嘆きは地方からも聞こえる。函館湯の川温泉旅館協同組合の金道太朗理事長(湯の浜ホテル社長)は「湯の川温泉街のキャンセルは宿泊予約の半数を上回り、全体では数万人規模」とし、2000年の有珠山噴火での宿泊取り消し件数の2倍に達するとの見通しを示した。洞爺湖温泉の観光関係者も「宿泊客の3割を占めていたアジア客がほぼ来なくなった」と天を仰ぐ。
追い打ちをかけるのが、道民の自粛ムード。道内旅行を売りにするシィービーツアーズ(札幌)の戎谷侑男社長は「観光気分になれないのか、ツアー客は前年の3割減」。平日は宿泊客の8、9割を出張者が占めるJR釧路駅前の釧路ロイヤルインも「出張客は震災後に例年より2割減った」と話す。
ダメージは飲食店にも及ぶ。すすきの観光協会の篠田政一会長は「3月は12月に続く繁忙期だが、震災後の売り上げは2割減。宴会や結婚式の2次会のキャンセルが相次いだ」とし、旭川観光協会の山崎博幸会長も「謝恩会や歓送迎会が軒並み取り消され、旭川市の中心部の三六街は閑散としている。売り上げは全体で3割ダウンだ」。
商業施設もあおりを受ける。道百貨店協会の山口博事務局長は「多少持ち直しつつあったが消費マインドが冷えてしまった」。海外客でにぎわっていた札幌市中心部の狸小路商店街でも「海外客はぼぼゼロ。売り上げが前年比3、4割落ち込んでいる店もある」(札幌狸小路商店街振興組合の島口義弘専務理事)。「ステラプレイス」などJR札幌駅に隣接する商業施設を運営する札幌駅総合開発でも、震災後売上額が10%強ダウンした。
そうべつ観光協会の若狭幸司副会長(ワカサリゾート専務)は「今こそ、道内客をいかに取り込むかを考えないといけない」と訴える。ただ、被災地が復興段階に入るなど、ある程度の時間を経ないと、反転攻勢を打ち出せないのが現実。東京商工リサーチ北海道支社の立花克則情報部長は「自粛ムードが長期化すれば道内企業の業績を圧迫しかねない」と危惧している。
北海道新聞
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/economic/280641.html