【拙文】東北地方太平洋沖地震を糾弾される覚悟で語る | くしろぐ

【拙文】東北地方太平洋沖地震を糾弾される覚悟で語る

自分は学生の頃に野球やアメリカンフットボールに励んだ「体育会系」だ。
そして、民俗学と言う様々な地方の風俗を調べると言う趣味を持つ「文系」だ。
更に船舶機関を中心に学び海技士と言う職に就いている「理系」でもある。
正直に言えば自分自身が何に属すか?が未だに自分自身で判って居ない。

今回は糾弾される覚悟で、理系として東北地方太平洋沖地震を語ろう。

先日、ある一言を発して自分は親に強く叱られた。この歳になりここまで叱られたのは久々である。
「地震と津波は素晴らしいな。あそこまでのエネルギーを実務利用出来れば発電転用、兵器転用も可能だ」
その瞬間、「馬鹿を言うんじゃありません!沢山の人が死んでるのよ!」と母親が激怒した。

その怒声から、何も考えずに発した自分自身の言葉に絶句した。
自分は人類が建造した叡知が次々と飲み込まれていく津波の映像を観た数度目に、ただ純粋な感情でそう発したのだ。

ワクワクしていたと思う。自分の脳裏に地震や津波の発生、発電転用や兵器転用を実現する機器の予想図面が次々と浮かんでいた。
「慣性力を想定して軸受けの焼き付きを回避するには?」と言う所まで思考が進んだ時に、怒声が聞こえて我に返る。
その後、「ごめん」と謝った。

不謹慎な思考であったと思う。
自分の仲間の海技士も国からの要請で海上捜索しているし、被災地在住の仲間の海技士は自身が被災したのにも関わらずボランティアとして他の住民の健康を聞き回ったり、陸自と情報交換して危険区域情報を拡散したりしている。

「(被災地の)外の方が情報が早いみたいだし携行医療品の情報があったら頼むわ」と外との連携にも積極的である。
海上の海技士は「こっち(三陸沖)はマグロ(亡骸)ばかりだ・・・嫌だね・・・回収に馴れてくる」と自分自身を責めていた。

仲間が頑張っている時に自分は知的好奇心から頭の中で図面を引いた。

その事を反省していると一つ思い出す。
現在のカザフスタン北部にあるセミパラチンスク核実験場での核実験の時、ソ連の科学者Arkadi Brich氏が「(キノコ雲は)非常に素晴らしい現象だった」との発言だ。

世界で唯一の戦略核兵器被曝国の日本(人)からすると「何て事を言うんだ!」と激怒する発言だが、自分はこの発言を一人の理系として冷静に聞くと納得出来てしまう。
閃光の後に、空気が震え(空振現象)、音が届く、その衝撃波は天を貫き、空の雲を消し去る。
東京ドームの容積(124万m^3)に入った水を、たった3gの核反応で沸騰させられる巨大なエネルギー、質量のエネルギー変換とはこれほどまでに強大で効率的なのか!と感動する。
その数式や技術に美しさをも感じる理系も居るだろう。

日本国は「災害対策先進国」として世界的に有名である。
そんな日本国がこれほどまでダメージを受けた事に世界は驚愕している。
マグニチュード9とはそれほどのエネルギーであり、日本国を含めて各国の災害対策規格は塗り替えられる筈だ。
それは今回の東北地方太平洋沖地震があったからこそ。

日本国は四季の美しさを絶賛される事が多々あるが、その四季は豪雨を呼び、落雷を呼び、豪雪を呼び、豪風を呼ぶ。
火山帯に沿う様に日本列島が在る為に噴火も多く、地下にはプレートが潜み地震が頻発し、島国で在る為に津波も押し寄せる。
日本国が「災害対策先進国」と呼ばれるのは、そう言った立地に在り、これまでの経験があったからこそだ。

日本史的に多くの方が災害で亡くなっている。今回だけでは無い。
これまで亡くなった方が居たからこそ、マグニチュード9でも耐えられる建造物を日本国は採用しているのだ。
今回の震災で亡くなった方々が居るからこそ、理系は新たに地震や津波対策を開発出来るのだ。
英霊足る被災死亡者の方々に恥じない物を作る事こそが、遺された我々がすべき事だと思う。

日本国は必ず復興させなければならない。
そうでなければ、被災死亡者の方々に申し訳が立たない。

自らを戒める為、今回した不謹慎な思考を告白させて貰った。
この不謹慎が進歩と呼ばれる様に今後とも努めて行きたい。