道内沿岸にも津波、船や車流す | くしろぐ

道内沿岸にも津波、船や車流す


東日本巨大地震

花咲港に押し寄せた津波で浸水した車両(11日午後4時30分、根室市で)=山田靖之撮影

東日本巨大地震の影響で、道内でも大津波警報が発令され、11日午後4時前に、えりも町庶野で3・5メートルの津波が確認されるなど、太平洋側沿岸で2メートルを超える津波が相次いで押し寄せた。日高や十勝、釧路、根室、渡島、胆振の各漁港では津波が岸壁を乗り越え、読売新聞の取材では午後7時半現在、少なくとも漁船60隻が転覆、流出したほか、乗用車など18台以上が海に転落するなどの被害が出ている。恵庭市では避難中の女性が転倒して軽傷を負った。道によると、41市町村が少なくとも6万2376世帯に避難勧告・指示を出し、2万1265人が避難している。道や第1管区海上保安本部は対策本部を設置し、情報収集を続けている。

気象庁によると、津波は地震発生の約50分後から北海道の幅広い沿岸部に押し寄せ、えりも町庶野で、最大3・5メートル、十勝港で2・8メートル以上、根室市花咲で2・8メートル、浦河で2・7メートルに達した。津波はオホーツク海沿岸にまで及び、枝幸港で20センチなどとなっている。

■道東地方

自治体の担当者によると、道東部の十勝、釧路、根室3地方では、午後7時半現在、計約40隻の漁船などが津波で転覆、流出したほか、乗用車など5台以上が津波の引き波で海に転落する被害が出ている。

十勝川河口に近い豊頃町の大津漁港では、陸揚げされていた漁船3隻が横転し、同10隻が港内に流出。さらに、3隻以上が道路に打ち上げられている状態という。

十勝地方では、浦幌町の厚内漁港で6隻が流され、2隻が陸上に打ち上げられている。広尾町の十勝港ではコンブ漁船と作業船の計2隻が港内で沈没、大樹町でも漁船2隻に被害が出ているという。釧路地方でも、浜中町の霧多布港で漁船7隻が流出、散布漁港では係留中の2隻が転覆した。厚岸、浜中両町ではカキの養殖施設が流される被害が出た。

午後3時50分頃に約2メートルの津波が到達した釧路市内では、マンホールから水が噴き出し、同4時半頃には、釧路市街地と南部をつなぐ幣舞橋が通行止めになった。

釧路港の東約1キロの市街地に勤務する女性会社員(32)は、警報発令後に会社からの命令で帰宅を始めた。女性は「まさか押し寄せてこないだろうと思っていたので驚いた。いざとなると避難場所すらわからない」と青ざめた。

■日高地方

浦河町では、大津波警報が発令されると、町内では防災無線のサイレンが頻繁に鳴り続けた。午後3時45分頃には高さ2・1メートルの波が押し寄せて、岸壁を乗り越えると、浦河海上保安署付近の岸壁などに駐車されていた車約10台を次々にのみ込んだという。

えりも町の沿岸では津波が岸壁を越えて市街地に到達。国道336号などで通行中の車が立ち往生し、迂回(うかい)を余儀なくされた。海岸沿いの漁協倉庫が波で壊れて浸水したという。

同町は防災無線で、沿岸の約700世帯に避難を指示した。担当職員は「市街地に波が押し寄せるような経験はこれまでにない」と声を震わせた。

1メートルを超える津波が到達した様似町の日高中央漁協様似支所などによると、波は岸壁を越え、支所付近の荷さばき所や漁港道路まで押し寄せた。漁協職員は、「波が岸壁を越えたので危険な状態。すぐに避難します」と、あわただしく電話を切った。

新冠町では午後3時、沿岸地域を中心に避難勧告を発令し、住民約400人が高台の避難所に集まった。町災害対策本部によると、町内の漁港では午後3時40分過ぎから潮位が上がり始めた。町の男性職員は「5分ほどの間に潮位がみるみる上がった」と説明した。

日高町も同3時30分、避難勧告を発令。町総務課は「地震では長い横揺れが続いた。発生直後に職員を巡回させ、被害情報の把握を進めている」と緊張した様子で語った。

■苫小牧

大津波警報の発令を受け、苫小牧市の苫小牧西港では11日午後3時30分頃、苫小牧漁業協同組合が漁船約60隻をすべて沖合に移動させるよう、携帯電話で組合員に指示。午後4時過ぎにいったん水位が2メートルほど下がり、午後4時25分頃、津波が押し寄せた。

波はじわりじわりと岸壁を越え、魚を入れるタンクなどを数個さらっていったという。組合員らは、水位が安定している間を見計らって、岸壁に残ったタンクや網を陸の高台に運び出していた。

津波とみられる波はその後も午後5時25分、同45分頃に押し寄せ、岸壁に止めてあった軽トラックはタイヤの高さまで海水に浸った。同漁協の佐竹博英専務理事(61)は「波が岸壁を越えるのは初めて見た」と不安そうに港を見守っていた。

■函館

11日午後4時半頃、JR函館駅近くの函館港豊川ふ頭が海水につかり、函館市水産物地方卸売市場や観光名所のベイエリア周辺の道路が冠水した。海水はふ頭から200メートルほど離れた道路まで押し寄せた。

近くの水産会社社員・大高清さん(62)は、「奥尻島が大被害を受けた北海道南西沖大地震(1993年7月)の時も津波はここに来なかった。海水が押し寄せたのはチリ大地震の時以来だ」と語り、「今回は三方の道路から海水が来たが、ここは若干高いのでかろうじて水につからなかった」とほっとした表情で話した。

読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/hokkaido/news/20110311-OYT8T00946.htm