【拙文】古いアナログ新しいデジタル
釧路の霧笛が民間へ譲渡された事は喜ばしい事だ。
霧笛が保存されるのだから自分が声を発する余地は残して貰えた。
皆さんに「黒電話」を思い出して貰いたい。
とは言っても生まれた時から「プッシュホン」だったなんて読者が居るかも知れないけれど。
自分の黒電話の体験は祖父母の家である。実家ではプッシュホンであったが祖父母の家は黒電話。
ジーコ……ジーコ……とダイヤルリングを回して電話を掛ける機構、そしてその「間」が良いものであった。
黒電話を知らない世代も最後の1プッシュが出来ないなんて想いを体験した事があるだろうが、黒電話にはリングの戻りが「間」となってやっぱり掛けられず受話器を置くなんて体験は青春の1シーンだった。
話が逸れた。そんな良い点のあった黒電話だが「実用」としては電話帳メモリーは出来ないし、リングの機構や物理ベルを内蔵していた為にプッシュホンより大型で重く、FAX送受信も不可能で、現代人から見れば無い無いだらけの電話機である。
それに現代のプッシュホンは電話帳メモリーどころか、インターネットへ接続してSkypeサービスを扱えたり、高画質のTV電話まで無料で出来てしまうのだから技術の進歩は凄まじいものだ。
無い無いだらけの黒電話だが唯一と言って良い「実用」の利点がある。実は黒電話って「停電時」でも利用出来てしまうのだ。
黒電話が当たり前だった高度経済成長期以前の方々からすると当然知っている利点であり、むしろ逆にプッシュホンが停電時に利用出来ない事を知らないのかも。
プッシュホンが登場した初期はリング機構をプッシュボタンにしただけなので利用出来たが、現在のプッシュホンの多くが停電時に利用出来なくなっている。
その理由はプッシュホンの最新型であるIP方式を利用したプッシュホン(光電話サービス)で説明出来る。
IP方式等のデジタルな電話は人間が発したアナログの音声をデジタルデータへ変換してインターネット送信をし、今度は相手方でデジタルデータをアナログの音へ変換する事で電話通信が可能となるのだ。
この「変換(エンコードまたはデコード)」と言う作業に電力供給が必要であり、停電時は全く通信が出来なくなってしまう。
IP方式の電話で無くともデジタル技術を使ってノイズ音を取り除いたり、カラーFAX送受信出来る様なプッシュホン(NTT Lモード対応電話機など)が多くなっているので停電時は利用出来なくなっている。
つまり、黒電話などのアナログは緊迫した状況下で最も強みを発揮し、逆に電力供給が必須のデジタルは災害などが起きた場合に相当弱い。
ここまで説明すれば、GPS(デジタル)があるから霧笛(アナログ)を撤去しても良いと言う論調に疑問を感じて戴けるのでは無いだろうか?
そもそも霧笛は高濃度の霧が海上を覆った時、船舶同士の事故(海難)や災害が起きそうな、言うなれば準天候災害時に吹鳴されるものである。
緊迫した状況下で強みを発揮するアナログを撤去するなんて、本当にアナログとデジタルの特性をしっかりと理解して行われたと自分は思えない。
例えばゴムボートなどで海洋レジャーをして遊んでいた人達が強い風や波に煽られて流され、更に視界は濃い霧に覆われて陸地の方向が全く分からず遭難してしまった場合に、GPS受信機なんて持っていないし、携帯電話もバッテリーが無くなれば使えなくなる。
そんな事態に陥った時、霧笛があれば陸地の方向を知る事が出来て生命の危機を脱せる。
GPSがあるから霧笛を撤去すると言う論調は、自動車事故なんて簡単に起きないからシートベルトやエアバッグなんて要らないと言う論調と同じだ。
誰もがそんなシートベルトやエアバッグ不要論を聞けば反論するはずであり、シートベルトやエアバッグはアナログ方式のものであるからこそ安心なのだ。
自分は海技士であり現代に生きるエンジニアの一人である。
アナログからデジタルへ変換するフーリエ変換と言う数式から始まるデジタル時代全盛の現代はエンジニアとして物凄く楽しいものであるし、あらゆる技術の進歩へ大きな期待を寄せ、更にその努力を高く評価する傾向を持っていると自覚している。
しかし、先進性が高いから絶対に良いと言うわけでは無い。
エンジニアのみならず現代人は「適材適所」と「温故知新」を忘れてはならないと霧笛の報道から感じた。
霧笛が保存されるのだから自分が声を発する余地は残して貰えた。
皆さんに「黒電話」を思い出して貰いたい。
とは言っても生まれた時から「プッシュホン」だったなんて読者が居るかも知れないけれど。
自分の黒電話の体験は祖父母の家である。実家ではプッシュホンであったが祖父母の家は黒電話。
ジーコ……ジーコ……とダイヤルリングを回して電話を掛ける機構、そしてその「間」が良いものであった。
黒電話を知らない世代も最後の1プッシュが出来ないなんて想いを体験した事があるだろうが、黒電話にはリングの戻りが「間」となってやっぱり掛けられず受話器を置くなんて体験は青春の1シーンだった。
話が逸れた。そんな良い点のあった黒電話だが「実用」としては電話帳メモリーは出来ないし、リングの機構や物理ベルを内蔵していた為にプッシュホンより大型で重く、FAX送受信も不可能で、現代人から見れば無い無いだらけの電話機である。
それに現代のプッシュホンは電話帳メモリーどころか、インターネットへ接続してSkypeサービスを扱えたり、高画質のTV電話まで無料で出来てしまうのだから技術の進歩は凄まじいものだ。
無い無いだらけの黒電話だが唯一と言って良い「実用」の利点がある。実は黒電話って「停電時」でも利用出来てしまうのだ。
黒電話が当たり前だった高度経済成長期以前の方々からすると当然知っている利点であり、むしろ逆にプッシュホンが停電時に利用出来ない事を知らないのかも。
プッシュホンが登場した初期はリング機構をプッシュボタンにしただけなので利用出来たが、現在のプッシュホンの多くが停電時に利用出来なくなっている。
その理由はプッシュホンの最新型であるIP方式を利用したプッシュホン(光電話サービス)で説明出来る。
IP方式等のデジタルな電話は人間が発したアナログの音声をデジタルデータへ変換してインターネット送信をし、今度は相手方でデジタルデータをアナログの音へ変換する事で電話通信が可能となるのだ。
この「変換(エンコードまたはデコード)」と言う作業に電力供給が必要であり、停電時は全く通信が出来なくなってしまう。
IP方式の電話で無くともデジタル技術を使ってノイズ音を取り除いたり、カラーFAX送受信出来る様なプッシュホン(NTT Lモード対応電話機など)が多くなっているので停電時は利用出来なくなっている。
つまり、黒電話などのアナログは緊迫した状況下で最も強みを発揮し、逆に電力供給が必須のデジタルは災害などが起きた場合に相当弱い。
ここまで説明すれば、GPS(デジタル)があるから霧笛(アナログ)を撤去しても良いと言う論調に疑問を感じて戴けるのでは無いだろうか?
そもそも霧笛は高濃度の霧が海上を覆った時、船舶同士の事故(海難)や災害が起きそうな、言うなれば準天候災害時に吹鳴されるものである。
緊迫した状況下で強みを発揮するアナログを撤去するなんて、本当にアナログとデジタルの特性をしっかりと理解して行われたと自分は思えない。
例えばゴムボートなどで海洋レジャーをして遊んでいた人達が強い風や波に煽られて流され、更に視界は濃い霧に覆われて陸地の方向が全く分からず遭難してしまった場合に、GPS受信機なんて持っていないし、携帯電話もバッテリーが無くなれば使えなくなる。
そんな事態に陥った時、霧笛があれば陸地の方向を知る事が出来て生命の危機を脱せる。
GPSがあるから霧笛を撤去すると言う論調は、自動車事故なんて簡単に起きないからシートベルトやエアバッグなんて要らないと言う論調と同じだ。
誰もがそんなシートベルトやエアバッグ不要論を聞けば反論するはずであり、シートベルトやエアバッグはアナログ方式のものであるからこそ安心なのだ。
自分は海技士であり現代に生きるエンジニアの一人である。
アナログからデジタルへ変換するフーリエ変換と言う数式から始まるデジタル時代全盛の現代はエンジニアとして物凄く楽しいものであるし、あらゆる技術の進歩へ大きな期待を寄せ、更にその努力を高く評価する傾向を持っていると自覚している。
しかし、先進性が高いから絶対に良いと言うわけでは無い。
エンジニアのみならず現代人は「適材適所」と「温故知新」を忘れてはならないと霧笛の報道から感じた。