北方 エゾシカ駆除支援 北海道と協定 27普連、5飛が参加 偵察ヘリから情報 「白糠の夜明け作戦 | くしろぐ

北方 エゾシカ駆除支援 北海道と協定 27普連、5飛が参加 偵察ヘリから情報 「白糠の夜明け作戦

道職員らを乗せてシカの動きを確認する5飛行隊のUH1ヘリ(2月9日、北海道・白糠町右股地区で)

陸自北部方面隊(総監・千葉徳次郎陸将)と北海道が1月28日、道内の農林業に年間50億円以上の被害をもたらしているエゾシカの駆除に関する支援協定を締結し、全国で初めての大規模エゾジカ捕獲事業「白糠の夜明け作戦」が2月8日から10日まで道東の白糠町で行われた。北方から5旅団隷下の27普連(連隊長・福永正之1佐、釧路)と5飛行隊(隊長・樋口康伸2佐、帯広)が参加、観測ヘリなどを使いシカの位置や動きを捕獲チームに伝え、捕獲されたシカを車両で運搬した。

年間50億円以上の被害

北海道には21年10月現在約64万頭のエゾシカが生息すると推定され、食害を中心とした農林業への被害総額は年間約51億円(21年度)に及ぶ。市町村の駆除と猟友会会員のシカ猟で毎年約9万2000頭が捕獲されているが、エゾシカの自然増加率は約20%(約13万頭)と捕獲数を上回る。対策を検討してきた道は22年春に捕獲事業への協力を陸自北方に打診。北方は地方公共団体からの「土木工事等の受託」を定めた自衛隊法第100条に基づき協力する方針で調整を重ね、1月28日、捕獲事業に関する協定を結んだ。
道の捕獲事業の内容は、エゾシカの大量生息が想定される地域で道職員や猟友会会員を乗せた陸自ヘリがシカの位置と移動方向を把握、地上で待機した猟友会会員に伝え、飛行音に驚き森を出たシカをハンターが射撃、処理済みのシカを陸自隊員が所定の集積地まで運ぶというもので、協定に盛り込まれた陸自の協力事項は、捕獲時のヘリによるエゾシカ監視、車両での個体運搬、道東のエゾシカ生息状況調査の三つ。
捕獲実施区域は地元猟友会などからの情報に基づき白糠郡白糠町右股地区、期間は2月8日から10日までとされ、道が全体調整や報道対応など、白糠町と猟友会白糠支部が捕獲部隊編成とシカの処理、森林管理局が道路除雪を担当。北方は27普連(釧路)の福永正之連隊長以下、隊員約40人と高機動車11、資材運搬車2、スノーモービル3など車両約20両、5飛行隊(帯広)のUH1多用途ヘリとOH6観測ヘリ各1機が参加し、道、町、自衛隊、管理局の合同チーム約120人が「白糠の夜明け作戦」としたエゾシカ捕獲作戦に臨んだ。
8日朝、白糠町二股の学校跡地の仮設へリポートに待機した5飛のヘリが道職員らを乗せ離陸。捕獲区域内で最も地形が急峻な森林の上空を低空で飛び偵察を行った。森林内にエゾシカの姿は確認されたが、飛行音を聞いても森から出ず、この日の捕獲数はゼロ。9日は捕獲場所を道道ゲート付近に変え、猟友会会員7人が森の奥に入りシカを追いたて3頭を捕獲。最終の10日は2日目と同じ地域でハンターの射撃待機位置を道道付近から森外縁部と山中に進め、ヘリからシカの位置情報を受け移動させた結果25頭を捕獲。3日間の総捕獲数は28頭だった。
捕獲されたシカは陸自隊員がスノーモービルや資材運搬車で集積場に集め、最終的に釧路市内のペットフード工場に運ばれた。また、道東のシカ生息状況調査が行われ、道職員を乗せたヘリが釧路湿原、走古丹(はしりこたん)、別寒辺牛湿原(べかんべうししつげん)に飛び、エゾシカ990頭を確認した。
今回の捕獲事業を支援した福永連隊長は「自治体との連携要領や資材運搬車での運搬要領などを演練でき、十分な成果があった」と話し、道環境生活部も「エゾジカの生息状況調査は今後の捕獲事業立案などにも役立つ。陸自にはこれからも事業への協力を要望していきたい」と話した。

朝雲新聞
http://www.asagumo-news.com/news/201102/110217/11021709.html