《統一地方選》医師不足 進まぬ対策
■地域医療 ヘリで広域対応
道東の弟子屈町で2009年12月、50代の男性が心筋梗塞(こうそく)で倒れた。駆けつけた救急隊の要請で、約60キロ離れた釧路市からドクターヘリが出動し、市立釧路総合病院に搬送した。
到着直前、男性は心停止状態になったが、病院ですぐに救命措置をし、一命を取り留めた。
出動要請を受けてから病院到着まで63分。同病院の其田(そのだ)一・救命救急センター長は「ヘリに乗った医師が初期対応をし、その後速やかに搬送できたからこそ、救うことができた」と振り返る。
高橋はるみ知事は2期目の公約で「地域医療の充実」を掲げ、医師派遣システム構築や医療機関の連携、救急医療体制の整備を柱に据えた。
このうち救急医療についてはドクターヘリ3機を導入。札幌(道央地域)、旭川(道北地域)、釧路(道東地域)を拠点に、半径100キロ圏内をカバーする。
09年10月に配備された釧路のドクターヘリは、医師不足が著しい根室市や羅臼町など根室振興局管内をカバーする。昨年12月までの出動件数は458件、搬送した患者数は417人。脳血管や心臓の疾患、交通事故などによる外傷患者が大半を占めた。「医療関係者だけでなく患者の安心感も増した」。其田センター長はドクターヘリの効果を語る。
■偏在ぶり浮き彫り
こうした成果を上げる一方で、地域医療立て直しの根本である医師確保は思うように進んでいない。
道内の人口10万人あたりの医師数(08年12月現在)は224・9人。全国平均(224・5人)を上回るが、道内に21ある2次医療圏(急性から慢性まで比較的高度な医療を提供)で見ると、その偏在ぶりが浮き彫りになる。
札幌(275・0人)と旭川を含む上川中部(317・5人)の2カ所に集中。逆に根室(91・2人)、宗谷(96・0人)など道東や道北、道南では医師不足が著しく、大きな格差が生まれている。
医師不足の改善を目指し、道は大学や都市部の病院の医師を地方の市町村立病院などに派遣している。今年度は常勤医51人(昨年12月現在)を道北の利尻町や道南の今金町などに派遣するが、「多くの病院から派遣要請が寄せられ、応え切れていない」(道の担当者)状況だ。
■研修医確保が急務
また、道は毎年、医学生を対象に首都圏や札幌でプレゼンテーションを開催。研修医の確保にも力を入れる。
しかし、10年度の研修医の採用実績は260人で09年度から30人減少。11年春に医学部を卒業し、研修医となる医学生の道内の募集定員に対する採用者数の割合は約60%で、前年より5ポイント減った。
地域医療の担い手育成のため、比較的軽い症状の病気やけがを診察する「総合内科医」の養成を試みているが、こちらも厳しい状況だ。道は10~13年度、2年間の研修を終えた研修医に初期診療や救急などを指導する医療機関を23カ所指定。研修医を確保すれば運営費として1医療機関あたり最大1千万円を道が補助するとしたが、実際に集まった研修医は11医療機関の13人だけだった。
道の担当者は「今後は大学に直接出向いてのPRなど、より多くの人にアピールする方法を考えなければならない」と話す。其田センター長は「医師を増やすことも大事だが、どう配置するかが肝心。地域の医療機関同士が患者の症状に応じて連携できるように、行政が環境作りをする必要がある」と指摘する。
(平間真太郎)
朝日新聞
http://mytown.asahi.com/hokkaido/news.php?k_id=01000001102170005
道東の弟子屈町で2009年12月、50代の男性が心筋梗塞(こうそく)で倒れた。駆けつけた救急隊の要請で、約60キロ離れた釧路市からドクターヘリが出動し、市立釧路総合病院に搬送した。
到着直前、男性は心停止状態になったが、病院ですぐに救命措置をし、一命を取り留めた。
出動要請を受けてから病院到着まで63分。同病院の其田(そのだ)一・救命救急センター長は「ヘリに乗った医師が初期対応をし、その後速やかに搬送できたからこそ、救うことができた」と振り返る。
高橋はるみ知事は2期目の公約で「地域医療の充実」を掲げ、医師派遣システム構築や医療機関の連携、救急医療体制の整備を柱に据えた。
このうち救急医療についてはドクターヘリ3機を導入。札幌(道央地域)、旭川(道北地域)、釧路(道東地域)を拠点に、半径100キロ圏内をカバーする。
09年10月に配備された釧路のドクターヘリは、医師不足が著しい根室市や羅臼町など根室振興局管内をカバーする。昨年12月までの出動件数は458件、搬送した患者数は417人。脳血管や心臓の疾患、交通事故などによる外傷患者が大半を占めた。「医療関係者だけでなく患者の安心感も増した」。其田センター長はドクターヘリの効果を語る。
■偏在ぶり浮き彫り
こうした成果を上げる一方で、地域医療立て直しの根本である医師確保は思うように進んでいない。
道内の人口10万人あたりの医師数(08年12月現在)は224・9人。全国平均(224・5人)を上回るが、道内に21ある2次医療圏(急性から慢性まで比較的高度な医療を提供)で見ると、その偏在ぶりが浮き彫りになる。
札幌(275・0人)と旭川を含む上川中部(317・5人)の2カ所に集中。逆に根室(91・2人)、宗谷(96・0人)など道東や道北、道南では医師不足が著しく、大きな格差が生まれている。
医師不足の改善を目指し、道は大学や都市部の病院の医師を地方の市町村立病院などに派遣している。今年度は常勤医51人(昨年12月現在)を道北の利尻町や道南の今金町などに派遣するが、「多くの病院から派遣要請が寄せられ、応え切れていない」(道の担当者)状況だ。
■研修医確保が急務
また、道は毎年、医学生を対象に首都圏や札幌でプレゼンテーションを開催。研修医の確保にも力を入れる。
しかし、10年度の研修医の採用実績は260人で09年度から30人減少。11年春に医学部を卒業し、研修医となる医学生の道内の募集定員に対する採用者数の割合は約60%で、前年より5ポイント減った。
地域医療の担い手育成のため、比較的軽い症状の病気やけがを診察する「総合内科医」の養成を試みているが、こちらも厳しい状況だ。道は10~13年度、2年間の研修を終えた研修医に初期診療や救急などを指導する医療機関を23カ所指定。研修医を確保すれば運営費として1医療機関あたり最大1千万円を道が補助するとしたが、実際に集まった研修医は11医療機関の13人だけだった。
道の担当者は「今後は大学に直接出向いてのPRなど、より多くの人にアピールする方法を考えなければならない」と話す。其田センター長は「医師を増やすことも大事だが、どう配置するかが肝心。地域の医療機関同士が患者の症状に応じて連携できるように、行政が環境作りをする必要がある」と指摘する。
(平間真太郎)
朝日新聞
http://mytown.asahi.com/hokkaido/news.php?k_id=01000001102170005