アイヌ神話で環境問題訴え 木版画家・結城幸司さん | くしろぐ

アイヌ神話で環境問題訴え 木版画家・結城幸司さん

ごみを捨てるとき、その行き先のことも考えてほしい。アイヌ民族の神話がそのきっかけになれば-。木版画家の結城幸司(ゆうき・こうじ)さん(46)は、廃棄物処分場を舞台としたオリジナルの神話「カムイユカラ」を創作し、木版画と融合させた短編アニメの制作を進めている。

キツネに宿るアイヌの神「カムイ」が廃棄物のせいで自然が汚染されたことを嘆き、土地を去るストーリー。神話に沿った木版画約30枚を制作、横浜市在住のアニメーター、杉原由美子さんが映像化を担当し、今春の完成を目指す。

アートを通じてアイヌの精神を伝えようと、約10年前から札幌市を拠点に音楽ライブや若手芸術家の支援など幅広い活動をしてきたが、神話の創作には「恐れ多くて」手が出せなかった。一方で「自然への畏怖や、それを侵すタブーを感覚として伝えられる」と大きな可能性を感じるようになり、創作に着手した。

1作目の今回、このテーマにしたのは北海道に実在する廃棄物処分場に足を運び、近隣で暮らす人の話を聞いたのがきっかけ。周囲に漂う臭い、環境悪化に不安を訴える声-。胸に響いた。「誰もがごみを捨てて生きている。その生活が自然を犠牲にして成り立っていることを意識することが大切と伝えたい」

結城さん出演の音楽ライブで行われた昨夏の予告上映。キツネが一筋の涙を流す場面に100人を超す観客がじっと見入った。作品へ高まる期待に完成への決意を新たにした。

産経新聞
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110213/trd11021307400001-n1.htm