✳オリジナル小説です

とある地方都市の閑静な住宅街のビルの一室にある
『33』という不思議なお店。

癖の強い従業員たちが色んな思いを抱えた人々を癒します。

耳耳耳耳耳耳耳耳耳耳耳耳耳耳耳耳耳耳
ヨシロウはノゾミに『33』という店に行くまで、そして行ってからを順に話した。



「おれの母さんは子供たちが何を考えているかより、


自分が心配する出来事を前もって阻止することの方が大切だったんだ。


母親役と子供時代に戻っての疑似体験をする店なんて不思議で怪しいからあまり期待してなかったんだ。


でもお試しで、ちゃんとおれの話を聴いて褒めてくれたのが妙な感じでさ。



なんだかそわそわするような、ぎこちないような、知らないような、ずっと欲しかったような。


やりとりを思い返していたら、帰り道の電車の窓に笑ってるおれが映っていたんだ。




……自分でも驚いたよ。」


ヨシロウははにかんで下を向いた。




ノゾミはヨシロウのそんな表情は初めて見た。



「それから『33』に行くようになって話を聴いてもらうのになれてきた頃、
仕事でどうしても契約のとれない取引先に営業に行ったんだ。


そこの部長さんと話をしているうちに無意識に゛聴く゛に徹してたみたいなんだ。


今まで冷たかった部長さんがおれに身の上話をし始めて。

その話があまりにも勉強になったから素直にそう伝えたら喜んでくれて、そこから
色々紹介してくれるようになり、売上が上がり、昇進に至ったというわけ。」



ヨシロウの心境の変化に合わせてノゾミの話も聴いてくれるようになったんだと納得がいった。




「店からの提案なんだけど、もしよかったらノゾミも一度体験してみませんか?って。」


ノゾミは少し考えてみると伝えた。



ヨシロウはノゾミの表情に疑いがないことを確認してこの話は終わった。





゛母親か…。゛


ノゾミはお風呂に浸かりながら、自分がママに話をする姿を想像してみた。


ノゾミは母親との関係改善を何度も何度も夢見ているが、同時にうまく行くはずがないとも思ってしまう。



店では本物のママと話すわけではない。




ゆらゆらする想いと一緒に身体を湯船に深く埋めた。




つづく