(11月29日) 16

そう考えると同時に、僕は真田とあゆみに話しかけていました。

あ、あの……悪い。この話はまた後日にしないか? 今はテスト勉強しないと……な

我ながら、歯切れの悪い口調です。すると、あゆみが首をかしげます。

あれ? 香君。いつから真面目になったの?

少なくとも、昔から君よりは真面目だったよ

軽くあしらい、その場の空気を冷やしてしまいました。そして、真田も渋々ながらあきらめ、あゆみもようやく引き下がります。

二人が揃って教室を出て行くと、今度は奈留が立ち上がりました。彼女は優雅に歩き、僕の席の前に立ちます。

私との約束。忘れていないわね?

訊ねられ、僕はうなずきました。

ああ。悪かったな。あの二人は……いつも絡んでくるから

すると、彼女は腕を組み、窓の外を眺めます。高等部の校庭が目に入り、何人かの生徒が校庭の整備をしていました。

その光景を眺めながら、奈留は栗色の短髪を揺らします。

言い訳は聞きたくないわ。自分の行動には、自分の責任があることを思い知りなさい。中途半端な行動だから、誰かのせいにする……違うのかしら?

ぐっ……言わせておけば―――っ!

僕は立ち上がり、机を両手で叩こうとします。次の瞬間、奈留は僕をにらみつけ、僕の身体が硬直しました。同時に、

ドガァ、メキメキメキィ、

僕の机の表面がへこみ、空っぽの引き出しが完全につぶれます。

僕は驚き、右足を斜め後ろに下げて彼女から距離を置きました。そして、彼女と目を合わせます。

その瞳には光が失せ、僕の姿もありません。ただ、奈留は凛とした姿勢で言葉を発しました。

責任を持ちなさい。生きていけば、必ず責任を持つのよ。押しつぶされたくなければ―――中途半端な覚悟で責任を持たないことね

そう言って、再び窓の外を眺めます。

話が終わり、僕は奈留に視線を向けたまま口を開きました。

お、おい……このままじゃ、勉強できないだろ。机がペシャンコだぞ

訴えかけると、奈留は再び僕に視線を向けます。そして僕の机を見下ろし、首を傾げました。

何のことかしら? 何の異変もないわよ

えっ……で、でも―――っ!?

僕も視線を下ろし、自分の机を見つめます。先ほどの光景が嘘だったかのように、机は元通りになっていました。

〔つづく〕

登場人物

草薙 香    主人公

真田 刃(剣) 香の親友(ある事情で、兄を演じる香の彼女)

宮司 破魔   眼鏡の学級委員長

西藤あゆみ   ボクッ子の迷惑少女、香の同級生

草薙 奈留   初登場、クラスメート。香と血縁はない。お嬢様

クルミ先生 香のクラスの担任の女教師

*ご意見・ご感想、お聞かせ下さい。コメントお待ちしています。

ストーリーの概要

草薙香の小説・アーカイブ(あゆみと香toベイン・ドリーム)

ランキングに参加しています、少しでも面白かったら  ポチッとお願いします

ランキング
長編に少し飽きた、物足りなさを感じる方へお勧め おぐらひろしさん作の


  あ・い・う・え・お ~ショートショート 童話 短編