まぁね。ボクだって、やる時はやるよ。それに、ボクの約束。覚えているよね? う・ね・う・ね・だ・い・じ・ん

彼女はそう言って、真田に視線を返します。

(11月29日) 13

同時に、二人の間に妙な雰囲気が生まれ、僕は視線を窓の外へ向けました。

そして、あゆみが余裕の笑みを作りながら、発言します。

ボクの平均点が七十点以上だったら、大臣は二度と生活科に入ってこない約束だよ

その言葉に対し、真田も応答しました。

ああ。でも、例えギリギリの点数でも、僕の勝ちにさせてもらうよ。僕が勝った場合、スワローの神様はこの世に存在しないってことを宣言してもらうよ。ついでに、二度と香君に話しかけない約束

いいよ~♪

真田が威嚇するのに対し、あゆみはやわらかく返事をします。

真田の背景には、ウサギの形をした獰猛な生き物が牙をむいていました。

対してあゆみの背景には、大型のツバメが上空から地上を見下ろしています。

僕はそれを目で見ることなく、感じる事で想像してしまいました。

そして、あゆみが両手を頭の後ろに組んだまま、僕に話しかけます。

とりあえず、今日は一緒に帰ろうよ

そう言われ、僕は首を横に振りました。

悪い。弟の授業が終わるまで四時間ある。すまないけど、二人とも先に帰ってくれないか?

僕がそう言うと、真田が苦笑します。

あ、あの……真央君かな? 可愛いよね~

彼の言葉に、僕はなぜか罪悪感を覚えました。

理由はよく分かりません。

ただ、男装をしている彼を好きになっている僕が、女顔の男の子に浮気をしているような気分です。

そして、あゆみが僕の顔色を察しました。

あれ? どうしたの? まるで、好きな女の子が目の前にいるのに、別の子が好きになってしまって気まずいような表情は?

(どんな表情!?) い、いや。まぁ、真央は兄弟だろ。別にいいじゃないか

思わず、反射的に対応してしまいます。

すると、あゆみは目を細め、無表情になりました。

へぇ~。香君。男の子が趣味なの。ボクだって、男装は得意なのに

い、言うな! 周りの環境がそれっぽくなってきているだけだ。僕は男装でも女顔でも、人間ならそれでいい!

断言し、右手の拳を握って自分の目の前にかざします。

〔つづく〕

登場人物

草薙 香    主人公

真田 刃(剣) 香の親友(ある事情で、兄を演じる香の彼女)

宮司 破魔  眼鏡の学級委員長

西藤あゆみ   ボクッ子の迷惑少女、香の同級生

草薙 奈留  初登場、クラスメート。香と血縁はない。お嬢様

クルミ先生 香のクラスの担任の女教師

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ストーリーの概要

草薙香の小説・アーカイブ(あゆみと香toベイン・ドリーム)

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