(11月29日) 11

~放課後・高等部三階・生活科~

…………やられた

僕はつぶやき、机に突っ伏しました。あゆみ以外にも敵が居たことを思い知らされます。それは三十分前の話でした。地理のテストを受けている最中、クルミ先生の罠が待ち受けていたのです。問題の内容は次のとおり。

BSとはステップ気候だが、BSEとは何か。正式名称で答えよ

――――――分かるかよ。いくらなんでも、あれは酷いだろ

おかげで、一問だけ空白を作ってしまいました。もちろん、一般常識としては当然の問題。口答えすれば草薙の刑が実行されるのでしょう。

しかし、終わってしまったことを嘆いても仕方ありません。

僕はカバンに入れておいた、明日の教科を取り出します。

内容は苦手な英語。頑張るしかありません。

すると、あゆみが僕の目の前に現れ、綺麗な曲線を描いた胸を突き出してきました。

余裕だったね! ぜ~ぇんぶ書けたよ

腹立たしいイントネーションが耳に入り、僕は苦笑します。

は、ははは……マジか。あの問題が解けたのか? BSE

僕の問いに対して、あゆみは得意げにうなずきました。

当たり前だよ! BSEは狂牛病。正式名称は牛海綿状脳症に決まっているじゃない。もしかして、解けなかったの? あは♥

ば、馬鹿な……僕に解けなくて、あゆみに解ける問題があったなんて―――やられた!

考えてみれば、ある意味時事問題。

ろくに報道を見ない僕に比べて、あゆみの知識は世間向けに構成されているのです。

それを差し引いても、僕自身が彼女に出し抜かれた事実が信じられません。

そして、僕は教科書に書いてあった英語の単語に線を引き、意味をノートで確認しました。

すると、あゆみが余裕な笑みをつくります。

ふふ。無駄だよ。ム、ダ。スワローの神様は無敵だからね。それに、勉強はお家に帰ってからのほうが集中できるよ

ぐっ…… (なんだか、あゆみがとんでもない人間に思えてきた)

最初こそ、相手は馬鹿だと思って見下していたのかもしれません。

しかし、彼女の態度は驚異的な何かを感じさせます。

そう考えていると、今度は教室の入り口から特殊な気配を感じました。

僕は頬杖をつき、その存在を待ちます。すると、予想通りに一人の生徒が現れ、学ランを着たその生徒、真田は瞬く間に僕の目の前に現れました。

〔つづく〕

登場人物

草薙 香    主人公

真田 刃(剣) 香の親友(ある事情で、兄を演じる香の彼女)

宮司 破魔  眼鏡の学級委員長

西藤あゆみ   ボクッ子の迷惑少女、香の同級生

草薙 奈留  初登場、クラスメート。香と血縁はない。お嬢様

クルミ先生 香のクラスの担任の女教師

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ストーリーの概要

草薙香の小説・アーカイブ(あゆみと香toベイン・ドリーム)

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