(11月29日) 10
クルミ先生は強くうなずき返し、怒鳴ります。
「おうおう！ 上等じゃねぇか！ オレは準備をしてくる。くれぐれも、オレの教科で赤点を取るなよ！ ＥＴを宇宙気候なんて書いたやつは草薙の刑に処してやる！ 覚悟しておけ！」
「(僕と何の関係が！？)」
そう言って、教室を出て行きました。まるで台風のような勢いに、僕以外のクラスメートが話についてこられない様子。
無理もありません。さすがのあゆみも、クルミ先生の性格にはついていけないようです。
そして、草薙の刑と言う謎の言葉を残された事も気がかりでした。
更に言えば、ＥＴの間違え方に無理がありそうです。
そう考えていると、隣にいた破魔が眼鏡を輝かせました。
「すると、ＢＳを全国放送気候と書いても草薙の刑ですか……」
「いやいやいや！ そもそも草薙の刑って何！？ 一番気になる！」
全くもって謎の刑です。想像することはおろか、僕と関係あるのかも分かりません。
そう考えていると、あゆみが再び僕の机の前に現れ、綺麗な曲線を描いた胸部を突き出してきました。そして、口を尖らせます。
「香君！ 草薙の刑なんて―――聞いていないよ！」
「僕だって聞いていないよ！ いや、だから草薙の刑って何！？ 僕にはそれすらも理解できないけどさ！」
よく分かりませんが、あゆみは何かを知っているようでした。
すると、あゆみは頬を赤くしながら、小さな声で答えます。
「そ、その……こう……もみもみって感じ」
「もみもみぃ！？ どんな感じだよ！？」
余計に意味が分からなくなりました。
きっと、僕の脳内によぎっているのは、男性ゆえの妄想だと思ってください。
しかし、あゆみの言葉足らずな説明に対して、破魔が横から口を挟みます。
「つまり、クルミ先生が、香の顔面を殴る回数を一草薙の刑と数えます」
「(もみもみは全く関係ねええぇぇぇぇぇ――――――！？) い、嫌だよ。明らかに僕だけが巻き添えだろ。しかも単位が特殊すぎる！」
とんでもない処罰があったものでした。
僕が校長先生の立場なら、あのクルミ先生を懲戒免職にするべきだと判断します。すると、あゆみが僕の額を右手の人差し指でつつきます。
「とにかく、ボクと勝負だね。負けないよ～♪」
上機嫌に、僕を挑発していました。僕は呆れてしまい、しかし表面上では余裕の笑みを見せます。
「かかって来いよ。全力で叩き潰してやるからな」
お互いに視線を向けあい、勝負を開始させるのでした。こうして、本日の期末試験に挑むのです。
〔つづく〕
登場人物
草薙 香 主人公
真田 刃（剣） 香の親友（ある事情で、兄を演じる香の彼女）
宮司 破魔 眼鏡の学級委員長
西藤あゆみ ボクッ子の迷惑少女、香の同級生
草薙 奈留 初登場、ｸﾗｽﾒｰﾄ。香と血縁はない。お嬢様
クルミ先生 香のクラスの担任の女教師
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