(11月29日) 7
「ふっ……それは君と僕の条件だよな？ 影武者とか、変わり身とか、約束はしていなかったとか、それはなしだぞ？」
すると、あゆみは目を細めて笑みを作りました。
「いいよ。その代わり、香君が負けたら―――今度こそスワローの神様に忠誠を誓ってね」
「(妙な神様が出てきた！？) 前にも聞いたことがあるな……もしかして、変な宗教じゃないのか？」
僕が訊ねると、彼女は頬を膨らませます。
僕は悪いことを言ってしまったと自覚し、
「すまない……」
と語尾を付け加えました。
そして、彼女は機嫌を直して無邪気な笑みを作りました。
「まぁ、仕方ないよね。スワローの神様は宗教とかじゃないから。強いて言えば、信じるだけで自分が強くなる存在だよ。例えば、空を飛んだり、痛みをあまり感じなくなったり……すごいでしょ？」
「(死ぬってこと！？) こ、怖いな……それ」
僕は脳内で選択肢を浮かべ、挑戦を受けるか受けないかに迷います。しかし、答えは単純明快。
「(まぁ、勝てばいい話か) よし、受けて立つよ。言っておくけど、泣き出すのもなしだよ」
僕がそう言うと、あゆみは小声で返事をしました。
「うん。萌え萌えだよ。きっと、香君も悶死するほどだよ」
「(悶死！？) いや、あれは苦しむって意味だろ！」
軽くツッコミ、彼女の思考回路を疑います。何が目的なのか、いま一つ読み取れない少女でした。
すると、隣にいた破魔が眼鏡を輝かせます。
「それでは、私も一つ勝負を―――」
「あぁ～。遠慮しておくよ。勝機がない戦いには出ない。これ策略なり」
我ながら、腹立たしい台詞を平気で口にしました。
〔つづく〕
登場人物
草薙 香 主人公
真田 刃（剣） 香の親友（ある事情で、兄を演じる香の彼女）
宮司 破魔 眼鏡の学級委員長
西藤あゆみ ボクッ子の迷惑少女、香の同級生
草薙 奈留 初登場、ｸﾗｽﾒｰﾄ。香と血縁はない。お嬢様
クルミ先生 香のクラスの担任の女教師
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