(11月29日) 5

~数時間後・自宅・自室~

兄さん……兄さんってば……兄さん―――

遠くから声が響き、僕は大きく息を吸い込みます。場所を確認すれば、自分の椅子の上。詩織の顔が僕の目の前にあり、僕はまどろみの中でした。時間は五時を回り、本来は詩織しか起きていない時間でした。僕はあまりにも強烈な眠気に襲われ、つぶやきます。

ぅん~。寝かせてくれよぉ。さすがに眠くて……あぁ。これって夢?

夢ではありません。ようやく最後の三角形の合同の証明が出来たのに、兄さんが回答を合わせてくださらなければ終わりません

そう言われ、僕はうなりながら答えました。

んあぁ~。合っていると思う……よ? マジ眠い

適当な回答ですね。これさえ終われば眠っていただいても―――

我が妹ながら、回りくどさとしつこさは欠点とも言える部分です。僕はそれ以上の回答をする事もなく、詩織の口に指を突き出しました。すると、彼女はやや嫌がります。

ちょっと、何をしますか? 止めてください

眠いって言っているだろう……ほら、チュ~してあげるから、お前も寝ろ。おやすみのチュ~だぞ

僕は妹の頬に手を添え、口を合わせました。すると、詩織は目を見開いて驚くものの、すぐに素直に応じます。そして、お互いの口が離れたところで、彼女は口を尖らせながらつぶやきました。

し、仕方ありません。一時間ばかりの休憩にします

そう言って、僕から離れて部屋を出て行きます。彼女が部屋を出て行ったところで、僕は眠りにつこうとしました。すると、口元に先ほどの感覚が残り、思わず目を覚まして頭を起こします。

あ、あれ……? 夢じゃない、のか?

脳が覚醒し、目が冴えてしまいました。同時に、後悔します。

くっ……しまった。もっと味わっておけば―――っ!

口に出した瞬間、僕は戦慄しました。

相手は詩織。今の自分が生きている事が不思議な事態です。そう考えていると、僕がいつ呪い殺されるものかも分かりません。

とりあえず、妹が大人しい内に、朝風呂に入ろうと試みました。冬場の習慣なので、丁度よい目覚ましになるはずです。

〔つづく〕

草薙 香    主人公

大根 真央   香の従兄弟、両親は他界 小等部三年

草薙 詩織   香の妹.双子の姉 厳格で気丈 中等部 二年

草薙 結   香の妹.双子の妹.のん気で明るい中等部二年

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ストーリーの概要

草薙香の小説・アーカイブ(あゆみと香toベイン・ドリーム)

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