小田原邪宗門の門主がお亡くなりになった。
竹石友威氏。
2019年10月8日ご逝去、享年77歳。

「小田原邪宗門」とは、小田原市東部のお寺「三寶寺(さんぼうじ)」の境内にある喫茶店である(境内どころか本堂の真下!)。
かつては鎌倉にあったらしい。竹石氏は三寶寺の住職でもあった(正確には、今年3月末でご引退)。
お寺の中に喫茶店があるだけでも珍しいのに、ユニークな竹石氏は「隠れキリシタン」を自称されており、キリストやマリアを題材にした美術品(主に絵画)が点在する変なお店だった。
そして、オーディオ好きでもあったため、目がくらむような貴重な機器もたくさん置かれていた。ただの物置棚と思ったらパラゴンとか・・・。

以後、実際にお呼びしていた時と同様「ご住職」と書くことにする。
ここを初めてお邪魔したのは2009/11/15、hijiyanさんのご紹介によるものだった。
feastrex製スピーカーを出川電源に改造した機器で鳴らすプチイベントが開かれるとのことで、お声掛けいただいた。
会場は喫茶店内だったが、幸運なことになぜか本堂にも上げていただいた。
で、当時本堂の脇に鎮座していたウェスタン製の巨大なホーンスピーカーで、読経のCDを再生して聴き入るという、オーディオオフ会なのか何なのか分からないシュールすぎる体験をさせていただいた。
あのインパクトはいろいろな意味ですごかった・・・。
このように、当時はオーディオ愛好家もよく来訪していた。
出川電源のデーさん、shunさん、feastrex主宰のBeekon(秋山)さん、元feastrexのhさん、椀方さんなどと初めてお会いしたのもこちらだった。
また、喫茶店内でコンサートを数か月に一度開かれており、それは地元でも有名だったらしい。
最寄駅であるJR国府津駅でタクシーに乗り込んだら、運ちゃんもご住職のことを知っており、「収支的には赤かも知れないが、みんなを楽しませるためにコンサートを開いてくれる、そういうお方だそうですね。」みたいな話を聞いたこともあった。
補足すると「演奏者にお披露目の場を提供したい」という想いもあったのだと思う。

楽しいコンサートには幾度となくお邪魔したが、日頃ふらっとお邪魔するのも、それに負けないくらい楽しみだった。
時折、何かの間違いでダイエットに目覚め、国府津駅から暑い中30分ほど歩いてお邪魔する。
そんな時にいただくアイスコーヒーは、濃厚なコクと軽やかさが同居した、もう本当に極上の味だった。
甘党の自分はシロップとミルクをガッツリ入れるから、この時点で徒歩の消費カロリーが帳消しなわけだが・・・。
そんな時は、大抵ご住職もお仕事の合間に店内でのんびりされており(お店の実務は別のスタッフにお任せ)、おいしいコーヒーをいただきながら積もる話をするのが本当に楽しかった。
交友関係の非常に広いお方だったが、時折しか行かない自分の顔名前はもちろん、使っているスピーカーまでしっかり覚えてくださっていたのがうれしかった。
また、喫茶店ではあるが、精進料理っぽいランチも提供しており(要予約)、体重100kgを超える大食漢の自分が「素材を味わってゆっくり食べる」ことのできる非常に稀有な食堂だった。
量は多くないがゆっくり食べるから物足りなさもさほどない。これは他ではまず体験できないことだった(女性にもウケが良かった)。

そんな付かず離れずのご縁がしばらく続いたが、昨年くらいから時折入院されるようになり、邪宗門の休店も目立つようになってきた。
去年、退院直後にお邪魔したときは「ただの検査入院と胃潰瘍」みたいなことを仰っていたが、もしかしたら心配させないための方便もあったのかもしれない。
それでも、できる限り邪宗門の営業とコンサートは開催されており、コンサートは今年の4月13日、香坂優氏出演の時まで続けられた
(タイミングよく自分もお邪魔できた)。
以降は、以前にもまして休店が目立つようになり、ほんの二週間前にもお店にお電話したが繋がらなかった。そして今回の訃報。
まだ回復されないのかと心配ではあったが、正直、ご逝去されるとは夢にも思っていなかった。
葬儀は来月に予定されているとのことだが、平日のため伺えるか分からない。
せめてもと、今日、喫茶店の入り口に手を合わせに行った。
こっそりお店の外観などを写真に撮っていたら、不審者と思われたのかご子息(現ご住職)に声を掛けられ、ご遺体の安置された本堂にあげていただき最後のご挨拶をすることができた。
ご逝去から一週間以上経ち、閉店も決まってしまったが(もちろん、お寺自体は続く)、お店の外観は看板撤去以外はまだ大きくは変わっていない。
トレードマークである境内入り口の大きな二本の銀杏の木も、今年も台風で葉がかなり散ってしまったが、去年よりはずっとマシに見える。
もう一度、通称「友爺」さんの弾かれる優しいピアノの音色を楽しみながら「今年はなんとか銀杏の風情が楽しめそうですね、よかったですね!」みたいなお喋りをしたかった。
「おや、また少し太りました(笑)?」なんていじられながら。



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ご本人からしてみたら、自分などは知り合いの中でもそれこそ「その他大勢」の一人にすぎない。
なので、こうした追悼日記を書くこと自体、本来おこがましい。
それでも、自分にとってはお食事・音楽・ここを通じて広がったご縁など、受けたご恩は計り知れないため、どうしても書いておきたかった。
出過ぎた真似をどうかお許しください。
ご住職、短い間でしたが本当にありがとうございました。
どうかあちらでも、周りを笑顔にするご交流と音楽を存分に楽しまれてください!
