KT | クサキモさんの映画感想

クサキモさんの映画感想

映画のことなど何一つ分かっちゃいない人間が、才気溢れる人々が精魂込めて創りあげた作品に☆をつけるというイタいブログ。ホントになんも分かっちゃいませんが、映画を観るのが好きです。

佐藤浩市さん演じるこの映画の主人公は“戦いたい”人です。


“戦いたい”といえば、
シリアで戦闘員をやっていたという日本人。
「ただ戦いたいだけ」と語ったそうで、
ニュースになっておりました。


でこちらはニュースにならなかったのですが、
私にもちょっとした戦いがありまして……


先日バスが混雑して、ぎゅうぎゅう詰めだったんです。
このバスは前扉から乗って後扉から降りるというシステムなのですが、
ぎゅうぎゅう詰めですから、
前のほうに乗っている客は、
停留所に着いても降りることが儘なりません。


仕方がないので、一人の女性客が言ったんですね。
「運転手さん、前から降ろしてもらえませんか?」


その停留所では乗ってくる客がいませんでしたから、
前扉を開けて女性客を降ろしてもかち合うことはありません。
叶えられても罰はあたらないお願いです。


が、罰のあたらないお願いさえ叶わないのが世の常ですね。
運転手さん、低い声でぼそっと、


「後ろから降りてください」


彼の辞書にマニュアル以外の文字は無いのでした。
バスがマニュアルなら運転手もマニュアル。
めでたいことです。


そこで私ですね。
普段そんな余計なお世話は絶対しないんですけど、たまたま運転手の近くにいたもんですから、
言っちゃったんですね。


「前から乗ってくる人いないんだから降ろしてあげればいいじゃないですか!!」


言ったには言ったんですけどね。


声は震えるわ、



手足はワナワナするわ、


口は乾いて臭くなるわ、


もう大変ですよ。


でどうなったかというと、


フツーに無視されました。


女性客のほうは、


一分の隙もない、と私が勝手に睨んでいた人の壁を、

いとも簡単にすり抜けて、
後扉から降りていきましたとさ。


ちゃんちゃん。


これが“戦い”か“一人相撲”かという議論はひとまず置いておきましょう。


言いたかったのは、戦うということは、そりゃもう大変だということです。


生まれてこのかた据わることを知らない私の肝


が引き起こした特異な現象なんかではなく、
誰にとっても大変なのです。


だって猫は肝が据わってようがなかろうが毛が逆立ちますでしょう?


逆立つってことにしてください。


でこの逆立つという現象は、
生きている証でもあるわけです。


元戦闘員の話に戻りましょう。


世界の片隅で戦っているオレ。
死ぬかもしれない。
高まる鼓動。
熱い血が全身を駆けめぐる。
そう、オレは生きている!


あくまで想像ですが、
彼が求めたのは生きている証なのかもしれません。


ただ大人たらんとする者、オレオレばかりも言っていられませんね。


問題は、
生きている証を、
相手や周りの人に、痛みや苦しみや悲しみを強いてでも手に入れたいか?
ということです。


それでもなお手に入れたい! 戦いたい!
とすれば、それは何故なのか?


この映画のテーマはおそらくここにあります。


答えはですね、
はっきり言いましょう。


分かりません。


でも分からないなりに観ているうち、
なんとなく頭に浮かんできたものがあります。


“快楽”です。


快楽と言うのは……


そうだここでバスの話に戻りましょう。


私は運転手に無視されましたから、敵として認められませんでした。
女性客からも無かったことにされましたから、共に戦う者と認識されませんでした。
女性客の“降りる”という目的は達せられましたから、
それ以上運転手に物申し、出発を遅らせることは、おそらく車内から承認されませんでした。


結果として無駄な敗戦は避けられ、私はホッとしました。


しかし!


戦いたい人はこれではダメなのです。


相手から敵として承認されたい。
仲間から同志として承認されたい。
社会から戦うことを承認されたい。


そうです。戦いたい人とは“承認の欲求”を満たしたい人なのです。
承認された喜びで、己の無力感や寂しさを埋めたい人なのです。


そして、この埋めるという作業は、
“快楽”なんですね。
例え相手や周りの人に痛みや苦しみや悲しみを強いてもやめられないんです。
やめた途端にまた無力感や寂しさが襲ってきますから。


結論。
「KT」の主人公は快楽主義者である。


さて、さすがに自分でも飽きてきました。


まぁ理由がどうあれ、
“戦いたい”という気持ちは、大いに若いものであります。
青臭いともいえます。


こういうときは融通を利かせるべきだ、という“べき論”を振りかざして戦おうとするなんて、
もう救いようがない位青臭いですね。


それに比べて、あの女性客です。


ダメもとで前から降ろしてくれと聞いてみる。
ダメと分かればさっさと後ろから降りる。


あの一切の拘りを感じさせない老成した割り切り方!


尊敬します。


と、私は思うのですが、
主人公は承認しないでしょう。
☆2.5です。