“コーチング”を職員教育に取り入れる病院が出てきてから、だいぶ時間が経ちました。

 

 奥田弘美さんは、コーチングのポイントを次のようにまとめています1)(『メディカルサポートコーチング入門―医療者向けコミュニケーション法』日本医療情報センター2003)

 〈コアスキル〉

  聴くこと  人は聴いてもらえないと動かないので、相手の話は最後まで聴く/白

        紙の心で聴く。

  質問する  相手の中から考えや行動を引き出すために、開かれた質問/未来型・

        肯定型質問で尋ねる。

  伝える   伝え方によって受け止められ方が異なるので、YOUメッセージより

        もIメッセージで思いを伝える

〈アクションプラン〉

  マイゴールの設定  ゴールを具体的に見える形でイメージする。

            そのことで、モチベーションが強化される。

  現実把握      現状を数値化する(現状は到達目標の〇〇%程度、全行程の 

            〇〇%程度のように)

  行動のサポート   Iメッセージでサポートする(「〇〇しなさい」ではなく、

            「・・・を手伝うよ」のように)

  

 医療者向けコミュニケーションに役立てるために書かれたものですが、患者さんに医学的なアドバイスをするためにもこのような姿勢は欠かせないと思います。                               

 2,3歳の子育てをしている母親(父親より母親のほうが上手いと感じるのも偏見でしょうか)の姿を見ると、コーチング的なかかわりをしていることに気づきます。

 「〇〇ちゃん、これやってみようか」

 「わあ、よくできたね。ママ、びっくりした」

 「それじゃ、次はこんなことをしてみようか」

 「あれっ、どうしてできなかったんだろうね」

 「じゃ、もう一回やってみる? ママ、見てるから」

 「できたねえ。すごい、すごい。」

 ・・・・・・・・・・・

(最近では、こんなふうに接するパパも増えていることでしょう。父親でも母親でも、うまくできない人もいて、そのような場合にアドバイスやケアが必要なことがあります。)

 

 コーチングは、暮らしの中に普通に生きている知恵だという気がします2)。だいじなのは、コーチングは愛情に裏打ちされたときに生まれる/生きるものだということだと思います。“技法”の教育には、いつもその奥にある“心”が伝えなければ意味がありません。

 

1)奥田さんが指導医養成講習会向けにしてくださったビデオ講演をもとに私がまとめました。

 

2)「動機づけ面接」にも共通したものを感じています。