患者さんにしてみれば、気を遣ってつきあわなければならない医者が増えてしまいます。それぞれの医者の性格を推察して、どの医者にはどのように接するか、どのような内容のことを話すか、何倍も気遣いしなければならなくなります(看護師に対しては、以前から患者さんはそんなふうに気を遣っているのですが)。特定の医者と親しくなろうとしても、他の医者との関係を思うと難しくなるかもしれません。

 

 担当医が一人の時、どうしてもその医者と「合わない」ことがありますから、複数いれば誰か「合う」人を見つけることができる可能性はあります。でも、複数の人が同じような対応をする(同じような人柄に見える)場合にはいっそう辛くなるでしょう。「主治医を変えてほしい」という患者さんの要望は(思い余って、勇気をふりしぼって言われているのですが)、ほとんど聞き入れてもらえないという事情はいっそう厳しくなります。(〈「先生に会えて良かった」(1)2023.4.7〉にも書きました。)

 

 医者は一人一人言うことが少しずつ違いますので(医者から見ればほとんど同じことを言っているのですが、患者さんからみればそのちょっとした違いがとても気になります)、患者さんの心がいっそう波立つことになります。

 

 医者はそれぞれ少しずつ違うことを言うのですから(みんなが判で押したように同じことを言うとしたら、それは気持ち悪いだけでなく、本気で向き合ってもらっていないという気がします)、患者さんは戸惑い、自分なりに納得できる物語を作り上げます。そうすると、誰の説明とも違ったふうに、自分の病状や未来について理解していくことになります。

 

 チーム医療制は、患者さんからの医師への「思いやり」「配慮」「我慢」の上に可能になるのです。入院は、身体のつらさと不安の真っただ中にいる人の「負担」をますます大きくしてもいるということに医者/病院管理者は気づいているでしょうか。