“まど・みちお”さんは、素敵な歌詞をたくさん書いています。そのことを認めた上で、人間の視野というのは、時代などに制約されざるを得ないものなのだなと感じてもいます。
まどさんの代表作とも言うべき「1年生になったら」。でも「ともだち100人できるかな」という言葉に傷つく人もいます。自分の子どもが他の子どもとうまくコミュニケーションが取れないことに悩む親たちにとって、この歌詞は決して楽しいものではありません。このことは、自閉症の子どもたちと関わる仕事をしていた妻から指摘されるまで気がつきませんでした。(〈2022.11.6「残念ですが・・・」(2)〉にも書きました。)
「100人」は100点満点と通じているような気がします。私は「満点」というような誉め言葉も好きではありません。乳児健診の際「満点です」と言う医師がいるのですが、それを聞くと私はいつもビクッとなってしまいます。言っているほうは「最高の誉め言葉」と思っているのでしょうが、子育てを点数で表してしまうと「満点でなければ」と追い込まれる親もいるかもしれません。
1971年と1988年のNHK合唱コンクール小学校の部課題曲「地球のこども」も作詞しておられます。
あしたの ゆめに ふくらむ
生き物の 星 地球
ここには イヌがすむ サルがすむ
ハトとメダカと チョウチョウも
人間を にいさんに して
ああ みんな 地球の 子ども
太陽の子ども
うちゅうの 子ども
葉っぱの 旗が かがやく
生き物の 星 地球
ここには タケがある マツがある
ムギと アンズと タンポポも
人間を ねえさんに して
ああ みんな 地球の 子ども
太陽の子ども
うちゅうの 子ども
地球を大切にし、自然を守り、すべての生き物が「仲良く」生きていこうという思いが書かれています。でも、初めて聞いた時から、私には少しだけ違和感がありました。
人間が、他の生き物の「にいさん」や「ねえさん」という「上の」地位で良いのだろうか。その姿勢は地球環境を守ることにもつながるけれど、地球環境を破壊もしてきたのではないだろうか。男性は動物の「にいさん」で女性は植物の「ねえさん」というのは性別分業ではないのだろうか。
「細かいことが気になる性格」なのはテレビドラマ「相棒」の杉下右京ですが、「細部に神も悪魔も宿り」ます。細かいことに気を配らなければ、医療の現場では「善意」から良かれと思って、無自覚に患者さんを傷つけていることも少なくないのではないでしょうか。そうした視力を持ち続けていたい。