「彼処に御座ります!」

月明かりに浮かぶ2つの影

走り寄る


振り向く影


追い越した


反転し、影を見つめる


「千田殿!」


「くっ鞍田か!」


見つめる


「父上!」


すがる

小さな影


「小弥太。下がっておれ!」

すがりついている

「下がれ!」

影はゆっくりと離れていく

「鞍田が来るとはな…。余程、儂を打ちたいとみえる」


「上意でございます」


「上意か…。月沼じゃな…。…脅されたか。」


「上意でございます」


「鞍田。そちには分かっておろう。儂が何をしに行くのか…。頼む。行かせてくれ。月沼の悪行を正さねばならぬ!頼む…」


「…千田殿。これは上意でございます。御覚悟召され」


「…左様か。」


影はゆっくりと刀を抜いた

月明かり


照らし出す光


構える


対峙


流れる空気


一瞬


同時に動き出す


間合い


一気に詰まる


雄叫び


叫んでいた


すれ違う


手応えはあった


振り向く


空気は止まっている


「父上~!」


駆け寄る


小さな影


横たわる影にすがりついていた


嗚咽


辺りを覆う


ゆっくりと近付いた


「坊主!こちらを見ろ!」

小さな影は

覆い被さり

顔をあげない


手を掴む


交錯する眼差し


「しっかり見詰めろ!親父を打った男を!
忘れるな!この顔を!」


小さな瞳


宿る炎



兵馬は踵を返した


「あの子が来るまでは死ねぬ。あの子が来るまでは…」



月明かりは

変わらず

木々を

照らし出していた

明るく

綺麗な

月夜であった



(完)