指揮:ジョナサン・ノット

ピアノ:児玉麻里

ヴァイオリン:グレブ・ニキティン(東京交響楽団コンサートマスター)

 

ベルク:室内協奏曲-ピアノ、ヴァイオリンと13管楽器のための

マーラー:交響曲 第1番 ニ長調 「巨人」



大きな期待を持って臨んだ演奏会。期待通りのところと、そうじゃないところが入り混じった感想を持つ結果となった。終演後に何人かの友人、知人と言葉を交わしたが、絶賛する人と意見を留保する人とが半々という感じ。私自身は後者である。


特にマーラーが意欲的な大熱演であったことには異論がない。コントラバスを8本動員したフルサイズのオケの音を聴くのも久しぶりだし、ブラス隊の出来もまずまず。(冒頭のペットのバンダは一人だけ多分3階席奥の扉付近から吹いていたようで、思わぬ方向から聴こえてきた)

ノットのアプローチはこの曲に関しては、意外なほど巨匠風で、悠然として急ぐところがない。終楽章のコーダなど驚くほどの横綱相撲。これが東響の性格に合わないのか、私自身は今ひとつ乗り切れなかった。バンベルク響との録音もこうだったろうか。


ベルクの室内協奏曲は、最近は聴いていないが、以前はリヒテルのメロディア盤の名演でよく聴いた曲。実演はおそらく初めて聴くと思う。久しぶりに聴いたが、この曲はもう少し狭いホールでやらないと、ベルク初期の作品に共通するあの密室的な熱気や濃厚な表現が今ひとつ伝わらないのではないか。あとは好みの問題だが、やはり楽章ごとに切れ目がある方が私には聴きやすい。


ノットはこれで一旦、出国するとのこと。とにかくこの困難な時期に来日してくれたことに感謝したい。