この日も健太は仕事だった。
会場での待ち合わせ。
私は先に席に着いていた。
いつ渡そうか。
なんて言おうか。
そんなことばかりが頭の中を占領して。
まもなく始まるというときに健太が来た。
チャゲ&飛鳥のコンサート。
なかなか来られるものではない。
けど、
あまり覚えていない。
上の空での2時間。
帰りの地下鉄でも切り出せない。
降りる駅は一緒。
出口は逆。
これだ!!
電車を降りて、すぐに渡した。
“俺はプレゼントは用意してないけど。”
別れてください、
とだけ言ったような気がする。
手紙を入れたような入れてないような・・・。
気付いたときはアパート。
なんであんなに泣いてたんだろう?
寂しいとか、後悔とかじゃない。
言葉には表せない虚しさというか。
これまで私は何をしてきたんだろう?
気が抜けたような感じがした。
電話。
健太だ。
“マフラーありがとう。泣いてんの?”
からかうように言われて悔しくて。
泣けてまともに話はしていない。
でも、健太にとっては、
私が本当に別れたがっているとは
思っていないようだった。
だから、
“何か言いたいことはないの?”
とか、嫌な言い方をしたり。
とにかく、
健太から離れることが
そのときの私の全てだった。