あきらめたくない支援者をしっかりサポート

30年以上描画療法に関わってきた経験から 今、伝えたい

【回想法】を使った本物の会話で、

選ばれる支援者になる方法をお伝えする

公認心理師の赤堀富子です。

 

 

 

発達障害を持つY君とはまだ4か月の付き合いである。

小学校3年生の彼とは、言葉でのやり取りは難しい。

 

体験をしてもらったときは、母親がついていたので、制作後すぐに帰った。

入会して、母親と離れたのちは90分の制作時間を任されている。

 

 

 

絵を描く場所であることは理解しているので、

好きなダチョウ、エミユ、オオカミを描き続けた。

 

彼独特の形を持っていて、左向きのダチョウを何枚も描いた。

 

アトリエで用意した題材を無視したが、

とにかく絵を描くんだという姿勢であった。

 

初回はこれで終わったので、次に向けて、

動物図鑑からダチョウやオオカミを探して大きくプリントして臨んだ。

 

2回目、ダチョウの写真にちらっと視線を投げた。

1枚だけ、写真を見て描いたが、すぐに興味を無くした。

 

 

 

その後、デジカメ、パソコン、プリンター、を探索し始めた。

 

PCは触らないでほしいというが、全く意に介さない。

 

そこで、3回目以降デジカメは隠し、PC、プリンターの電源を落とした。

 

これがY君シフトである。

 

 

 

 

彼がやってくる時間になるとスタッフ全員でY君シフトを敷くのである。

 

見えなければ、触ることもないし、

電源が入っていなければ、彼がスイッチを入れることもない。

 

 

きっと諸所で叱られることが多いであろうと考えられるので、

叱らない、指示しない、命令しない、ことを確認した。

 

 

だけど、今日の課題があること、何であるかを確かに伝えなければならない、

このためにはスケジュール表を作る。

 

 

飽きる少し手前で次に移る、

このためには一回のセッションに対して3セットくらいを常にスタンバイしておく。

 

彼の好きなものを探索し、興味関心を引く物と同時に、

全く関心のないものにどのように引き込むかを、絶えず探している。

 

このように一つ一つさがし、彼に問いかけ、提案してみて、

採択か却下を彼に聞くということを繰り返している。

 

 

 

 

4ヶ月経った今、彼のスピードに合わせ、関心事を拾いつつ、

アトリエの課題をさらっとやってくれるようになった。

 

タブレットで動画による説明をしたとき、

タブレットを手にした彼がタブレットを離さず、検索キーワードを入力し始めたとき、

返すように言ったが、時すでに遅く、強引に取り上げることになった。

 

 

 

 

タブレットを取り上げられた彼は、「イヤダ―、カエセ!」と蹴ってくるので、

「タブレットを返してもらいました、ここでは動画の説明に使います!」と毅然と、

叱りつけるのではなく、声を荒げるのではなく、話した。

 

すぐに席を立って行ったが、これもまたすぐに帰ってきて、

べたっと近づいてきた。

 

許しを請うしぐさであろうか、

私は叱っていないし、怒ってもいないことをトーンを落として伝えた。

 

その後は速やかに作品を仕上げた。

このような「ちからわざ」も時には必要になるかもしれない、

が、小さなルールが入っていくことで「人」に近づいていくと信じている。

 

まだまだ作品を深めるということいたっていないが、

私たちとの小さな接点ができつつある。

この小さな点が、関係性と言えるまでになれる日まで、

私たちの格闘は続く。