大正13年8月22日 | 胡桃澤盛のブログ

胡桃澤盛のブログ

戦間期の農村に生きた一青年の日記。長野県下伊那郡河野村。大正デモクラシーの時代、左傾青年運動にも心を寄せていた胡桃澤盛(くるみざわ もり)は、やがて村長となって戦時下の国策を遂行する。その日記には、近代日本の精神史が刻み込まれていると言えよう。

八月二十二日(金曜) 雨

午前、雨未だ霽れず。翁助遂に終にして田村へ行く。

さあ自分の生活にも従前といさゝか変った処が出来てくる訳だ。人間らしい生活が出来る。

午後、福井の下に大根を蒔き、後清水下の畦草を刈る。

青年会内部に不良分子が現れて来た。罰に附せねばいかん。

早生稲は綺麗に穂が出揃うた。草出来の加減で見れば例年の一割位いは増収である。春夏共に繭は相当取れ、而して今の糸価は又高値。桑も伸びる。秋蚕が順調に行けば本年は不景気と百姓は泣く事はない。

銭の流通して居ないのは政府の為す処だろう。通貨を低下せしむれば自然国民は勤倹になる。