大正13年8月17日 | 胡桃澤盛のブログ

胡桃澤盛のブログ

戦間期の農村に生きた一青年の日記。長野県下伊那郡河野村。大正デモクラシーの時代、左傾青年運動にも心を寄せていた胡桃澤盛(くるみざわ もり)は、やがて村長となって戦時下の国策を遂行する。その日記には、近代日本の精神史が刻み込まれていると言えよう。

八月十七日(日曜) 晴

恐ろしい様な不安とと或一種の期待とを持って待ち兼ねて居たお盆も比較的平凡に過ぎ去って今日は又田の草取りである。自分は個人として他の連中に劣って居りはしない事と登山の帰りの得意さ、又勘定日も村青年会の時も自分は常に愉快であった。多忙なのにも驚いた。自由の時間は殆んど見出せなんだ。

一の期待は自由の時間の点と自己の意思の点で獲得しなかった。此の方にはもう大きな力を注がない。未だ他に生きる刺を与えてくれるものが発見された。

俺は凡物であるが周囲に蠢動してる連中より深い悩みと人間らしさとを持ってる事が此の盆中に判った。

天竜端の除草をして後畦草を刈る。

夜、浜井場の事で竹村貞雄氏来る。登山、書画の談を為す。