💕いのやま73
妄想小説・闇愛-yamilove-
第73話【予想外の嵐】
♠︎伊野尾side♠︎

チュンチュン‥‥‥

「‥‥‥ん‥‥‥?」
「いのちゃん♡おはよ」

目が覚めると、山田が目の前に、超至近距離でいっしょに寝ている。


伊野尾「わっ!?」
山田「えっ?驚くの?‥‥‥昨日は裸で一夜を共にしたのに?‥‥‥昨日のいのちゃんすごかったな~。もう狼みたいに俺に襲いかかってきて、全然離してくれないんだもん。俺にいっっぱいキスマークつけて、あんなに激しく動くいのちゃん初めて見たよ」
伊野尾「‥‥んっ?!‥‥俺、襲いかかったか?!キスマークはつけた覚えはあるけど‥‥激しく動くことは‥‥‥」
山田「ちょっといのちゃんwwそこは慌てて布団のぞいて『いや、一線越えることはしてないぞっ?!』って言うとこだろwwそのいのちゃんが見たかったのに」
伊野尾「あ、すまん。わりと昨日の記憶はハッキリあって‥‥」


そう、昨日の記憶、山田のあの表情や吐息、何もかもをわりと鮮明に覚えている。

伊野尾「――――‥‥‥‥////」
山田「ふふっ。そんなにハッキリ覚えてくれてるのか‥‥。照れちゃうな」
伊野尾「もう、朝からからかうなボケッ!//早く朝ごはん食べるぞ」
山田「‥‥‥‥‥‥」

山田を離して、服を着て台所へ向かう。


山田「もうちょっといのちゃんとラブラブしたいな‥‥‥」


伊野尾「え?なんか言ったか?」
山田「‥‥‥あ‥‥ううん‥‥なんでもねーよ~」

みそ汁と何かおかずになるようなものは無いかと考えていると、うしろから山田が来た。
山田「いのちゃん、みそ汁作るの?俺が作るよ。油揚げあっただろ?」
伊野尾「あ、あぁ‥‥。あと冷蔵庫にあるのは梅干しか」
山田「朝ごはんなんだしそれぐらいでいいんじゃない?いのちゃんはお米といでよ」
伊野尾「分かった」

台所で、俺が米をといで、隣で山田がみそ汁を作る。
なんか新婚みたいでいいなと、幸せをかみしめた。


――――――


月曜日――
日曜日には山田は帰り、幸せなひとときも終わり、今日からまた一週間仕事かと思うと憂うつだと思いながら出社すると、たまたま偶然、山田も同じタイミングで出社してきて、平成会社の玄関のところで偶然会った。

平成会社は大きい会社で、入った玄関の場所からエレベーターまでの空間がめちゃくちゃ広く、人を探したり見つけるなんて大変なのに、それでもなぜか山田はすぐに見つけられた。

伊野尾「おい、山田。おはよう。偶然だなこんな広い場所で会うなんて」
山田「おっ♡いのちゃんおはよう!よく俺が分かったな!?やっぱ運命の赤い糸で結ばれてんだなー」
フッと笑いながら山田と歩いていくと、違和感を感じた。

なぜか、チラチラと、周りの社員が俺たちを見てくる。

平成会社は部署がたくさんあって、顔も名前も知らない人が大勢居る。なのに、なぜか、全員ではないがたまに周りのヤツらが、振り返ってまで俺たちを見てくる。
まるで有名人にでもなったかのような気分だ。

山田「ん‥‥なんだ?なんか視線感じるんだけど」
伊野尾「あぁ‥‥」

もうすぐ企画課室に着くというとき、廊下の向こうに知念と八乙女さんが立ち話しているのが見えた。すると、知念が俺たちに気づくなり、二人が猛ダッシュで俺たちのところに向かってきた。

知念「~~~~っ」
ダダダダダ‥‥‥
知念「山田ぁ」
八乙女「‥‥‥よっす」
山田「おっ、知念、八乙女さんおはよう。なんだ?走ってきて」
伊野尾「おはようございます」
八乙女「ちょっと顔貸せや」
伊野尾・山田「え?」


――――――


俺と山田は、トイレへと呼び出された。
1階のトイレに、車イスの人用の広い個室トイレがあり、その個室トイレの中で、俺と山田と知念と八乙女さんは4人で入っているという状況である。(どんなんだ)

山田「なんだ?こんなとこに4人で入って‥‥。人に聞かれちゃまずい話?」
八乙女「あぁ。おまえら、かなりヤバイぞ。朝、コレが掲示板に貼られていた」

八乙女さんがズボンのポケットから出した、クシャクシャになった紙を広げて見せる。
俺は血の気がひいた。




このあいだ二人きりの場所で食べたとき、ふいにキスをしそうになったときの、顔を近づけあっている山田と俺の写真が載っている。



山田「えっ‥‥‥」

伊野尾「なっ‥‥‥なんでこんなとこ‥‥誰が」
山田「アイツだ」
伊野尾「えっ」
山田「ごめんいのちゃん。たいしたことじゃないと思って言わなかったけど、こないだ会議室でアイツと会ったとき、アイツがこの写真を見せてきたんだ。この画像と同じだ」
伊野尾「なっ‥‥なん‥‥なんでこんなとこ撮ったんだ?なんでコレを山田に見せる?」

俺はかなり気が動転した。なんでこんな写真が?!んで犯人が中島裕翔だと?!しかもこの写真を社内のヤツらに見られたと!

山田「俺、アイツに『気持ち悪い』って言っちまって‥‥。でも俺は同性愛が気持ち悪いって言ったんじゃなくて、アイツが襲いかかることを言ったんだけど『涼介も同じ』ってこの画像を見せてきた。たぶんずっと俺たちのあとをつけてこの写真を撮って、こうやって皆にバラして嫌がらせすることが目的だったと思う」
伊野尾「えぇ‥‥」

八乙女「『アイツ』って?」
山田「者無譜製薬の中島さんのこと」
知念「えっ‥‥中島さんってそんなにヒドイ人なの?ヤバイよそれ~!」
伊野尾「‥‥‥‥‥‥」



俺は、ついこのあいだまでの山田との幸せなひとときから一転して、窮地に立っている気がした。
というか、そうだ。
俺としては、この同性同士の恋愛というカタチ(スタイル)は、べつにかまわないじゃないか、ほっといてくれと思うのだが
自分はそう思っていても、世間はそうは思わない。

とくに、日本人はそうだ。
日本人は保守的で、外国人みたいに自分をオープンに出さない。
戦争があった時代は戦争をすることが当たり前で、戦争に反対する人間は非国民と言われていた。現代は逆にラブ&ピースが推し進められていて、戦争反対が当たり前のようになっているが
つまりは外国人はデモを起こしたり「自分はこう思っている!」と自分の意見をぜんめんに出す人が多いが
日本人はわりと右向けば右、大多数派につくという人が多く、本当はA派でも周りにB派が多いと流されやすい人が多いのが特徴だ。
それは、学校の中でも、社会人になってからも、住む地域でも同じである。


同性同士の恋愛は、今でこそ認められつつあるが、少し前ならおかしいことのように気持ち悪がられていた。
同性同士の結婚は、日本ではまだ認められていない。
代わりに『パートナーシップ証明書』というものが出来てはいるが、婚姻届とは全然違う。

だから俺は、山田とほそぼそと、できたら誰にも気づかれずにこの愛を育んでいきたかった。

だが、こういうカタチで社内のヤツらにバレてしまった。
社内のヤツらは「賛成派」か「反対派」どちらが多いのだろう。
多いほうに皆、つくに違いない‥‥。


山田「‥‥‥いのちゃん?」
伊野尾「山田」




伊野尾「俺は、本当は誰にもバレないでいることが理想だった。‥‥‥でもこうなった以上、仕方ない。俺たちは俺たちで、堂々としてよう」



山田「え‥‥‥」
八乙女「‥‥‥」



伊野尾「ココで小さい顔したり、無理に「誤解です」なんて言ったらよけいおかしくなるし、俺としては「誤解です」とか言いたくない‥‥。山田との関係に嘘をつきたくない。山田に対する気持ちはうしろめたいもんじゃない。俺は堂々と山田と居たい!」

山田「――――――‥‥‥‥」




山田「いのちゃん‥‥‥」

山田が、ニコと少しはにかんで笑った。


山田「あぁ。俺だって、いのちゃんとのこと隠すつもりなんてねぇよ。もし、誰かから何か言われても、うしろ指さされても、いのちゃんと愛しあってることは確かだ。だから今まで通りフツーにしてて、何か言われたらカミングアウトすりゃいいんじゃない?そしたら人前でもイチャイチャできるかもしれねぇし♡」
伊野尾「い、いや‥‥‥人前でイチャつくのはちょっとハードルが高いけど‥‥//」


八乙女「なんだよなんだよ。せっかく俺ら、おまえらのことフォローして「皆さんコレはガセでーす」って言ってやろうと思ってたのによー。だったら俺らが出る幕無ぇじゃねぇか」
知念「へ~‥‥僕が思ってたよりも、伊野尾くんと山田ってラブラブになってるんだね♡‥‥でもコレを機に人前でもイチャつけるなんてうらやましいな!ねぇ光くん、僕たちもキス寸前のポスター作って、朝一番に会社に来て貼って、カミングアウトしちゃわない?!」
八乙女「う~~ん‥‥‥」




第74話へつづく