私は数ヶ月に一度、土曜日または日曜日に休日出勤をする。
毎月締めの業務を担当しているので、日程的に休日出勤しないと間に合わない時があるから。
私は休日出勤が嫌いではなかった。
電話も鳴らないし、静かだから仕事が非常に捗るのである。
代休ももらえる。
たまの平日のお休みに憧れるので、悪いものではなかった。
それに、何といってもうるさい彼女たちがいない・・・
締め業務はA子以外の人事課全員で行っていた。
担当業務を細かく分け、効率良くこなしていかなければ終わらない。
土曜日に出勤し、みんなで黙々と仕事していた。
と、突然全く関係のないA子が出勤してきたのである。
みんな、「なんで来たんだ」と目を見開いていた。
「急にやらなくちゃいけない仕事があって~」
とA子が席についた。
ウソだ、あなたはただの賄い屋でしょ
普段だってそれ以外仕事なくて何もしてないじゃん
何で土曜日に出勤してくるの
みんなそう思っていたに違いない。
A子は何やら書類をだし、急に係長に向かって怒鳴り始めた。
「前にも言ったでしょ!日誌はちゃんと書いてって指導しておいてよ!」
そう言うと、若い係長に書類を投げつけた。
係長は今日は締め業務をするために出勤しているのだよ・・・あなたに怒鳴られるために出勤しているのではないんだよ・・・そんなこと月曜日で良いじゃないか。
全く、空気を読んでくれよ。
まぁ、いつものことなので、あまり気にしなかった。
みんなも同じようであった。
「ねぇねぇ、お昼は?」
A子がさっきとは全く違う声で言った。
気がつけば12時を周っていた。
仕事に夢中で誰も気が付かなかった。
休日は社員食堂はやっていない。
いつもはみんなで近くのレストランに入り、手っ取り早く食べて仕事に戻る。
間に合いそうもないときは出前をとって、食べながら仕事する。
「おいしい坦々麺があるの、そこに行こうよ。」
A子が仕切りだした。
いつ着くんだ~どこなんだ~と思いながらみんなA子について行った。
お店は会社を出て、15分くらいのところにあった。
「いつもは遠いから、こういう時じゃないと来れないんだよね。」
そんなにお昼に時間は掛けていられないんだよ・・・早く仕事に戻りたいんだよ・・・。
往復で30分、なんてもったいないんだろうと思った。
さすが、食べるものにはうるさいだけあって本当においしい坦々麺だった。
A子はうどん同様、チョビチョビと坦々麺を食べ、最後の二、三口を残した。
まったく、私もそうだが仕事に関わる重要ごとでないと誰もA子に反抗できない。
というよりも、みんなA子を相手にしていないのだ。
お店を出て、会社に戻る途中にA子は
「たいやき買って行こうっと!」
とお店に入った。
それ食べるのだったらさぁ、さっきの坦々麺残さないんじゃないの
矛盾し過ぎ。
会社に戻ると、2時半近かった。
ものスゴく時間を無駄にした
気合いを入れて仕事をした。
ふと、A子を見ると
「食事の前は手を洗いましょう。」とまた張り紙を作っていた。
それが急な仕事なのかぁ
人事課の全員が出勤しているのに、A子は自分だけ仲間外れにされている気持ちになっているの・・・
それとも、自分の知らないところで自分の悪口を言われるのがイヤだから・・・
(仕事に追われて、言ってる暇なんてないよ)
お昼ごはんが目的・・・
休日だけど、ヒマだから来たの・・・
やっぱりキャリアウーマン気取り
なぜ出勤してきたのだろうか、真実の答えは分からない。
A子よ。
土曜日なんだから休みなさい。
お願いだから、休日出勤してまで仕事しているのを、邪魔をしないで。