末娘のリティは、わし(母親)に対してライバル心を燃やした。
わしの行動を一から真似して、その上を行こうとする。
わしを「おい」と呼ぶ‘おじさん‘は夕方彼の自宅に帰ってきて食べ物をくれるんだが、わしは足音で遠くから来るのがわかっていつも先回りして待っている。
そういうわしの行動をリティは察知して、彼女も来て‘おじさん‘の食べ物をもらうようになった。小さい頃からわしに付いて来ていたせいか、‘おじさん‘もリティがわしの子供だと知っていた。
しかし、‘おじさん‘と喋るのは、わしだ。
いつも通り‘おじさん‘が「おい」と呼ぶから、わしは、「おかえりなさい」という。
「腹へったか?」
「はい〜」
そうやってわしが会話をしているのを見て、リティは同じように‘おじさん‘と会話しようとした。しかし、すでに、わしが先に‘おじさん’と懇ろになっていたので、リティが入れる余地はなかった。・・・いや、わしは入らせなかった。
オジョウとダンナサンはほとんど家にいたが、わしはベットをもらってそれで十分だったから、特にわしは話をする必要がなかった。
ベットはわしがいない時にはリティが使っていた。
オジョウ夫婦は庭に尻尾の長い雄猫が入って来ると追い出してくれる。一方、リティはわしに似て「 幸せの尻尾 」を持っているので、追い出されなかった。
・・・ということで、リティはわしのいない間に、わしが‘おじさん‘と築いた関係をオジョウとダンナサンとの間に築くべく、オジョウやダンナサンが出てくる度に近くに寄って甘い声を出して体を擦り付け、自分の体を撫でてもらっていた。
人間はこういうことをされるのが好きだ。それで嬉しいと、次は美味しいものが出てくるのがお決まりだ。
わしは自分の子らには「無闇に人間に体を触らせてはいけない」と言っている。
人間は清潔そうに見えるが、実は結構危ない菌を持っている。予防注射を打っているから影響がなく健康そうに見えるが、体にどんな菌を飼っているかわからないのだ。
この「相手に体を触らせ気持ち良くさせて、せびる」というテクニックはわしはしない。家猫だった頃、他の猫たちはしきりにそうしていた。わしが野良になってから生まれたリティがどこで習ったのか。さしずめ同じ時期に野良になった元家猫たちからだろう。
そんなこんなで、娘- リティの策略にかかったオジョウ夫婦がわしらに食べ物を用意してくれるようになった。
ただ、わしには「おい」と呼んでくれるおじさんが毎晩夕食を用意してくれるから、オジョウたちの食べ物は当てにしていない。しかし、たまに美味しそうな匂いのするものが出てくるので、食べてやる。・・・すると、オジョウは喜ぶ。
オジョウは、わしがベットに寝ているだけでも、喜んでいる。
彼女自身が心地良くベットに寝ているわけでもなく、美味しいものを食べているわけでもいないのに、何で嬉しいのか不思議だ。
でも、人間は気分が良いと誰にも危害を加えないので、とにかくいいことだ。
願わくば、リティが変な菌を人間からもらわないことを願う。
参照記事>>「末娘- リティのこと」