『オクラホマ!(Oklahoma!)』(1955)は『真昼の決闘』(1952)や『地上より永遠に』(1953)で知られるフレッド・ジンネマン監督が20世紀フォックスで撮ったミュージカル映画です。

リン・リッグスが書いたブロードウェイ劇「ライラックが盛んに咲く(Green Grow the Lilacs)」に基づく本作は、リチャード・ロジャースとオスカーハマースタインⅡ世によるミュージカル舞台の映像化作品になります。

 

1906年に46番目の州となるオクラホマのクレアモアでカウボーイとして働くゴードン・マクレー(役名:カーリー・マクレーン)は、朝の光を浴びながら愛するシャーリー・ジョーンズ(役名:ローリー・ウィリアムズ)と彼女の叔母のシャーロット・グリーンウッドの農場に向かいます。

農場で彼はシャーリー・ジョーンズを、その晩学校建設資金の為に開催されるピクニック・バスケットのチャリティ・オークションに誘います。

しかし、彼の誘いの遅さに苛立ちを感じていたシャーリー・ジョーンズは、敢えて彼の申し出を断ります。

不意を打たれたゴードン・マクレーは、彼女の為に飾り付き四輪馬車があると嘯(うそぶ)いて誘惑しますが、実際は、誘いを断られた意趣返しに口走った出任せであることを白状します。

憤ったシャーリー・ジョーンズは、勢いでゴードン・マクレーに彼女の農場で働くロッド・スタイガー(役名:ジャッド・フライ)とチャリティに行くのだと言い放ちます。

カンザスシティから列車で戻ってたカウボーイのジーン・ネルソン(役名:ウィル・パーカー)は、恋人のグロリア・グレアム(役名:アド・アニー・エラー)を探しますが、グロリア・グレアムは彼が留守にしている間に、行商人のエディ・アルバート(役名:アリ・ハキム)に心を奪われています。

ジーン・ネルソンは、農夫であるカウボーイ嫌いのグロリア・グレアムの父親から、50ドルの支度金を結婚の条件にされていましたが、ロデオで獲た50ドル全てをグロリア・グレアムへのプレゼントに使ってしまったことで約束が果たせないことを知ります。

町の人々は、チャリティ・オークション前の気分転換に、叔母シャーロット・グリーンウッドの農場に集まります。

そこに現れたバーバラ・ローレンス(役名:ガーティ・カミングス)は、ゴードン・マクレーに秋波を送ってシャーリー・ジョーンズを揺さ振ります。

シャーリー・ジョーンズを嫉妬させようと思い立ったゴードン・マクレーは、これみよがしにバーバラ・ローレンスに色目を使います。

その後ゴードン・マクレーは再び一緒にチャリティに行かないかとシャーリー・ジョーンズを誘いますが、ロッド・スタイガーのことを恐れ始めてきた彼女は彼の誘いを断ります。

動揺するシャーリー・ジョーンズの姿を見たゴードン・マクレーが、ロッド・スタイガーに詰め寄ると、口論に昂った2人は銃を発砲して威嚇し合います。

不安に苛まれたシャーリー・ジョーンズは、エディ・アルバートから買った嗅ぎ薬で眠りに就くと、ゴードン・マクレーと結婚する夢に安堵しますが、それはやがてロッド・スタイガーがゴードン・マクレーに襲い掛かる悪夢へと変わってしまいます。

ロッド・スタイガーはシャーリー・ジョーンズをチャリティ会場に馬車で向かう道中、愛の告白と共に顔を寄せようとします。

身をかわした彼女が馬に鞭を当てると、2頭の馬は路を外れ林の中を暴走します。

ロッド・スタイガーが馬達を落ち着かせると、シャーリー・ジョーンズはロッド・スタイガーを置き去りにして1人馬車をチャリティ会場に向わせます。

チャリティ会場では、主催者がカウボーイと農業従事者が仲良くするように促したにも拘わらず、グロリア・グレアムの父親がカウボーイ達に放った言葉を契機として喧嘩が始まりますが、叔母シャーロット・グリーンウッドの仲裁により何とか収まります、。

結婚に乗り気でないエディ・アルバートは、ジーン・ネルソンがグロリア・グレアムの為に買ったプレゼントを相場より高い50ドルで引き取ることに同意し、ジーン・ネルソンは支度金を手に出来たことを欣びます。

ゴードン・マクレーとロッド・スタイガーはシャーリー・ジョーンズが持ち込んだピクニック・バスケットを競り合い、ゴードン・マクレーはロッド・スタイガーが繰り返し提示する入札額を上回ろうと、鞍や馬の買い手を募ることで、かろうじて落札することに成功します。

シャーリー・ジョーンズを諦めきれないロッド・スタイガーが彼女に詰め寄ると、シャーリー・ジョーンズは彼に解雇を言い渡します。

彼女を守るためにゴードン・マクレーは農場に泊まることを申し出ると共に、彼女に結婚を申し込みます。

数週間後、ゴードン・マクレーとシャーリー・ジョーンズは結婚式を挙げますが、式の後に皆が集って祝う中、ロッド・スタイガーの姿が干し草の蔭に現れます。

 

ダンスとストーリーが有機的に結びついた’統合(Integration)ミュージカル’の嚆矢(※1)とされる本作は、楽曲の良さと70ミリワイドスクリーン撮影の効果を目論んだアリゾナ州とカリフォルニア州の野外ロケ映像の美しさが際立つミュージカル映画だと思います。

映画化の際、リチャード・ロジャースは、慣習化されていたとされる他の作曲家の曲追加を阻止する為に、自らを監修者とすることを条件としたとのことです。

そのことから、「It's a Scandal, It's a Outrage」と「Lonely Room」以外の全楽曲が映画版に用いられたことにより、上映時間が2時間半という長尺作品になったとされています。

有名な楽曲としては主題曲「オクラホマ」とオープナーの「Oh、What a Beautiful Mornin」、そしてマイルス・デイビス(tp)やアーマッド・ジャマル(p)のジャズ演奏で名高い「飾りのついた四輪馬車」ではないかと考えますが、主題曲「オクラホマ」は宝塚歌劇団の本公演以外にもレヴュー・ショウで繰り返し演じられております(※2)。

ワーナー・ブラザースのミュージカル『銀色の月明かりの下で』(監督:デヴィッド・バトラ 1953)や『ムーンライト・ベイ』(監督:ロイ・デル・ルース 1951) でドリス・デイと共演したゴードン・マクレーと、TVドラマ「パートリッジ・ファミリー」(1970)でシャーリー・パートリッジを演じたシャーリー・ジョーンズは、リチャード・ロジャースとオスカー・ハマースタインⅡ世の『回転木馬』(監督:ヘンリー・キング  1956)でも共演しております。

プロットは、相思相愛にも拘らず、異性人気のある相手を嫉妬したことによる鞘当てから、第3者を入り込ませてしまうことで騒動になるという流れですが、この作品で観るべきは、オリジナル舞台で、芸術レベルになったとされる躍動感溢れるダンスシーンではないかと考えます。

先住者である牧童達と後住者である農民達が、鉄条網の囲い込みから生じたであろう互いの軋轢(テンション)が躍動的な群舞へと至るイベント会場シーンは、後に『掠奪された7人の花嫁』(監督:スタンリー・ドーネン 1954)のアクロバティックな祭りの対立群舞に繋がるものと考えます。

あと、ほぼ全員バレエ経験者と思われる演者達によるコンテンポラリー・バレエ風のダンス・シーン(※3)を観ていると、楽曲(歌詞)とダンスが芝居の中に巧みに結びついているリチャード・ロジャース&オスカー・ハマースタインⅡ世作品の伝統を感じる気がします(※4)。

本作の、雄大なロケ映像とカウボーイの描き方を観ていると、『真昼の決闘 』(1952)と『地上より永遠に』 (1953)のフレッド・ジンネマン監督が、ミュージカル映画未体験でありながらも起用された英断が、後の映画に影響を与えるまでの作品となったのではないかと考えます。

リチャード・ロジャースの歌曲の良さが光る名作ミュージカルの映像化作品として好きな映画です。

 

(※1)小山内伸「ミュージカル史」(中央公論新社、2020年3版、pp76)

 

(※2)宝塚歌劇団はこれまで4度「オクラホマ!」を上演しております(鑑賞公演:日生劇場2006年10月。轟悠’専科’〈演:カーリー・マクレーン〉、城咲あい’月組’〈演:ローリー・ウィリアムズ〉、霧矢大夢’月組’〈演:ジャッド・フライ〉、越乃リュウ’月組’〈叔母エラー〉、’月組生徒’〈etc.〉)。

 

(※3)特にシャーリー・ジョーンズの幻想シーンでのアグネス・デ・ミルのバレエ・ダンスの振付はクラシックとコンテンポラリーが見事に組み合わさった、素晴らしいダンス演出ではないかと思います。

 

(※4)オクラホマのダンスというと世代的にフォーク・ダンスを連想しますが、この作品に於ける男女のダンスはかなり躍動的です。

あと、ペチコート姿のバレエ・ダンスシーンも、『掠奪された七人の花嫁』の寝室シーンとのオマージュを感じます。

 

PS:

☆作品の舞台であるオクラホマ州クレアモアの最寄りの都市として、映画ではカンザスシティが言及されますが、地図上ではクレアモアはカンザスシティとオクラホマ・シテイから共に約300キロ・メートルの位置にあることが判ります。

 

☆この文章は2018年4月に掲載されていた内容に粗筋を加え、大幅に加筆・訂正を加えた差替えになります。

 

§『オクラホマ!』

シャーリー・ジョーンズ、ゴードン・マクレー、シャーロット・グリーンウッド↑

ゴードン・マクレー、シャーリー・ジョーンズ↑

右足を高く上げて踊るシャーロット・グリーンウッド↑

縄を廻しながら踊るジーン・ネルソン↑

エディ・アルバート、グロリア・グレアム、シャーロット・グリーンウッド、シャーリー・ジョーンズ↑

 

ゴードン・マクレー、ロッド・スタイガー↑

シャーリー・ジョーンズ(中央)↑

ゴードン・マクレー、シャーリー・ジョーンズ↑

 

§TVドラマ「パートリッジ・ファミリー」(1970)

デヴィッド・キャシディ、シャーリー・ジョーンズ↑