二冠の3歳牝馬リバティアイランドが、秋のローテーションとしてジャパンカップへの参戦を検討中とのこと。予想はしていましたが、これは楽しくなりそうです。国内の一線級古馬とがっぷりよつで組み合える3歳馬はこの牝馬しかいないと思っています。今年のJCはイクイノックスを筆頭に豪華メンバーとなりそうですので、今から楽しみですね。
 
さて、種牡馬分析第二回は、スタートダッシュを決めたものの二の脚がイマイチ効いていない名スプリンターを取り上げます。
 
 
 
 
現役時成績︰19戦13勝(高松宮記念、安田記念、香港スプリント)
繋養先︰社台スタリオンS
23年種付け料︰1,200円(2位タイ)
22年種付頭数︰131頭
23年リーディング︰1位
 
【代表産駒】
アーモンドアイ(151,916万円) 牝馬三冠、JC
ダノンスマッシュ (58,435万円) 高松宮記念
サートゥルナーリア (52,359万円) 皐月賞、ホープフルS
 
 
●特徴 
①1,200〜1,600m戦に高い適性
父と同じく、スプリント〜マイルに高い適性を示す産駒が主流(どちらかというとマイル寄り)。アーモンドアイのように芝中距離をこなす産駒も出ているが、これは母系の適性や血統に依存するところ。基本的には母系の良さを引き出すというよりは、父の良さを押し出してくるタイプ。
 
②前向きな気性の馬が多いが気性難ではない
早期始動が可能な種牡馬だが、2歳戦からやれる馬が多いのは走る気が強い産駒が多いため。とはいえ気性難というほどではなく、やはりスプリンター向きの前向きな気性というべきか。牡馬は長く良い脚を使う馬が多く、牝馬に出るとある程度キレる印象。
 
③牡馬優勢のコルトサイアー傾向
重賞馬32頭のうち25頭が牡馬。勝ち上がり率やAEIでも牡馬優勢で、コルトサイアーとして見て良さそう。パワーが求められる短距離馬が中心なためか。
 
④馬格のある馬が良績
活躍馬の馬体重を見ると、480〜500kg前後に集中。距離適性や牡牝を問わず、ある程度の馬格まで成長する馬に大物が多く、小さな馬は避けたい。
 
 
 
●配合 
 ロードカナロア自身は母系の特徴を色濃く受け継いだ馬で、母父のStorm CatやSecretariatから米国的なスピード能力を、母母父のCormorantやIn Realityから底力とパワーを引き継いでいる。
特徴的なのはSecretariat=5代母Syrian Seaの全姉弟クロスで、このクロスがロードカナロアのキレと柔軟性の源泉となっています。産駒についても、この全姉弟クロスの効果は出ていて、2,000m〜をこなす産駒が現れるのもこの柔らかさ故か。
 
カナロア産駒については相性の悪い血が明確で、①Storm Catのクロス(米国的な単調なスピードが強調されるため、柔らかさを失い硬くダートに向く)
SecretariatおよびSir Gayloadのクロス(カナロア由来の全姉弟クロスで柔らかさの遺伝は十分で、更にクロスを重ねるのは過剰に柔らかくなり必要なパワーや瞬発力が失われる)
この2つのクロスについては、産駒の勝率や大物率から見ても相性はイマイチ。
 
逆に強調したいのが、ロードカナロア自身の血に流れるSex ApealSpecialという名牝2頭の血。Specialについては、Nureyevの直接クロスの他にSadler's WellsFairy KingといったNureyevとの全兄弟クロス、Sex Apealについては、直接クロスに加えてHail Proudly(=シンボリクリスエスの3代母)のニアリークロスは有効。ただしパワーの面が強調されすぎるため、活躍馬はダートに寄る傾向にある。
また、これらの牝系クロスを狙う際に、ミスプロのクロスが入ってしまうのはマイナス要素で、ミスプロのクロスが入ると途端に父父であるキングカメハメハ主導になり、単調なタイプに出やすい。
 
 
●注目のBMS 
Sadler's Wells系統
上述したSpecialの血を強化する配合。パワーと持続力に加え、豊富なスタミナを供給してくれるため1,600mの距離の壁を超える馬が出やすい。パンサラッサダノンスコーピオンといったGⅠ馬のほか、サートゥルナーリアのように母母父からでも存分に力を発揮する。
 
Danzig系統
ロードカナロアとの組み合わせで勝ち上がり率70%、AEI5.63。父キンカメ系に広げても勝ち上がり率54%、AEI3.06と系統的にも非常に相性の良い組み合わせ。
パワーと米国的なスピードを伝えるDanzigの血が入ると、高松宮記念を制したダノンスマッシュのように、よりスプリンター寄りな産駒が出やすい。ダートでの潰しも十分に効く配合のため長打率というよりはアベレージの高い母父。
 
●出資の際の注意点(まとめ) 
①短距離〜マイル馬が中心
②牡馬優勢
③少なくとも480kg程度の馬体重まで成長出来るか否かをよく考える
④Storm Catのクロスがあるとダート向き
⑤柔らかすぎるのは✕(SecretariatやSir Gayloadのクロスはマイナス)
Special(Sadler's WellsやFairy King)、Sex Apeal(Hail Proudly)を増幅させるクロス持ちは大物の傾向