随筆 我らの勝利の大道 52 11/07/22


恐れるな
 また恐れるな
   師子の子は
 万里を走りて
  天にほえゆけ

 御聖訓には仰せである。
「一度妙法蓮華経と唱うれば一切の仏・一切の法・一切の菩薩・一切の声聞・一切の梵王・帝釈・閻魔・法王・日月・衆星・天神・地神・乃至地獄・餓鬼・畜生・修羅・人天・一切衆生の心中の仏性を唯一音に喚び顕し奉る功徳・無量無辺なり」(御書五五七ページ)
 題目の功力は計り知れない。妙法の音声には、誰人の仏性も呼び覚まし、大宇宙をも動かす力用がある。
 だからこそ、生き生きとした勤行・唱題から、一切を始めるのだ。先頭を切って、皆を包み、皆を引っ張っていくような決意で朗々と題目を唱え切るのだ。
 弱々しい臆病な声では、魔は断ち切れない。題目はいかなる魔も打ち破っていく最強無敵の利剣なのだ。
 わが青年部は、「信行学」の基本を大切にし、題目の師子吼で、断固と勝ち進んでもらいたい。

     ◇

 この七月、我らが「青年学会」は、太陽と燃えゆく情熱で、勇気と真心の対話に走っている。

7月に刻む黄金史

 七月は、誠に不思議な宿縁の月である。
 日蓮大聖人が正義の諫暁の書「立正安国論」を鎌倉幕府に提出されたのが七月十六日(文応元年)。
 牧口先生と戸田先生が、凶暴なる軍国主義と対峙し、逮捕されたのは七月六日(昭和十八年)。
 殉教の先師・牧口先生の心を継ぎ、真実の弟子・戸田先生が出獄されたのが七月三日(昭和二十年)――。
 この不滅の歴史を思う時、創価の男女青年部が同じ七月に誕生したのは、深い深い意義があったのだ。
 そして、昭和三十二年の七月三日――。本来なら、私は東北・福島の浜通りを訪れる願望であった。
 しかし、北海道から空路、羽田経由で大阪入りし、全く事実無根の選挙違反の容疑で逮捕されたのだ。
 「大阪事件」である。十二年前の戸田先生の出獄と、同日のことであった。
 「世間の失一分もなし」(同九五八ページ)。大聖人の大確信を偲び、青年に恐れはなかった。
 私は二十九歳。結核で、「三十歳まで生きられない」と医者に言われた体であった。
 その三十歳を目前にしての「王難」である。しかも、当局は学会本部を手入れし、戸田先生を逮捕することさえ狙っていた。
 ここで、一人の若き弟子が戦い切るかどうか。学会を護り抜き、師匠を護り抜いて、一人の青年が不擁不屈で勝ち抜くかどうか。
 そこに、師弟の宿命の転換がかかっていた。
 さらにまた、広宣流布を大使命とする創価学会が、いかなる権力の魔性の迫害にも崩れぬ、金剛の基盤を固める大闘争であった。
 この攻防戦の重大な意味を、私は知悉していた。
 「あえて正視してこそ、はじめて果敢に考え、説き、行ない、事に当たれるのだ」とは、生誕百三十周年の魯迅の言葉だ。
 民衆を苦しめる権力の魔性とは断じて戦い、正義を満天下に明らかにしていく覚悟が、獄中の青年の胸に燃えさかっていた。
 佐渡御書には「師子王の如くなる心をもてる者必ず仏になるべし」(同九五七ページ)と仰せである。
 大聖人直結の創価学会であるゆえに、その「師子王の心」を持つ師弟を中心として、難攻不落の民衆の大城を築くことこそ、広宣流布の画竜点晴なのだ。
 逮捕から二週間が経った七月十七日正午過ぎ、私は大阪拘置所から、不屈の若獅子となって出所した。
 その夕刻、戸田先生と私が共に出席して、中之島の中央公会堂で行われた大阪大会には、突然の豪雨など物ともせず、「横暴な権力は許さない!」と、恐れなき庶民が大結集した。
 創価の師弟には、師子王の勇気がある。
 ――いかに三類の強敵が出来するとも、最後は信心を貫き通した者が、正しい仏法が必ず勝つ!
 青年が師子吼した常勝の大確信を、全同志が生命に刻んだ。「絶対勝利の信心」を不滅の学会精神として、相伝していったのだ。

精神継承のドラマ

 十五年前、中米コスタリカからアメリカに向かう途次、メキシコのベラクルス国際空港で、忘れ得ぬ出会いを刻んだ同志たちからも、嬉しい近況を報告していただいた。
 私と妻が空港に降り立った時、「ようこそ!」と日本語で歓迎してくれた可憐な少女も、今や白蓮グループの一員として活躍している。わが同志が一家の経済革命を成し遂げるなど、多くの功徳の実証も、本当に嬉しい。
 先月、行われた、訪問十五周年を記念するベラクルスの総会の模様は、地元のテレビでも取り上げられた。
 メキシコの大詩人オクタビオ・パスは言った。
 「勝利の栄光よりも、逆境に直面した時の意志の強さに感動がある」と。
 どんな苦難があろうとも、皆で励まし合いながら勝ち越えゆく、我ら創価家族の笑顔ほど、気高く晴れがましいものがあろうか。

     ◇

 今月、はるばると来日して、本部幹部会に参加された南米ペルーの壮年リーダーが、熱く語っておられたそうだ。
 ――ペルーには、生涯に一度、師のいる日本に行くことを夢見て、信心してきた先輩が大勢おられます。しかし、青年学会を築き、未来のペルー広布の永遠の流れを開くためには、自分が行くよりも子や孫たちに行かせてあげたい、と送り出してくれました、と。
 そして、その代表がここにいる青年たちですと、最年少の来日メンバーである二十歳と二十一歳の学生部員を、皆に誇らしげに紹介されたのである。
 二人の英才は、日本へ送り出してくれた父母や祖父母たちの思いを胸に、涙ながらに凛然と決意の瞳を光らせていたという。
 師から弟子へ、そして、親から子へ、孫へ――この精神の継承に、世界広布の命脈がかかっている。

弟子が勝ってこそ

 「青年の気概」――それは、師弟の絆を通して、永遠に流れ通っていくとは、米国ジョン・デューイ協会元会長であられるガリソン博士の洞察である。
 先日も博士は、その視点から、誠に貴重な期待の声を寄せてくださった。
 「『師弟』の関係を結ぶことによって、そこに常に若々しいエネルギーが湧き出るのです。
 戸田会長が牧口会長の精神に生き、池田会長が戸田会長の精神に生きたように、弟子が師匠の精神に生き抜くことによって、組織は若々しく発展を続けることができるでしょう。
 とともに、弟子が偉大にならなければ、師匠の偉大さは証明されないというのも事実です。そのためには弟子が受け身にならず、新たな価値創造の挑戦に立ち続けることも不可欠といえるでしょう」
 まさしく、弟子が勝たなければ、本当の師弟の勝利にはならない。それには、〝ここが自分の使命の戦場なり〝と定めた場所から、自ら戦いを起こしゆくことだ。私もそうしてきた。
 青年部の拡大は、世界の希望の拡大だ。
 「青年部がしっかりしていれば、創価学会は永久に発展する」と、戸田先生が常に言われていたことが、思い起こされてならない。
 かつて、私は関西の青年たちに語った。
 「私は戸田先生のもとで、あらゆる苦労をしてきた。それが今では、全部、自分の血肉となり、誰人も奪うことのできない最高の財産になっている」
 この師弟の底力を、今度は青年諸君が、自分の行動をもって、そして自分の人生をもって、堂々と証明しゆく時なのである。

逆境に負けぬ強さ

 「負げでたまっか!」と勇猛精進する福島青年部の有志は、カモミール(カミツレ)の種を、地域の友人に手渡してきたそうだ。
 美しい白い花を咲かすカモミールの花言葉は〝逆境に負けない強さ〝。
 その種が花を咲かせるように、君の人生にも、再びの幸福の花を咲かせよう!――そうやって、一人ひとりに勇気を送り続けているという。
 東北が生んだ、近代日本を代表する思想家・吉野作造は言った。
 「生命の力が実に一切の矛盾衝突を解決して行くものであることを忘れてはならない。随って又我々の生活に於ては、此の生命力の酒養を怠ってはならない」
 この「生命力の涵養」の最も確かな道を、若くして知り、究めゆく哲人こそ、君たちだ。
 わが信ずる君たちよ!
 「地走る者の王たり師子王のごとし・空飛ぶ者の王たり鷲のごとし」(同一三一〇ページ)との御金言を心肝に染めて、青春王者の歴史を勝ち開け!

 断固たる
  勝利勝利の
    この一生
  誇りも高く
     飾り残せや