2011.07.13 SP 韓国・国立忠州大学「名誉経営学博士号」授与式

【謝辞】

 一、はじめに、このたび、2018年冬のオリンピックの開催地が、韓国の平昌(ピョンチャン)に決定されました。

 かねてより、地元である江原道(カンウォンド)の親しき友人たちと一緒に、実現を祈ってきた一人として、本当にうれしい限りです。

 きょうは、貴国の洋々たる未来を象徴する、留学生の英才の皆さん方も出席してくださっています。

 私は、ともどもに、今回のオリンピック決定を心から喜び合いたいのであります。

 「世を照らす真理の拠点」と謳われる誉れの名門・忠州(チュンジュ)大学より、本日、名誉経営学博士号を拝受いたしましたことは、私の最大の光栄とするところであります。

 加えて、妻にも名誉碩座(せきざ)教授の称号を賜り、厚く厚く御礼を申し上げます。

 私と妻は、この身に余る栄誉を何よりもまず、貴国の模範の市民として、誠実な社会貢献を貫いている韓国SGIの友たちと分かち合わせていただきたいと願っております。

 誠に誠に、ありがとうございました

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◆ 共生の天地・忠州(チュンジュ)
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 一、貴大学が建つ忠州市には、統一新羅(しらぎ)の最大の石碑といわれる、8世紀後半の「中央塔」があります。

 その名の如く、「国土の中央」「中心の天地」であり、陸路、水路とも広々と開け、高句麗(こうくり)、新羅、百済(くだら)の三国の文化が融合してきた歴史は、誠に有名であります。

 そこには、衝突や排他ではなくして、共生と調和を基とする極めて平和的な「中原(ちゅうげん)文化」が爛漫(らんまん)と花開いてきたのであります。

 その伝統は、現代に脈々と受け継がれ、忠州市は、国家のサイエンス・コリア構想を牽引(けんいん)する「科学文化都市」として注目されています。そして、その中心にそびえ立つ学府こそ、貴大学なのであります。

 貴大学の校章の「円形」も、まさしく「中心」を意味しているとうかがいました。

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◆ 不屈の師弟の劇
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 一、万事において、「中央」「中心」の存在が重要であります。

 私の胸には、17世紀に忠州を軸として刻まれた師弟の劇がよみがえるのであります。

 それは、朝鮮王朝の大学者・宋時烈(ソンシヨル)先生と、その一番弟子・権尚夏(クォンサンハ)先生の絆です。

 正義と慈愛の社会を願い、迫害にも屈せず、戦い殉じた宋先生の遺志を受け継ぎ、師の学派を大成されたのが、愛弟子の権先生でありました。

 権先生は毅然と語られております。

 「いかなる困難に直面しても、何事もないかの如く、泰然と構えよ。己の中心さえ揺るがなければ、最後は正しい結果が出る」

 この荘厳なる師弟の足跡を、私は、日本の軍国主義と戦い抜いた、創価教育の創始者である、牧口常三郎生と戸田城聖先生の弟に重ね合わせて、命に刻みつけてきたであります。

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◆ 人間教育の共鳴
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 一、今、目まぐるしく移ろう激動の社会にあって、痛切に求められている課題は、何か ──
それは、一人一人の青年の生命に、何ものにも揺るがぬ信念と知性という「人格の中心」を築き上げていく「人間教育」の挑戦ではないでしょうか。

 その意味において、本年の卒業式で贈られた張炳輯(チャンビョンジプ)総長の祝辞には、青年が「中心座標」とすべき指針が、あますところなく示されております。

 それは第1に、自身の能力を高め啓発しゆく、たゆみなき努力。

 第2に、周囲と調和を図り、協力を広げていく賢明さ。

 第3に、過去にとらわれず、自分にしかできない独創的な世界をつくる創造力。

 そして第4に、慢心を排して、共同体に貢献しゆく謙虚さと奉仕の心であります。

 わが創価教育の理想とも深く響き合う、この張総長の高邁(こうまい)な教育ビジョンに、私たちは心から賛同を表したいのであります。

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◆ 人間の顔をしたグローバル化
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 一、ともあれ、社会の繁栄の「中心」は教育であります。

 未来の建設の「中心」は青年であります。

 そして、張総長が明確に宣言されているように、21世紀のグローバル時代の「中心」こそ、まぎれもなく大学なのであります。

 ゆえに、我らの大学を強くしていけば、危機の時代さえもチャンスに転ずる活路が、必ず開けていくはずであります。

 また、我らの大学と大学が手を携(たずさ)えていくならば、そこから必ず「人間の顔をしたグローバル化」の平和の連帯が広がっていくことを、私は確信してやみません。

 「まず自らが変わり、情熱燃え滾(たぎ)る火種となってこそ、人々に共感を呼び起こせる」という、総長のリーダーシップのもと、貴大学は、政府から4年連続で、「教育力量強化事業」に選ばれる快挙を成し遂げられました。

 さらに、入学志願者の倍率も、全国の国立大学の中でトップクラスであることも、よく存じ上げております。

 また看護学科は、国家試験の合格率・就職率ともに、100%を誇っているとうかがいました。

 「生命の尊厳」を守り輝かせゆく女性の活躍の道も、貴大学から、晴れ晴れと広がっているのであります。

 一、本日は、総長の聡明な同志であられる、金英女(キムヨンヨ)夫人もお迎えすることができました。私は妻とともに、心からの感謝と敬意を込めて、忠州ゆかりの女性詩人・姜静一堂(カンジョンイルダン)先生の言葉を両国の乙女と青年に捧げたいのであります。

 「人間が、仁(じん=人を思いやる共生の心)と義(ぎ=正しき道義の心)を持って生きることは、四季に春と秋があるのと同じである。

 仁を持って生きれば、礼節が輝く。

 義を持って生きれば、智慧が輝く」

 「跳躍の100年」を掲げる貴大学のキャンパスには、「上昇の志」をかたどった、高さ8メートル壮大なピラミッド形の塔が立っております。

 本日、出席してくれた創価大学生・短期大学生の皆さんも、この
尊き青春時代に「向学・探究の心」、そして「価値創造の心」という翼を伸び伸びと広げながら、一日また一日、高く高く飛翔していっていただきたいのであります。

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◆ 逆境に輝く堅固な精神
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 一、貴大学のシンポルは青松(せいしょう)であります。
 かつて、忠州ゆかりの大知性・宋時烈(ソンシヨル)先生は「霜の中でかえって青さを増す松の如く、逆境の中でこそ、堅固な精神がますます輝く人間たれ!」と獅子吼されました。

 貴大学のご厚情にお応えするためにも、いかなる風雪にも屈しない韓日友好の青松の大樹を、さらに、さらに林立させゆくことを、私は、ここに固くお約束申し上げます。

 終わりに、張総長ご夫妻はじめ、ご出席の皆さまのますますのご健勝を心からお祈り申し上げます。

 青松繁茂(はんも)するが如く、わが魂の母校たる忠州大学に、無窮(むきゅう)の栄光あれ!

 そして、わが愛する大韓民国に、永遠不滅の繁栄あれ!

 テダニ・カムサハムニダ!(韓国語で「誠に、ありがとうございました」)