2010.06.18 SP 御書と青年「異体同心の前進」〔上〕

御書と青年
池田名誉会長が語る青春勝利の指針

異体同心の前進 〔上〕

【棚野男子部長】 いよいよ情熱光る「青年の月」です。7月11日の「男子部結成記念日」を大勝利で飾りゆこうと、一丸となって拡大に打って出ています。

【池田名誉会長】 皆、元気だね! 広宣流布は、君たち青年の熱と力で決まる。一段と深き自覚を持って、勇気凛々と前進してもらいたい。

【熊沢女子部長】 女子部は7月19日に「結成記念日」を迎えます。私たち池田華陽会も、断じて新たな「師弟勝利の門」を開いてまいります。

【名誉会長】 これほど明るく、にぎやかな、希望に満ちた青年のスクラムは、世界のどこにもないでしょう。いまだ厳しい経済不況の中で、奮闘している友も多い。皆が励まし合い、支え合って、乗り越えてもらいたい。私も一生懸命、題目を送っています。一人一人が粘り強く「信心即生活」「仏法即社会」の実証を示し切って、功徳満開の青春であってもらいたい。これが私の願いです。

【阿部関東青年部長】 大関東の青年部も燃えています。50年前、「池田先生の第3代会長への推戴(すいたい)を急げ!」との声を真っ先に上げたのは、埼玉県の青年部でした。関東は、師弟直結の誇りを受け継いで、断固、勝ちます。
【名誉会長】 関東は明るいね! 埼玉も関東も、私の手づくりです。古来、「関八州(かんはっしゅう)を制する者は天下を制す」というが、関東は今や日本だけではなく、世界広宣流布の誇り高き要衝(ようしょう)であり、大本陣です。使命が大きいから、苦労も大きいに違いない。しかし、若き南条時光(なんじょうときみつ)への御聖訓にも「しばらくの苦(く)こそ候(そうろう)とも・ついには・たのしかるべし、国王一人の太子(たいし)のごとし・いかでか位(くらい)につかざらんと・おぼしめし候へ」(御書1565ページ)と仰せです。今、歯を食いしばって戦い切ったことが、全部、汝自身の生命を、王者の如く荘厳していくのです。戸田先生の事業が最も大変だった時も、その打開のために私は埼玉を奔走しました。一番、苦しい時代でした。だからこそ、一番、光り輝く黄金の歴史となっています。

【棚野】 若き日の池田先生が、戸田先生のために埼玉を駆けめぐっておられた当時の日記(昭和25年10月)に、こう記されていました。「戦いは、毎日激烈を極む。唯、勝つことを願い、前に前に進む以外の道なし」「進め、叫べ、戦え、若いのだ。若いのだ。今、活躍せずして、いつの日か、青春の戦う日があるのだ」この先生のお心のままに、団結して歴史を創ります。そこで今回は「異体同心」をテーマに、うかがいたいと思います。
【名誉会長】 わかっているようで奥深い、大事なテーマです。仏法実践の極意であり、あらゆる戦いの勝利の要諦(ようてい)です。私たちが常に立ち返るべき原点といってよい。

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◆ 川越での御書講義
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【阿部】 関東の同志が誇りとし、宝としている歴史の一つは、埼玉の川越における池田先生の御書講義です。この講義でも「異体同心の団結」を教えていただきました。これが「鉄桶(てっとう))の埼玉」の淵源(えんげん)です。以前、新井関東男子部長、照喜納(てるきな)総埼玉男子部長をはじめ男子部・学生部の有志が、この「川越講義」の軌跡を調べ、学ばせていただきました。先生が志木(しき)支部の川越地区の御書講義に足を運ばれたのは、昭和26年(1951年)9月から同28年2月まで、足かけ3年です。講義してくださった御書は「生死一大事血脈抄」「佐渡御書」「聖人御難事」など、記録に残っているだけでも11編に及びます。

【名誉会長】 懐かしいね。共に「行学の二道」に励んだ同志の顔は、私の胸奥(きょうおう)から離れることはありません。川越での御書講義を開始した時、私は23歳です。戸田先生が第2代会長に就任され、事業のほうは私が一身に担いながらの戦いでした。先生は、私たち講義担当者に厳格に言われました。「ただ講義すればいいというものではないで特に驚いたのは、一編の御書の講義が終わるごとに受講者に渡されていた「修了証書」です。そこには一枚一枚、受講者の氏名と講師である池田先生のお名前、学んだ御書名と、講義が行われた日付が記されていました。そして、会長である戸田先生のお名前と共に、大きな印鑑が押されていました。ぞ。皆に不動の信心の楔(くさび)を打ってくるんだ!」「戸田の名代(みょうだい)として、毅然として行ってきなさい!」「名代」です。先生から直々に遣(つか)わされた、会長の代理として講義せよとのご指導です。この自覚と責任を持って真剣勝負で臨んだのです。一回一回が最高の訓練でした。師匠の若き「名代」として広宣流布の戦野を力走する。これほど使命ある闘争はありません。これほど光輝ある青春はありません。

【阿部】 「川越講義」について学ぶなか

【名誉会長】 よく、とってあったね(笑い)。質素な証書でした。しかし、受講された方のご多幸を祈り、未来の栄光の記別(きべつ)にとの願いを込めて、お渡ししたものです。
【熊沢】 修了証書を家宝とされている、あるご家庭では、お孫さんに当たる池田華陽会の友が、中国の名門の大学院で学究の道を歩んでいます。彼女の学ぶ大学でも、「池田大作研究所」で先生の思想の研究が活発に行われていますと、近況を伝えてくれました。

【名誉会長】 一緒に戦ってきた友が功徳に包まれ、子孫末代まで勝ち栄えていかれることが、私の何よりの喜びです。仏法の世界で、同志と共に行動した歴史は、時とともに、無量無辺の福運となって輝きを増していくのです。

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◆ 師弟直結の闘争
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【熊沢】 先生が川越で講義してくださった「生死一大事血脈抄」に、この「異体同心」の真髄が明かされています。拝読させていただきます。「総じて日蓮が弟子檀那(だんな)等・自他彼此(じたひし)の心なく水魚の思(おもい)を成して異体同心にして南無妙法蓮華経と唱え奉る処を生死一大事の血脈とは云うなり、然(しか)も今日蓮が弘通する処の所詮(しょせん)是なり、若し然らば広宣流布の大願も叶うべき者か」(同1337ページ)との一節です。

【名誉会長】 戸田先生から幾度も講義していただいた忘れ得ぬ御聖訓です。大聖人門下にとって最重要の御金言です。「異体同心」の心で題目を唱え、広宣流布に前進する中にこそ、「生死一大事の血脈」が流れ通うと断言なされています。「若し然らば広宣流布の大願も叶うべき者か」と仰せです。「異体同心の前進」こそ、広宣流布の生命線なのです。「異体同心」であれば、必ず広宣流布はできる。

【棚野】 かつて「団結は力なり」と、先生が墨痕(ぼっこん)鮮やかに認(したた)められた書を拝見したことがあります。究極の「団結の力」が、広宣流布への「異体同心」ですね。

【名誉会長】 大聖人が仰せになられた「異体同心の団結」が、どれほど強く尊いか。あの熱原(あつはら)の法難を勝ち越えたのも、「異体同心の団結」があったからです。若き日興上人は、折伏の大闘争の指揮を駿河地方(するがちほう=現在の静岡県中央部)で執(と)られました。大聖人の御心を、農村の門下にも、そのまま伝え、師弟直結の信心を打ち込んでいかれたと考えられます。さらに、当時の身分や立場などの垣根(かきね)を越えて、互いに平等で尊敬し合う同志の連帯を強めていかれました。ゆえに、いかなる迫害にも屈しない金剛不壊(こんごうふえ)の和合僧が築き上げられたのです。「熱原の三烈士」の殉教は、何ものにも負けない、真の民衆仏法の確立を告げました。「異体同心の団結」は、師匠の御心を根幹として、不二の弟子が最前線に分け入って創り上げていくものである。このことを、日興上人は示してくださ
ったのです。

【熊沢】 広宣流布を成し遂げる、この「異体同心の血脈」は、わが創価学会にのみ、脈々と受け継がれています。
【名誉会長】 そうです。牧口先生と戸田先生が、広布を進めるために創立された「異体同心の組織」が学会です。「異体同心なればかちぬ」(同1463ページ)と大聖人は仰せです。また、勝つことが「異体同心の実証」なのです。あの蒲田(かまた)支部の2月闘争も、男子部第1部隊の大拡大も、文京支部の大前進も、大阪の戦いも、山口の開拓闘争も、札幌でも、葛飾(かつしか)でも、私はいつも「異体同心の前進」を最第一に心がけ、勝利してきました。
【棚野】 「異体同心」という言葉は、今や“国際語”となっています。4月の青年部幹部会で、アフリカのコートジボワールから参加したメンバーが、【名誉会長】 皆、本当に頑張ってくれている。尊い尊い仏の方々です。内戦を乗り越え、想像を絶する過酷な環境のなかで、平和と生命尊厳の連帯を広げてこられた。いずこの国にあっても、わが友は、皆、仲良く団結し、良き市民、良き国民として、社会に貢献し、信頼を勝ち得ておられる「イタイドウシン(異体同心)!」「ビクトワール(勝利)!」とかけ声をかけていた姿が、実に印象的でした。コートジボワールは青年部を先頭に、「異体同心」と「勝利」を合言葉として、この20年で200人から2万人へと、実に100倍もの目覚ましい発展を遂げました。



【熊沢】 「池田華陽会」も、世界中で異体同心のスクラムを広げています。欧州のSGI(創価学会インタナショナル)の女子部メンバーと懇談した折、「異体同心」が話題になりました。個人主義を重んじる人は、「団結」や「組織」というと、ともすると個性や個々人の人間性が軽んじられるような、マイナスイメージを持つことが多い。でも「異体同心」という考え方には、どこまでも「一人」を大切にする仏法の思想が込められている。そこには、欧州でも世界でも共感を広げる普遍性があるというのです。
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◆ 桜梅桃李の輝きを
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【名誉会長】 重要な視点です。あくまでも「異体同心」であって「同体同心」ではない。皆、それぞれ大切な個性がある。職業も違う。年齢や性別、性格も、千差万別です。今、私が対談を進めている中国文化界のリーダー・高占祥(こうせんしょう)先生は、「敬其所異(けいごしょい=其の異(こと)なりを敬う)」こそ、進歩の鍵であると語っておられた。異なるからこそ、学び合い、生かし合い、より大きな力を出していけるのです。「御義口伝」には「桜梅桃李(おうばとうり)の己己の当体を改めずして」(御書784ページ)とあります。それぞれの持ち味を、最大限に発揮していけるのが大聖人の仏法です。「異体同心の団結」は、一人一人がわが使命の舞台で最高に輝きながら、広宣流布という無上の目的へ共に前進するなかで生まれる。それは人から言われてではない。「自発能動」の団結であり、「自体顕照(じたいけんしょう)」の連帯です。どこまでいっても大事なのは、一人一人の幸福です。人生の勝利です。「一人の宿命転換」「一人の成長」が一切の根本なのです。
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◆ 共に仏道を成ぜん」
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【阿部】 どこまでも「一人」を大切にし、苦楽を共にするのが創価の世界です
ね。

【名誉会長】 御書には「松栄(さかえ)れば柏(かしわ)悦ぶ芝かるれば蘭なく情無き草木(そうもく)すら友の喜び友の歎(なげ)き一つなり」(934ページ)と仰せです。友の喜びを、わが喜びとする。友の活躍を心から讃えていく。苦難の時は一緒に悩み、励ましを送る。共に笑い、共に泣いて、人生の幾山河を越えていく。この人間性輝く、温かな結合に、真の「異体同心」が生まれるのです。戸田先生は、わかりやすく言われていた。「君も苦労しているか、君も貧乏しているか、君も苦しいか、お互いに信心を奮い起こそうではないか ── これを異体同心というのです」と。大聖人が若き南条時光に教えられた法華経の一節に、「我等と衆生と皆共に仏道を成ぜん」(同1561ページ)とあります。「皆共に」です。皆で仏道修行をし、共に向上していこう、勝利していこうとの誓願があれば、おのずと「異体同心」になるのです。

【棚野】 私たちは、池田先生から「一人への励まし」に徹する心を教わりました。

【名誉会長】 それが仏法だからです。来る日も来る日も、私は「一人」を励ましてきました。何十万人、何百万人と激励し続けてきました。私の願いは、全同志が幸福になることです。勝利の人生を胸を張って前進することです。そのために、私は生きてきたし、戦っているといってよい。創価の「異体同心の和合僧」は、この不惜身命の闘争の結実なのです。

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◆ 永遠の「将軍学」
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【熊沢】 「一人を大切にする」といえば、伊藤関東女子部長のお父さんは、長
年、未入会でした。じつは以前、伊藤さんは、この点について、先生に直接、聞
いていただく機会がありました。
その時に先生から、「お父さんに心配かけちゃいけないよ」「お父さんに『大
好き』って言うんだよ」(笑い)と激励していただいたことが、自分を見つめ、
変えていく大きな原点になったそうです。
以来、お母さん、妹さんとも心を合わせて祈り、お父さんをもっと大切にしよ
うと心がけてきました。やがて、お父さんも「信心するよ」と決意をされました。
入会後、お父さんは、一人のために献身する多くの同志の姿に触れ、深く感嘆さ
れていたとうかがいました。

【名誉会長】 本当に良かったね。「心こそ大切」です。相手を思う真心、真剣な祈りは必り」(563ページ)と仰せです。「慈愛の声」「正義の声」「確信の声」が、相手の心を動かしていくのです。ともあれ、有名な「異体同心事」で大聖人は仰せです。「異体同心なれば万事を成し同体異心なれば諸事(しょじ)叶う事なし」(御書1463ページ)「日蓮が一類(いちるい)は異体同心なれば人人(ひとびと)すくなく候へども大事を成じて・一定(いちじょう)法華経ひろまりなんと覚へ候」(同ページ)どんなに人数が多くとも、どんなに権勢を誇ろうとも、心がバラバラでは勝利を得ることはできない。反対に、たとえ人数が少なくても、各人が広宣流布へ「心」を合わせる「異体同心の団結」があれば、万事を成すことができると結論されている。

【阿部】 大聖人は続けて、「悪は多けれども一善(いちぜん)にかつ事なし」(同ページ)と仰せです。「一善」とは「根本の正義」ですね。

【名誉会長】 そうだ。妙法流布に生きゆく仏の軍勢が最後に勝つことは、御聖訓に照らして絶対に間違いない。そのために大切なのは「前進」です。「勢い」です。70万騎という殷(いん)の大軍に、わずか八百諸侯の周(しゅう)が打ち勝った中国の故事もそうでした。殷の兵士たちの心は定まっていなかった。その迷う心が、周の精兵の勢いに揺り動かされて、形勢が一気に逆転したのです。「攻め抜く」「動き抜く」なかで、味方が広がり、真の団結が生まれる。「断じて勝つ」と決めて死力を尽くす時、本当の「異体同心」が鍛え上げられる。受け身では、「同心」とはならない。だからこそ、まず決意した「一人」が立ち上がることが、「異体同心」の起点となる。リーダーが真剣に祈り、率先して行動する。この敢闘精神の勢いが波動を広げる。戦いの中で、皆が心を合致させて祈り、大いに励まし合いながら、「異体同心の前進」を加速していくならば、どんな壁も破ることができる。この「異体同心の将軍学」を、今こそ、わが青年部は会得(えとく)してほしいのです。