2010.06.09 SP 寧波大学「名誉教授」称号授与式
【名誉会長の謝辞】

 一、壮大な「海のシルクロード」の起点である寧波(ねいは)の天地は、「書は古今を蔵し、港は天下に通ずる」と謳われております。悠久の歴史を誇り、世界に開かれた港・寧波は、人間を照らす「文化の港」であります。 民衆を結ぶ「平和の港」であります。 未来を開く「繁栄の港」であります。 青年を高める「教育の港」であります。 その寧波より、人間教育の鑑と光る馮志敏(ふうしびん)副学長ならびに諸先生方が、ご来学くださいました。 私たちは、この上ない喜びをもって、熱烈に歓迎申し上げます。本当にようこそ、お越しくださいました さらに本日は、中国からお迎えしている交換教員の先生方、また留学生の英才の代表も出席してくださっております。誠にありがとうございます。
――――――
学術の大城
――――――
 一、グローバルな大交流の時代にあって、貴・寧波は貨物取扱量で世界第一の港湾都市として、隆々たる大発展を続けておられます。その大前進を牽引する知性を澎湃(ほうはい)と送り出されている「学術の大城(だいじょう)」こそ貴大学なのであります。 ゆえに貴大学から賜った英知の宝冠ほど、うれしいものはありません。尊貴なものはありません。 妻とともに、心より厚く厚く感謝申し上げます。 私も妻も、貴大学の精神である、「兼容並包」(けんようへいほう=多くの事柄を包括・包容する)、「自強不息」(じきょうふそ=自分を向上させる事を怠らない)、「務実創新」(むじつそうしん=実務に励んで新たに創造する)、「与時偕行」(よじかいこう=時代と共に歩む)を胸に深く刻んで、本日の栄誉を拝受させていただきます。 一、寧波は、古来、遣隋使や遣唐使をはじめ、多くの日本人を迎え入れてくださった「文化大恩の都」でもあります。 「法華経」の生命尊厳の哲理を、貴国の天台大師の正統として受け継いだ日本の伝教大師も、寧波(当時は明州)に足跡を留めております。天台山へ向かったのも、寧波からであります。 この「大恩の港」に対し、日本の軍国主義がもたらした背恩の暴虐は、絶対に忘れてはならない歴史であります。 創価教育の創始者である牧口常三郎先生は、日本の野蛮な軍部政府と戦い、獄死しました。私の妻は、幼き日に、この牧口先生との出会いを刻んだ一人であります。 牧口先生は青年時代、貴国からの留学生への地理教育に情熱を燃やすとともに、先駆的な女性教育にも取り組んでおりました。 その意味から、本日の栄誉を、私と妻は、この先師に万感の思いを込めて捧げさせていただきたいと思っております。 先生方、誠に誠に、ありがとうございました。
―――――――――
副総理と会見
―――――――――
 一、貴大学の校章に輝く「寧波大学」の文字は、あの改革開放の指導者・ 小平(とうしょうへい)副総理が揮毫されたとうかがっております。 副総理とは、私も、忘れ得ぬ出会いを重ねさせていただきました。 最初の会談は1974年12月。私は、当時のソ連のコスイギン首相から引き出した、貴国との関係改善への意向を携(たずさ)えて、 副総理との会見に臨みました。 翌75年4月の再会では、貴国と日本の「平和友好条約』の早期締結へ、 副総理から、日本の三木首相への伝言も託されたのであります。 胸襟を開いた2度の対話では、両国の青年交流・女性交流の具体的な推進も語り合いました。とともに、国家も、団体も、永続的な発展のためには、後継の信念の人材の育成が不可欠であることにも、話題は及んだのであります。 教育に大いなる力を注がれた 副総理は、「人材が絶えず涌き出でてこそ、我々の事業は初めて希望が持てる」と言われておりました。 まさしく、教育こそ「社会の黄金の柱」であり「人類の平和の大船」であります。 そして、 副総理の深い期待と尽力のもとで建設された大学こそ、貴・寧波大学であることに、私は深い感慨を禁じ得ないのであります。
―――――――――
「発奮向上せよ」
―――――――――
 一、 副総理と心を通わせながら、故郷・寧波のために、貴大学の創立に尽くされたのが「世界の海運王」と謳われた大実業家・包玉剛(ほうぎょくこう)先生であられました。 包先生は強調されております。 「人材の育成には、一刻の猶予も許されない。教育こそ真っ先に手掛けるべき基本作業である」 「寧波大学創立にかかわる機会を得て、とてもうれしい。それは文化・教育、そして故郷の発展という二つを共にやり遂げることになるからだ」と。 郷土を思う包先生の心が、どれほど強かったか。大学を創立した私の胸には、その熱誠が伝わってくるのであります。 郷土のためには、他の誰かではない。自分自身が走り回るのだと、包先生は決意されておりました。 名声などいらない。ただ愛する故郷のため、未来を担う青年のために、尽くせればよい ── 何と崇高な無私の行動でありましょうか。 また包先生と同じく、誠実、勤勉、創造に富み、愛郷心(あいきょうしん)の絆で結ばれた寧波出身の同胞のネットワークが貴大学を力強く支えた功績も、決して忘れることはできません。 包先生は、貴大学の学生たちに訴えておられました。 「骨身を惜しまず、勉学に励み、発奮向上してもらいたい。祖国を愛し、郷土を愛し、能力を身につけ、将来、より立派に国家の建設のために、力を発揮してもらいたい。これが私の願いである」 この悲願に、貴大学の英才たちは見事に応えられました。包先生が示された、地域に貢献する精神も脈々と受け継がれております。 今、貴・寧波は、 副総理、また包先生の希望にかなった「中国商業都市」として、さらに「環境優良都市」として、そして「中国で最も幸福感を有する都市」として仰がれております。 世界最長の海上橋(かいじょうきょう)である「杭州湾(こうしゅうわん)海上大橋」も完成し、いやまして、21世紀に輝く経済の要衝(ようしょう)として大興隆を遂げておられるのであります。
―――――――――
「誠信」で光れ
―――――――――
 一、貴大学の女子学院は、寧波市の婦女連合会と協力して、寧波のため、浙江省(せっこうしょう)のため、模範の女性教育を展開されております。 そもそも寧波は、貴国初の近代的女子学校が創設された女性教育の最先端の天地でもありました。 また貴・漸江省に誕生した革命詩人・秋瑾(しゅうきん)女史も、学問の錬磨を通し、女性こそが文明の先導として光り輝く新時代を見つめて、命を賭して戦われたのであります。 そして今、中国を代表する名門の貴・女子学院は、出産や育児の支援など、生命を育み守る、最も身近で最も重要な事業にも、生き生きと取り組まれております。生命を大切にする社会こそ、平和と調和の社会でありましょう。それを創る力は女性です。 “未来の理想社会の建設者は女性なり”と、私たちの先師・牧口先生も、80年前に宣言しておりました。 一、尊敬申し上げる聶秋華(じょうしゅうか)学長が喝破された通り、大学の価値は、卒業生が社会で何を成し遂げているかで決まります。 貴大学からは、「頂天立地」(ちょうてんりっち=毅然と大地に立つように、何ものも恐れない)の屹立(きつりつ)した勇気ある人材が社会へ打って出ておられます。 わが創価の誉れの同窓生も、厳しい経済不況が続く中、それぞれの職場や地域で、勇敢に社会貢献の使命と勝利の道を切り開いております。 わが創価同窓生に、世界で活躍される貴・寧波グループの方々の信条である誠信(せいしん=誠実と信用を重んじる心)」を伝えたい。 さらにまた聶(じょう)学長が学生を励まされた指針 ── 「主体的に学び続ける態度は一生の宝である」「チームワークと協力を通して、はじめて新たな創造が成し遂げられる」を贈りたいのであります。
――――――――
烈火から鋼が
――――――――
 一、貴大学の校歌は、じつに素晴らしい。「時代の呼びかけに応え 知識の武装を強化せよ 我らは風雨に磨かれ玉となり 烈火に鍛えられて鋼(はがね)となる」 本日、私も妻も、貴大学の名誉ある一員とさせていただきました。 馮志敏(ふうしびん)副学長はじめ先生方とご一緒に、この歌を高らかに胸に響かせながら、両国の青年の栄光の未来のために、「創造と開拓の凱歌」の航路を、さらに勇んで邁進していくことをお約束申し上げ、御礼のごあいさつといたします。 巍々堂々(ぎぎどうどう)たる貴大学の限りなきご隆盛を、私と妻は、心よりお祈り申し上げます。謝謝!