2010.05.29 SP 北京城市学院「名誉教授」称号授与式

【名誉会長の謝辞】
(代読)

 一、今、私の心に蘇る、人民の大指導者・周恩来総理の信念の叫びがあります。 「われわれは、建設過程にあって困難は免れがたいことであるのをよく知っている。しかしわれわれは同様に如何なる困難もすべて克服できるものであることを知っている」(森下修一編訳『周恩来選集㊦』中国経済研究所)
 まさしく、「建設は死闘」であります。 そして、この周総理の大確信の如く、いかなる困難も断固として克服しながら、「大中国の私学の雄」と仰がれゆく名門大学を建設なされた大教育者こそ、本日、お迎え申し上げた傅正泰(ふせいたい)先生(元学長)であられるのであります。
 貴・北京城市(ペキンじょうし)学院から賜りました、最高に栄えある「名誉教授」の称号を、私は尽きせぬ感激と感謝をもって、謹んで拝受させていただきます。まことに、まことに、ありがとうござかます。
 さらに、光栄なことに、妻にも、貴学院の「栄誉賞」を授与いただきました。 妻は、まもなく創価の「婦人部の日」(6月10日)を迎えるにあたり、貴国を敬愛してやまぬ世界192ヵ国・地域の同志とともに、この栄誉を分かち合わせていただきたいと申しております。
 傅(ふ)先生はじめ貴学院の皆様のあまりにも深きご高配に、厚く厚く御礼を申し上げます。
 一、大学の創立者には、創立者のみぞ知る覚悟があり、辛労があり、責任があります。そして、誉れがあり、喜びがあります。
 なかんずく私には、尊敬してやまぬ傅先生と深く共有している信条があります。 それは、貴国の不滅の古典『大学』の冒頭であります。
 すなわち「大学の道は、明徳を明らかにするに在り、民を親しましむるに在り、至善に止まるに在り」(金谷治訳注『大学・中庸』岩波文庫)との一節であります。
 4年前の12月、傅先生は厳寒のなか、創価学園を訪問してくださいました。 その折、傅先生は、わが学園生の質問に答えながら、この古典『大学』の一文を通し、「人をつくり」「正しき道徳を教えていく」ことこそ、大学の役割であると語られたのであります。 さらに先生は、英語で「ユニバーシティー」と呼ばれる「大学」は、「ユニバース(宇宙)」を研究し、全体性の知識を獲得していく。そして、その英知を基盤として、「人間として成長していくこと」を学ぶ場所であると指摘されました。 まことに重要な大学の本義、教育の要諦を、創価学園生に示してくださったのであります。
 私は感服いたしました。 とともに傅先生は、真の人間教育を通してこそ、大学は「まず天下が憂えることを憂い、しかる後に、天下が喜ぶことを喜ぶ」社会貢献の人材を育成できると鋭く論じておられます。その通りに先生が命を賭して築き上げられた人材の大城こそ、貴学院なのであります。

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◆ 堅忍不抜の志で
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 一、貴学院は、「改革開放」の新時代に、貴国で初めて認定された、先駆の私立大学として、向学の志に燃える多くの青年たちに、広々と門戸を開いてこられました。
 そして創立者の傑出したリーダーシップのもと、創造的で、清新な探究の息吹に満ちた「全体人間教育」を実践されてきたのであります。
 その時代を先取りした取り組みは、教育改革への革新的な挑戦として、大いなる注目を集め、高く高く評価されております。
 一昨年の北京オリンピックの際には、貴学院の凛々しき学生たちが、あの壮大な開会式で見事な演技を披露されました。
 さらに、海外選手団の受け入れや友好親善の促進など、オリンピックの大成功に貴学院が力強く貢献を果たされたことも、まことに有名であります。
 ここに至る大学建設の道のりは、どれほど試練の連続であられたことでありましょうか。
 「古(いにしえ)の大事を立つる者は、惟(た)だ超世の才(ちょうせいのさい=抜きん出た才能)を有するのみにあらずして、亦必ず堅忍不抜(けんにんふばつ)の志有り」とは、文人(ぶんじん)指導者・蘇軾(そしょく)の言であります。
 まさに「堅忍不抜の志」をもって、傅先生は幾多の苦難を乗り越えてこられました。
 貴学院の誇り高き4つの校訓 ── 「改革探索」「勤奮進取」「艱苦創業」「開拓前進」は、傅先生ご自身が体現されてきた、新しき時代創造への崇高なる精神であり、貴学院の尊き歴史そのものを象徴しております。
 一、今や貴学院は、情報工学の研究や逸材の養成などにおいても顕彰が絶えない、新時代の最先端の大学と光り輝いておられます。 「学生のためのキャンパス」と謳われる貴学院は、この激動の経済情勢のなかにあって、就職率もほぼ100%を勝ち取られていると伺っております。
 「大学は、学生の人生に責任をとらなければならない」 ── この厳父の心をもって、一人一人の希望の未来を開き、貴国の栄光を開いてこられた創立者のご尽力に、私たちは最大の敬意を表したいのであります。
 先生は見事に勝たれました。貴学院は威風も堂々と勝たれたのであります。

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◆ 正義の勇者たれ
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 一、ともあれ、教育の勝利こそ、人間の尊厳の勝利であり、人類の永遠の勝利であります。
 現在、私は、中国教育学会の顧明遠(こめいえん)会長と対談を重ねております。〈「平和の架け橋 ── 人間教育を語る」と題し、「東洋学術研究」誌上で連載中〉
 そのなかで、顧会長も、先ほどの『大学』の一節を現代的に展開されつつ、
「知識を学ぶのは道徳を完全なものにするためである」と明快に論じておられました。
 そして、こうした貴国の伝統精神に示されている、一個の人間の修身 ── いわば「自己改革」から、「社会の変革」、そして「世界平和の創造」へと至る道こそ人類の正道であると語っておられました。
 私もまた、貴学院の先生方、並びに学生の皆さん方とご一緒に、さらに、この「人間革命」即「世界平和」の大道を勇猛精進していく決心であります。
 “教育者は正義の勇者たれ”。そして“いかなる大波瀾をも乗り切る指導力を鍛え上げよ”。これが、平和の信念に殉じた私たち創価教育の創始者・牧口常三郎先生の師子吼だったからであります。
 これは、傅先生の「常に畏(おそ)れなき大精神に拠って立ち、勇敢に乗り越え、一つまた一つと成功を勝ち取る改革者たれ」との大哲学とも深く一致しております。

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◆ 自らの立場で最善を尽くせ
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 一、傅先生が教壇に立たれた母校・清華(せいか)大学の誇る文豪・朱自清(しゅじせい)先生は語られました。
 「私は、自らを信じ、自らを頼りに、いつでも、どこにあっても、自身の置かれた立場で最善を尽くし、有意義に生きるよう、一時一刻、一分一秒を、充実したものにしたい」
 そうした難攻不落の城の如き信念のリーダーを、私たちは、さらに一人また一人、育て上げていきたいと思うのであります。
 傅先生の故郷であられる浙江省ゆかりの大哲人・天台大師は、「城の主剛(たけ)ければ守る者も強し」と言われました。
 大事な大事な学城(がくじょう)の城主たる傅先生の益々のご健勝を、私は心からお祈り申し上げます。
 一、結びに、今夜は満月であります。貴国との友誼の月が、いやまして冴えわたるように、私は行動してまいる所存であります。
 そして、貴学院の栄光が、21世紀の天空を照らす満月の如く、輝きゆかれる
ことを心より念願し、私の御礼のごあいさつとさせていただきます。
 謝謝!