2010.04.08 SP 「ラウレアナ・ロサレス教育人道賞」授与式 (於 4・11「ヤングミセスの日」記念大会)

【SGI会長の謝辞】
 一、仏典には、「母の恩の深いことは、大海も、かえって浅いほどである」と説かれております。 誠に、この世に母ほど尊いものはありません。 私も、日本中、そして世界中の素晴らしいお母さま方と、忘れ得ぬ出会いを重ねてまいりました。一回一回が黄金の歴史と光っております。 その中でも、私が最大の尊敬と感謝を込めて、「"世界第一"のお母さん!」と申し上げた母君がおられます。その方こそ、貴キャピトル大学の偉大な創立者、ラウレアナ・ロサレス先生なのであります。 6年前、お迎えした折の語らいが、今も鮮やかに蘇ってまいります。まさに、貴国フィリピンの世界一美しい太陽のように、光り輝く笑顔のお母さまであられました。 このロサレス先生のお名前を冠した栄誉ほど、尊く、ありがたく、胸に深く染み入る励ましはございません。 この「"世界第一"のお母さん」から賜りました、あまりにも意義深き栄冠を、私と妻は、きょう、ここに集い合ったヤング・ミセスの代表をはじめ、世界192ヵ国・地域の婦人部の皆さま方とともに、謹んで拝受させていただきます。


■ 戦争という蛮行を繰り返すな! 

 一、ロサレス先生と私の世代は、10代の日々に、第2次世界大戦の残酷と悲惨を痛切に体験いたしました。 なかんずく、ロサレス先生は、1942年、あの残虐きわまる日本軍による「バターン死の行進」から生存された一人であられました。 炎天下のもと、何の罪もない市民や捕虜が、100キロもの道のりを歩かされ、2万人もの尊き命が奪われたといわれる悲劇であります。 4月9日は、「バターン死の行進」で犠牲となられた人々を悼む「勇者の日」であります。 私も妻も、仏法者として、全犠牲者の追善回向を懇ろに行わせていただいております。 この「死の行進」を、母上とご一緒に生き抜かれたロサレス先生は、"人類は二度と、このような蛮行を繰り返してはならない。そのためには教育しかない"と心に定められました。 先生は戦後、苦学に苦学を重ね、さらにまた、ご主人とともに、理想の実現のために、努力また努力を貫いていかれました。 それは、20代、30代と、まさにヤング・ミセスの年代に刻まれた崇高な奮闘の歴史であります。 一、人類の歴史を振り返れば、戦争のゆえに、どれほど多くの母たちの悲しみの涙が流されてきたことか、計り知れません。 最愛の長男を戦争で失った私の母も、その一人でありました。 ひたすらに平和を願ってやまぬ、無数の健気な母たちの祈りを、わが心として立ち上がられたのが、ロサレス先生であられます。 先生は、貴キャピトル大学をはじめ、多くの教育機関を設立されました。その尊き生涯を、教育という究極の聖業のために捧げてこられたのであります。 ロサレス先生は語っておられました。 「私には、平和という『夢』があります。 『死の行進』の生き証人である私は、たとえ小さな力であっても、平和の達成へ、人生を捧げることを誓いました」 「不可能に見える壁もあります。しかし、私は決して負けません」 「『平和の実現には教育しかない』 ── これが私の信念だからです」 なんと気高き誓いでありましょうか。そして、なんと荘厳な人生でありましょうか。 戦争は「生命」を奪い、「人間」を不幸に陥れ、「社会」を破壊する極悪の魔性であります。 それに対し、教育こそ「生命」を輝かせ、「人間」を幸福へ高めて、よりよき「社会」を建設しゆく究極の正義であります。 それゆえに、ロサレス先生は、人間の"善性"を薫発し、その無限の可能性を引き出しゆく「全体人間教育」を、貴大学の理念に掲げ、実践されたのであります。


■ 一人を大切に! 一人を励ませ! 

 一、「平和」といっても、遠くにあるのではない。 どんなに地道に見えても、一人を大切に、一人を励まし、一人を強く賢くしていくことであります。 そこにのみ、平和の世界が確実につくられていくからであります。 今、ヤング・ミセスの皆さんは、家事や仕事や子育てなど、さぞかし目まぐるしい現実生活でありましょう。 しかし、その中で、一歩も引かず、友のため、社会のため、心を合わせて真剣に、大目的の達成へ、力の限りを尽くして行動しておられる。これこそ、最も価値ある平和の創造なのであります。 貴国フィリピンの大英雄ホセ・リサール博士は、若い女性たちへの教育にも力を注がれました。 それは、なぜでしょうか。 「子どもたちを育む女性が、卑屈で無知である限り、その国民は、名誉も繁栄も、望むべくもない」からであります。 人類の未来は、ひとえに、聡明にして誇り高き女性たちの活躍にかかっているのであります。 ここ創価世界女性会館にもおいでいただいたロサレス先生は、語ってくださいました。 「世界は今、さまざまな困難に直面しています。人々が分かち合い、助け合う世界を築かねばなりません。そのためには智慧が必要です。私は、これこそが、 『創価』の使命であると思っております」と。


■ 何かを植えれば必ず収穫できる 

 一、フィリピンの英知の格言に「何かを植えれば、必ず、収穫できる」とあります。 ロサレス先生は、未来に生きゆく青年の心に限りない希望と勇気と勝利の種を蒔いていかれました。 出会う学生たちにも、慈母(じぼ)のごとく、「元気ですか?」「今、どうしていますか?」等々と、声も惜しまず語りかけていかれました。そこには、「たった一言でも、激励になりますから」という、一期一会(いちごいちえ)の深き真情が結晶していたのであります。 その心を継承されるフアレス学長も、「元気に活躍する教え子と会うときが、一番うれしい」と語られております。 フアレス学長ご夫妻が、創価大学からの留学生を、わが子のように、温かく迎えてくださっていることも、感謝に堪えません。 今、ロサレス先生の薫陶を受けた卒業生たちは、貴国はもとより、世界中で活躍されております。現在、海外で活躍される卒業生の一人も、先生を心から偲ばれておりました。  ── 美しい心が輝くロサレス先生とお会いできたことを、決して忘れません。新しい英雄をつくるために、先生が成し遂げてくださったことに、心からの感謝を捧げます ── と。 先生が命を賭して蒔き続けてこられた種は、これからも、どれほど美しい花を咲かせ、どれほど豊かな実を結ぶことでありましょうか。 ロサレス先生は勝ちました。尊き教育の母は、永遠の勝利を飾られました。そして、その高邁な志は、学長ご一家に厳然と受け継がれております。 私たちもまた、先生の歩まれた、「人」を育て、「人」を結びゆく大道に続いていこうではありませんか!

■ 「挫折を味わうから強い人間に」

 一、「女性の世紀」の鑑(かがみ)たるロサレス先生が、若き世代を勇気づけていかれた言葉を、私は世界の友にお伝えしたい。 「失敗を経験し、、挫折を味わうからこそ、強い人間になれる」 「決して自分の夢をあきらめないでください」 「私の辞書に『敗北』という文字はない」 「今日、為しうることを、明日まで延ばすな!」と。 明年、貴キャピトル大学も、わが創価大学も、栄光の創立40周年を迎えます。 尊敬する学長ご一家と共々に手を携え、ロサレス先生が掲げられた恒久平和の夢に向かって、さらに力強く、教育と人道の勝利の道を前進しゆくことを固くお誓い申し上げ、私の謝辞とさせていただきます。 マラミン・サラマッポ!(フィリピン語で「本当にありがとうございました!」)