随筆 人間世紀の光 206 

■人類の平和の大道

怯まずに
今日も生きぬく
その人に
勝利の栄光
開く法理は

この十月の二日に生誕百四十周年を迎えた、インド独立の父マハトマ・ガンジーは淡々と語った。「二十四時間、四六時中わたしは民衆とともにいる。わたしがつねづね、いちばん心

にかけているのは彼らのことである」真の指導者は常に真剣勝負だ。慢心も油断もない。いかにして、民衆を励まし護り抜くか。いかにして、民衆に活力を贈り、勝利へ前進するか。こ

の名誉ある責任に徹していくのだ。法華経寿量品の自我偶に「毎自作是念(毎に自ら是の念を作す)」と記される。心に、いつも何を抱いているか。人間の本当の偉さは、その一念で決

まる。御聖訓には「いまに一日片時も・こころやすき事はなし、此の法華経の題目を弘めんと思うばかりなり」(御書一五五八ページ)と仰せである。この大精神に直結して、創価の三

代は、それこそ四六時中、大法弘通への「毎自作是念」を貫いてきた。だからこそ、創立八十年にして、これほどの世界的な広がりとなったのだ。わが創価の友は、全世界で今この時

も戦っている。それを思えば、じっとしてなどいられない。祈り、心を砕き、手を打つことだ。この師弟の透徹した誓願の一念と行動を、わが青年部が受け継いでくれれば、創価の未来

は盤石である。



全世界
幸福家族
広がりて
喜べ叫ばむ
慈折広布を

日本中、世界中を駆け巡る平和旅で、私は、わずかな時間を見つけては写真を撮ってきた。素人の作品だが、各地の同志からの要望もあって、高価な絵画の代わりに会館に飾られ

ている。これも、わが愛する友に少しでも喜んでいただけるならば、と始めた戦いだ。南フランスでは、名峰サント・ビクトワール山に向けてシャッターを切った。私たちSGI(創価学会イ

ンタナショナル)の欧州研修道場の眼前にそびえる「聖なる勝利山」である。この「勝利山」は、近代絵画の父・セザンヌ(一八三九~一九〇六年)が繰り返し描いたことでも知られる。 

新たな画法を追求したセザンヌは長年、「救いようのない落伍者」等と苛烈な非難中傷にさらされた。だが、彼は微動だにしなかった。まさに、自らが悠然と揺るがぬ「勝利山」の如く、

信念の道を貫いたのだ。「私は毎日進歩しつつある、私の本領はこれだけだ」 「目的に到達するためには勇気が必要なのです」一人黙々と、カンバスに向かうことが多かった晩年の

セザンヌが、心を和ませたひと時。それは、青年たちと対話することだったという。なぜか。「若い目にはいつわりがない」からだ――と。青年の目は澄んでいる。時流や権威に曇らさ

れず、真実を見抜く光がある。正義を叫ぶ勇気がある。若き弟子が描いた「セザンヌ礼賛」という一枚の絵がある。これは、多くの青年がセザンヌの名画を囲んだ光景を描いた作品だ

。弟子は師に書き綴った。「(ここには)あなたへの称賛があります。あなたに啓発された一群の若い者たちの情熱があります」「私たちは絵画について知っていることのすべてをあなた

から学んだのですから、当然、あなたの弟子と呼ばせていただけるでしょう」セザンヌは、愛する青年に語りかけた。「太陽が輝いて、希望が心で笑う」我ら創価の師弟も、永遠に「戦

う青年」として、太陽の如き大生命を涌現して生き抜くのだ。



壮大な
使命と知性と
輝かせ
世界の指導者
指揮とり舞いゆけ

雄々しき勝利山を仰ぐトレッツの欧州研修道場には、今夏も、求道の友が楽しく朗らかに集い合った。同所を含め、欧州各地で開かれた夏季研修会に参加した友は実に二十八カ国、

一万一千人以上となる。この淵源は一九七五年、八カ国から約四十人が集った第一回研修会である。以来三十数年、大きな人材山脈の伝統が出来上がった。「統合」の時代の先

頭に立つ欧州SGIの友の前進と拡大は、誠に目覚ましい。その原動力こそ、夏の研修会、とりわけ希望の太陽の如き教学の錬磨である。成功のポイントの一つは、充実した御書講義

は当然として、それ以上に質問会に力を注ぐことだと、スタッフの方が語っていた。一方通行ではない。対話による触発があってこそ、一人ひとりの納得と決意が生まれる力これが、

先師・牧口先生、恩師・戸田先生以来の創価の伝統だ。現実の「一人」と向き合い、その「一人」を大事にできるかどうか。ここにこそ「普遍性」を標榜する、思想・宗教の試金石があ

るといってよい。「一切衆生」といっても、焦点は「一人」である。仏法の人間主義に国境はない。いずこであれ、一人と心を通わせ、誠実に対話することから出発する。あらゆる次元

で、グローバル化(地球一体化)が進む現代だ。だからこそ、「文明間の対話」「宗教間の対話」、その根本である「人間間の対話」が、今ほど待望される時代はない。



広宣と
創価の世界の
平和の日

今年も、「十月二日」が巡り来た。我らの「世界平和の日」である。一九六〇年(昭和三十五年)のこの日、私は羽田の空港からハワイを目指して飛び立った。私に「世界へ征け!」と

遺言された恩師の逝去から、二年半(三十カ月)後の命日であった。ハワイは、太平洋の中央に光る共生の天地である。この金の島を、傲り狂った日本軍は攻撃したのだ。戦後の世

界にも、幾多の戦乱があり、冷戦があり、紛争があった。貧困があり、差別があった。母たちの慟哭があり、幼き生命の嘆きがあった。この苦悩に満ちた人類の宿命を転換しゆく戦い

を開始されたのが、わが恩師・戸田城聖先生である。「地球上から悲惨の二字をなくしたxい」と願われた先生。そして、民衆の生存権を脅かす核兵器の廃絶を叫ばれた先生――そ

の遺訓を実現するために、弟子は一人立った。 戦争を永遠に葬り、断じて平和の世紀を創るのだ!それには、生命の尊厳の大法を叫び抜き、世界広布を遂行していくしかない。私

の胸ポケットには恩師の写真があった。世界広布の長征を、師弟一体で開始したのだ。

島は広布の先進地!

あの国も
またあの国も
同志あり
平和の英雄
南無し讃えむ





釈尊も
大聖人も
誉めゆかむ
世界広布の
尊き君らを


若く新しい力を!

私は大胆に、若く新しい人材を登用した。そこから、新たな広宣流布の前進の息吹が生まれるからだ。「法自ら弘まらず人・法を弘むる故に人法ともに尊し」(八五六ページ)と御書に仰

せである。人で決まる。一番大事なのは「人事」だ。「地区」といっても、ネバダにいる同志は、夫妻を含めても四、五人であった。しかし、オライエさんは、私の心を心として、広布開拓

の情熱に燃え、学会活動を続けた。一人の友に会うにも、車で片道十二時間かかることもある広大な天地を、勇んで駆け巡った。再会は五年後。四十人の使命のスクラムに拡大した

感動を報告する、誇らかな笑顔は忘れられない。その後、香港などでも活動し、太平洋に輝くサイパンでは、ジョセフさんは初代の支部長として和楽の団結を広げてくれた。晩年、彼

が過ごしたネバダ州ラスベガスには、この夏、待望の新会館が誕生した。その喜びの拍手は、世界広布の開拓者であるご夫妻への喝采でもあった。御聖訓には、「心を一にして南無

妙法蓮華経と我も唱へ他をも勧んのみこそ今生人界の思出なるべき」(御書四六七ページ)と説かれる。妙法を唱え、広宣流布に生き抜いた人生は、人間として尊極無上にして永遠

不滅の栄光に包まれるのだ。通訳や翻訳の労をとってくださっている方々など、国際本部の健闘も尊い。私と妻は、世界広布の功労の友へ、深き感謝の祈りを日々絶やすことはない





世界まで
功徳は残らむ
薫るらむ
あなたの歴史は
万花と咲きつつ


夫婦同道の平和旅

「世界広布」即「世界平和」への第一陣となる旅から四年後(一九六四年)の十月二日、私は、七度目の海外訪問に出発した。この前日、私の妻も先発隊の一員として日本を発ってい

た。そして二日午後、香港経由でタイのバンコクに到着した私と合流したのである。これが妻の最初の世界旅となった。私の体調を案じた執行部の勧めで、妻が同行するようになった

のである。私たち夫婦しての平和旅も、十月二日が出発点だ。強行軍の旅行中、妻は、ある時は栄養士のように、またある時は看護師のように、私の食事や健康管理に気を配ってく

れた。かつて、戸田先生が地方指導に行かれる時、妻は毎回、人知れず駅や空港まで馳せ参じていた。東奔西走される先生のご健勝を祈り、お見送りをした。恩師は、そうした妻を、

ただ一人の“送迎部長“に任命され、「いずれ全世界に行けるようになるよ!」と労ってくださったことが、思い起こされる。その通り、北中南米にも、欧州にも、ロシアにも、中国や韓国

にも、東南アジアやインドにも、中東やアフリカにも、世界中に、友情の種、平和の種を、共に蒔いてきた。海外での会見や行事には、夫婦同伴の出席が多い。妻の微笑みの人間外

交には、大いに助けられた。ただ妻は、華やかな場よりも、時間が許す限り、けなげに戦っている現地の婦人部や女子部の方々との懇談を強く望んだ。一人でも多くの同志を励ました

いと、一心不乱であった。



タゴール、トルストイ、ゴーリキーをはじめ東西の文人と交友を結んだロマン・ロランは断言した。「われわれはすでにもう、地球の一つの面から他の面へわたって、精神の一家族をつ

くりだしているのです」私たちは、仏法の人間主義で結ばれた地球家族だ。久遠の使命に目覚めた世界広布のパイオニアだ。「かくてあたらしき力もてわれらが務をはたさん!」とゲ

ーテは歌った。新たな時代は、新たな人材と共に開くのだ。太陽の仏法は燦然たり。晴れ渡る大空のもと、妙法の正義の旗を掲げ、勇敢に朗らかに前進だ!明年は「世界平和の日」

五十周年、そして栄光燦たる創立八十周年である。さあ、希望の明日へ、世界百九十二カ国・地域の創価家族と肩組み、歓喜の歌を響かせよう!次なる勝利と幸福の大叙事詩を、

私と君たちとで、地球を舞台に、堂々と綴り始めようではないか!

万年の
修行はこの時
含まれむ
広宣流布の
山を登れや