ロンドン最終夜
あっという間に一週間が過ぎ、瞬く間に週末になった。
会社ではボーリング大会を開いてくれ、皆久々に和やかにボーリングを楽しみ、日本人のご友人達とはパブで一杯…とおもいきやスペイン料理まで延長戦となり…。
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。
最後のロンドンは、心の底から痛かった。会社で使っていた携帯を、返さなければならない。つまり、個人的なメールも、皆の電話番号も、全て削除しなければならない。
辛かった。金曜までぼんやりしていた意識が…ここで初めて、現実を感じたのだ。
もともとメールとかはあまり残しておくタイプじゃないが、彼の本心はほとんどメールで知らされる。メールの言葉がかなり大きい。
でもいちいちPCに残しておくとかは、未練が残るだけで。一気に消す。
それを横で彼が見ながら「もうキミのこの番号は消さなきゃいけないね」とぽそりというのが痛い。
金曜はお気に入りのタイ料理につれていってもらい、そのまま帰ってフラットの友人たちと酒盛り。
次の日はドライブをしながらバッキンガム宮殿に行き、お土産を買ったりする。「お母さんに、ここの紅茶頼まれてるんだ」
いつもはあまり写真を撮ろうとしないのに、「カメラ出して、撮ってあげる」とドンドン撮影をする。
最後にあまりにも撮りすぎて、メモリーがいっぱいになる。
帰ると、フラットメイトのアダムと、彼女のベッキーが小さな箱をもっていた!
ロンドンで赤丸急上昇の超有名チョコレート屋さんで高級チョコ3段重箱をもらった。すっごくかわいい、すっごくおいしい!!
これじゃーゴディバも影が薄くなるはずだわ。皆さん、ブランドで有名なのはゴディバだけど、イギリスの有名チョコ屋はひけを取らないわよ。すっごいディープな味わいです!
友達のジェニファーもやってきて、彼女もマロングラッセチョコと、板チョコをくれた。
ティムもどこからか、イースター用の金色兎チョコを取り出してきた。個人で買ったのと、会社で貰ったのと…
全部あわせると大きな紙袋2つくらいあるぞ。
「うわー!うそー!夢みたい!」
「キミはいつでもチョコチョコいってるから」
「そうそう。皆がお酒飲んでると『チョコないですか』とか言うし」
夜は誕生日パーティとさよならパーティをあわせて、中心地のドイツレストランと、有名バーにはしご。3時まで踊ったり遊んだり…まったりしたり。皆もう見知った友達ばかり。
幸せ。もちろんティムを介した友達なんだけど、もう彼を通さなくても直接話せる人ばかり。彼らはもう私個人の、とっても貴重な友達になっていた。
皆が私たち二人を変に応援してくれるし、私を励ましてくれる。うれしくて涙がどんどん出てくる。
ここ数週間、泣かない日はない。
最後は私とティムがワインとサーモンを買っている間に、アダムが最高のサンデーローストを作ってくれた。
日曜の夕方に最後のディナー。
「また絶対会うから。すぐ戻ってくるよね」
一人一人がそういってハグしてくれる。
飛行場への道、二人は取りとめのない話をした。沈黙が沢山流れた。
「色々一緒にしたよね」
「うん。一年でこんなに誰かといろんなことをしたのは初めて」
「俺も。生まれて初めて」
「…日本、来てね」
「絶対行くから。3ヶ月なんて、あっという間だ」
ケンブリッジ…ロンドン…色々あったけど。本当に勉強になったし本当に行ってよかった。
3ヶ月後、彼は本当に来る予定のようだ。
出会えてよかった人。彼がいなかったら、友達なんてできなかっただろうし、イギリスが嫌いに鳴っていたのは間違いない。
ありがとうを何千回も言った。
ゲイトをくぐった私は涙だらけで相当かっこ悪かった…。別れは苦手。
振り向くと、すっと立って微笑んで…涙をこらえているのが判ったが、じっと私を見て見送ってくれているティムは、すごくかっこよかった。