ジャニー喜多川・性加害問題を報じたBBC制作陣が語る、なぜ我々は報じたのか

 

今年3月に英公共放送BBCが報じた故ジャニー喜多川氏の性加害問題。

・・・・・ドキュメンタリーの中では、リポーターを務めたジャーナリストが藤島ジュリー景子社長に取材を申し込み、したたかに門前払いを食らわさられた。しかし、結果としてジャニーズの傲岸不遜な態度や隠蔽体質は批判をどんどん大きくしてしまった。

一連の騒動のキッカケを作ったジャーナリストで、BBCの番組制作を手掛けるモビーン・アザール氏に話を聞いた。

・・・・このドキュメンタリーの制作には時間がかかりました。日本の方にもここで語られていることを是非知ってほしい。ここにきて、ようやくいくつかの日本の大手メディアが本件を取り上げるようになったことは非常に嬉しい。

しかし、まだやるべきことは終わっていません。藤島ジュリー景子社長が声明を発表しました。私はあの謝罪の声明文を翻訳付きで読みました。動画も繰り返し何度も見ました。私は彼女が性的虐待の実態を「知らなかった」とは信じない。知らないわけがないのです。  なぜそう考えるかと言うと、私は喜多川氏の性加害の件で何度も彼女に連絡したからです。

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私は2回にわたり藤島ジュリー景子社長の自宅を訪れました。自宅へ行き、ドアベルを鳴らしました。インターフォンに出た誰かと話して、訪問の理由を説明しました。

自分がBBCの人間で、何を聞きに来たのかを説明した。彼女はドアを開けませんでした。話をしてくれなかった。これは、彼女が告発内容を知っていたということだと思います。彼女はただのジャニーズ事務所のトップではありません。彼女はジャニー喜多川氏の姪であり、少年たちを搾取してきた叔父から経済的に援助されてきた。  「ごめんなさい」「知りませんでした」では許されない。  彼女は声明文でこう述べています。第三者機関に事件の調査を依頼することはしない。これは間違っている。第三者による調査は必要です。この分野の専門家に第三者として入ってもらい、必要な情報の開示も、必要な人との面談の機会も提供し、声をあげた勇敢な被害者の方と対話の機会を持ち、カウンセリングも提供してサポートすべきです。

 

ドキュメンタリーに含まれていない人も含めて、私が会って話を聞いたたくさんの被害者の方々は、皆さんすでに大人になっていますが、たいへんな葛藤を抱えて生きている。それが性的虐待であり、グルーミングなのです。喜多川氏のような人は、被害者と特別な関係や秘密を共有して虐待行為を可能にする。だから、調査が必要なのです。

 

ジャニーズ事務所は勇気を持って語った人たちに、サポートや対話やカウンセリングの機会を提供すべきです。そして、説明責任を果たすべきです。ジャニー喜多川氏はたしかにすでに亡くなっており、彼が裁かれることはもはやない。しかし、このままでは倫理的に破綻しており、許されない状況です。

ジャニーズ事務所は未だに喜多川氏の名前を使い、彼の搾取によって築いたものの上で稼いでいる。このようなことが続くべきではありません。

 

本当は2020年から取材を始める予定でしたが、渡航禁止令が解除されるまで待たねばならず、結果として2022年からこの映画を撮り始めたのです。

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批判の声はSNSなどで多少ありました。「ジャニーさんは亡くなっているのだから触れるのはやめて」と。  私はそういった声にはこう返答しています。たしかに彼は亡くなったが、まだ裁かれていないことがある。そして私が最も大切だと思うことは、本当のことが言えない文化を変えなければならないということです。  搾取というものは世界中にありますが、これをただすことができるのは、人々が声をあげることです。先駆者たちの闘いがあり、沈黙の文化は解体される。これが重要です。ですから、声をあげられない人たちに声をあげてほしい。  闘う力は喜多川氏ではなく、あなたにある。そしてもう一つ私が言い続けたいことは、ジャーナリスト、放送局、新聞、SNSで情報を発信する人、報道に携わるあらゆる方々は、自分たちの場所で声をあげるべきです。黙殺をやめるべきです。