2023年も押し迫った12月29日のこと、当ブログの管理人は岡山駅に降り立ちました

その目的は、置き換えが間近に迫った381系を記録(乗車&撮影)することに他なりません

 

何しろ紀勢本線の沿線で生まれ育った管理人にとって、381系は鉄道趣味の原点といえる車両なわけです

実は、5月のGW時に幸いにもパノクロの最前列…1号車1番A席…が確保できたこともあり、人生で初めて「やくも」に乗車し、米子・松江エリアを訪れました

 

その時は、中国地方をぐるっと一周する旅程を優先したこともあって、「やくも」用の381系に用意された各種リバイバル塗装のうち、「スーパーやくも」編成とはタイミングが合わず、国鉄色しか記録することができませんでした

 

さらに、2023年11月5日からは、紫色の”スーパー編成”以外に施されていたグレー地に緑色と黄色の帯を纏う通称”緑やくも”も運行を開始しました

これにより、273系への置き換えを直前に控えたこのタイミングで、「やくも」に充当される381系において、歴代カラーリングが揃い踏みとなる奇跡的な状況が生まれたわけです

 

しかし、昨年12月の『381系特急やくも「リバイバル塗装車両」今後の運行計画について』と題されたプレスリリースにおいて、スーパーやくも色が24年4月5日に、国鉄色と緑やくも色についても6月30日限りで運用を離脱することが明らかになりました

 

ゆったりやくも色については、繁忙期に備えた波動用として、しばらく残存することが仄めかされいますが、24年6月15日以降はすべての「やくも」で273系への置き換えが完了します

 

そうした事情に私のハートは強く突き動かされ、年末年始の休暇を使い、「ひかり」509号で岡山駅に着いたところまでは順調だったわけです

「ひかり」で岡山駅に到着する前に、伯備線が落石により不通となっている旨の悲痛なアナウンスがありました

 

おでかけネットを確認すると、方谷駅構内で落石が発生し、岡山駅を14時5分に発車する「やくも」17号から発車がストップしています

15時半頃に、運転再開の見込みは早くても17時半頃になることが判明したものの、その後ズルズルと再開時刻は後ろ倒しになり、18時頃にはすっかり疲れてしまいました

 

ここに来て、1日目の岡山以遠の予定をキャンセルし、急遽駅直上にあるヴィアイン岡山に投宿しました

せっかく今日はホテル一畑の温泉でゆっくりしようと思っていたのですが、相手が自然現象である以上は仕方ありません

 

どうせ岡山で泊まることになるなら、焦って駅弁を買わずに、どこかへ食べにいけばよかったですね

ちなみに、ようやく18時50分頃になって「やくも」17号が約5時間遅れで発車していくのをホテルの部屋から確認できました

 

そして、部屋から「やくも」が見れたということは、つまり私にアサインされた部屋がトレインビューであることを意味します

 

▲700系7000番台E編成「こだま」838号

 

温泉に入れなかったのは残念でしたが、翌朝カーテンを開けると、部屋の窓からは素晴らしい景色が飛び込んできました

やはり平成初期生まれの管理人にとっては、山陽新幹線=500系「のぞみ」&700系「ひかりレールスター」なんですよね

 

 

かつては”國鉄廣島”と揶揄されていたのも今は昔

広島地区に続いて、岡山地区でも227系の投入が始まり、273系の投入とあわせて、いよいよ”國鉄岡山”も終焉が間近に迫っています

 

 

広島地区へ投入された0番台がカープ顔負けの鮮烈な赤に”Red Wing”の愛称を引っさげているのに対して、岡山地区用の500番台は”Urara”の愛称が与えられ、桃や桜をモチーフにしたピンクのテーマカラーが特徴です

 

 

昨日も岡山駅で見かけましたが、あかいアンパンマン列車に1両だけ一般色が組み込まれた編成がありました

アンパンマン列車は、あか編成ときいろ編成が4両ずつ用意されていないので、増結しようとすると一般色を連結するしかありません

 


それでは、気を取り直してスーパーやくも色が充当される「やくも」5号に乗車して出雲市へ行くと思いきや…
 

 

「サンライズ出雲」91号に乗って出雲市まで向かいます

わざわざ岡山まで来たのに、なぜ「サンライズ出雲」に乗ることになったしまったのか?

それには深いワケがあります

 

当初の予定では、今ごろ私は松江にいるはずで、スーパーやくも編成が充当される「やくも」20号のロザを確保していたわけです

「やくも」20号に出雲市から乗ろうと思うと、岡山から「やくも」1・3・5号のいずれかに乗車しないと間に合いません

 

ところが、年末の帰省ラッシュ真っ只中に空席があるはずもなく、僅かに1号のハザに空席がある以外は、夕方の便まで満席が続いています

1号の岡山発は7時05分発で、早起きする自信がなかったので、早々と私の中の選択肢からは除外されました

 

「やくも」に乗るのは諦めて、大人しく倉敷の美観地区と水島臨海鉄道でも乗りに行こうかとe5489を見ながら旅程を練り直していると、「サンライズ出雲」91号のノビノビ座席に空席を発見しました

岡山駅の発車は8時51分で二度寝するにはもってこいの時間帯ですし、終点・出雲市駅の到着は13時07分なので、「やくも」20号にも間に合います

 

 

ということで、人生で3度目の”サンライズエクスプレス”に揺られて、一路出雲市駅を目指します

これまでの利用は2回とも「サンライズ瀬戸」の方だったので、285系で岡山~出雲市間を移動するのは初めてで、もちろんノビノビ座席に乗るのも初めてです

 

こちらのノビノビ座席ですが、寝台車ではなく普通車指定席扱いなので、寝台料金は不要で、運賃+指定席特急料金でリーズナブルに利用することができます

 

 

この日の「サンライズ出雲」91号(以下、91号)には、JR西日本所属の0番台車のトップナンバー(I1編成)が充当されていました

普通席扱いのノビノビ座席が大部分を占める車両ですが、車端部にはシングルが2室設けられているので、形式はモハ”ネ”285形500番台となります

 

 

乗車中には気付きませんでしたが、定期列車の下り「サンライズ出雲」では、「サンライズ瀬戸」と併結する関係で、ノビノビ座席が12号車となるところを、単独運行となる91号に限って5号車となります

 

 

通路を片側に寄せて、カーテンに覆われた”座席”が並ぶ様子は、かつて”Bハネ”で一夜を過ごした思い出を想起させてくれるものです

寝台電車であることを踏まえると、”Bハネ”と呼ばずに、先輩である583系に敬意を表して”電ハネ”と呼んだ方がいいのかもしれません

 

 

ノビノビ座席には1番から7番まで座席番号が振られており、A・B席が下段、C・D席が上段となっています

私がe5489を見た時は、C席を僅かに2席残すのみだったので、選択の余地はありませんでした

 

 

昨日の落石騒ぎで待ちぼうけを喰らった疲れで、A・B席とC・D席のどちらが上段なのか、調べることさえしなかったのですが、無事に?眺めいい上段に収まりました

窓側には、枕元灯、読書灯が備わり、ドリンクホルダーには紙コップも用意されています

 

読書灯は壁面にあるスイッチを使うことで、ユーザーサイドでON/OFFができますが、枕元灯は深夜帯以外は点灯したままのようです

なお、各個室にはコンセントが用意されていますが、ノビノビ座席は通路側に業務用と思しきコンセントしかありません

 

また、寝台列車では定番ともいえる浴衣やスリッパも用意されておらず、あくまでも”寝台”車ではなく、”座席”車であることが窺えます

 

 

臨時列車ということもあって、91号は定期列車の合間を縫うようにして走ります

岡山→出雲市間だけを比べてみても、定期の「サンライズ出雲」が3時間24分なのに対して、当方の91号は4時間16分と、1時間近く余計にかかっています

 

単線区間のみならず、複線区間にある美袋駅でも運転停車を行い、後続の「やくも」5号に道を譲ります

同じ特急電車同士とはいえ、線形の険しい伯備線内では振り子電車の381系にスピード面で太刀打ちできません

 

美袋駅の駅舎は1925年の開通当初に建設されたもので、ほぼ100年の歴史を感じる重厚な建物です

一瞬だったので、91号を追い抜いて行く「やくも」5号の写真は撮れませんでした

 

 

備中高梁や新見でまとまった数の下車があったので、隣の座席を見渡せるようになりました

先述したように、あくまでも座席であることから、フローリングにカーペットを敷いてあるだけなので、床面はかなり硬いです

 

私のように短距離・短時間の乗車で二度寝をするくらいなら気になりませんが、これで東京から一晩を過ごすのは体力的に厳しい…熟睡できない…ような気がします

いくぶん空いてくれば気になりませんが、Bハネよりも人間同士の距離が近く、セキュリティの欠片もないため、いくら寝台料金不要とはいえ、管理人のように神経質な性格の人間は避けた方がいいかもしれません

 

不思議なことに、天板にカーテンレールはあるのに、隣の座席との間にカーテンはありません

通路と座席の間にカーテンを付けるのであれば、こっちに付けた方が寝顔を見られずに済むのに…と思えてなりません

 

 

そのデザインやコンセプトが高く評価された285系は、グッドデザイン賞とブルネル賞奨励賞を受賞しています

同じくJR西日本が生み出した281系もブルネル賞の優秀賞を受賞していますね

 

飛行機の最終便よりも遅く出発し、始発便よりも早く目的地に到着するのが「サンライズ瀬戸・出雲」のダイヤではセールスポイントとなっています

そのセールスポイント故に、定期のサンライズはスジが立っており、東京を出るとすぐに寝支度を整えないと睡眠不足になってしまいます

 

特に、これまで管理人が乗車したことのある「サンライズ瀬戸」の場合は、終点の高松まで乗ったとしても乗車時間は9時間半でしかありません

「サンライズ瀬戸」に2回乗ったことがある割には、寝るのに精いっぱいだったので、今回は車内をゆっくり見物することができました

 

▲B個室ソロのある3号車廊下

 

▲シングルを中心に車端部にはシングルツインもある

 

ノビノビ座席を除くと、サンライズエクスプレスには5種類の個室があります

その中でも一番部屋数が多く、ポピュラーなのがB個室シングルで、寝台料金は7,700円となっています

 

サンライズエクスプレスが登場する前は、1人用のB個室としてはソロが用意されていたほか、JR西日本オリジナルの個室としてシングルツインが「トワイライトエクスプレス」や24系時代の「出雲」に連結されていました

シングルツインはサンライズエクスプレスにも継承されましたが、シングルは同列車の登場と軌を一にして初めてお目見えしました

 

改造車も含めて、このB個室シングルが他列車に波及することはありませんでしたが、同じB個室であるソロよりも居住性に優れているため、寝台料金にして1,100円の差額は納得いくものかと思われます

かくいう私も、初めてのサンライズ乗車で、シングルに空室があったのに、なぜかソロに乗ってしまい、その圧迫感に辟易とした苦い思い出があります

 

 

寝台列車らしく、洗面所は各車両に設置されている…と言いたいところですが、B個室ソロの設けられている3(10)とノビノビ座席のある5(12)号車に洗面所はありません

デザインやレイアウトそのものは、同じくJR西日本の681・683系と似通ったものではありますが、シンクは枕木方向ではなく、レール方向に設置されています

 

 

285系がデビューした当時、1・4・6・7号車のトイレは洋式と和式が1ヶ所ずつでしたが、2013年から2016年にかけて行われたリニューアル工事の結果、すべて洋式に変更されました

できれば、ウォシュレットも付けて欲しかったところですが、さすがにそこまで望むのは贅沢でしょうか?

 

 

こちらは2号車に設置されているバリアフリー対応便所です

どうしても地上の建物と比べて、車体幅に制約のある鉄道車両においては、2000年代以降に円弧状にしたバリアフリー対応便所が主流になりましたが、こちらは潔くスパッとした直線基調のレイアウトになっています

 

 

3号車の4号車寄りにはミニラウンジが設けられており、スツールが8脚並びます

285系よりも遡ること2年前に登場した283系では、きのくに線走行時にオーシャンビューとなるようスツールやソファが全て海側の一方向を向いていますが、こちらは左右両方向を望めるような配置になっています

 

すぐ横には共用のシャワーブースや自販機が設置されているため、先にシャワーを浴びているお客さんを待ったり、眠れない時に飲み物を片手に夜の車窓を眺めたりする時に重宝する空間です

なお、すぐ横はドア一枚を隔ててすぐにソロとなっているため、大声での酒盛りは厳禁です

 

 

肝心の自販機ですが、お茶・ミネラルウォーター・エナドリ・コーラ・コーヒーの5種類しか販売されていません

それなりに大きな自販機なので、もう少し品数を増やして欲しい…できればアルコール類も…ところですが、最近は自販機さえ撤去される傾向にあるので、”あるだけマシ”なのかもしれません

 

 

シャワーブースの利用料金は330円で、制限時間6分となっており、髪の長い人だと時間が足りなくなるかもしれません

このシャワーブースを利用するには、同じくミニラウンジ内に設置されている自販機でシャワーカードを購入する必要がありますが、給排水タンクの容量との兼ね合いもあり、先着20人限定です

 

どうしてもシャワーが浴びたい場合は、始発駅から乗車しないと、すぐに売り切れてしまいます

A個室シングルDXであれば、専用のシャワーブースが用意されているので、シャワーカードの確保に気を揉まなくても済みますが、寝台券がプラチナチケットですからねぇ

 

 

更衣室にはきちんとドライヤーもありますが、実際に使ってみた人の感想では、風量がそれほど強くないようですね

なお、シャンプーとボディソープは備え付けられていますが、タオルはありませんので、注意が必要です

 

写真は撮りそびれましたが、安来で「やくも」16号と離合しました

すれ違ったのは何の変哲もないゆったりやくもでしたが、「サンライズ出雲」から眺める381系というのも、直に見納めですね

 

車窓からぼんやりと宍道湖を眺めていると、程なくして車内チャイムが鳴動し、終点・出雲市駅に定刻に到着しました

定期の下り「サンライズ出雲」であれば、岡山→出雲市間は3時間24分ですが、臨時の91号については4時間16分と、1時間弱余計にかかります

 

無論、定期のサンライズならともかく、こちらの臨時便には車内に急いでいるような素振りの人などおらず、サンライズを満喫したいのであれば、この臨時便がおすすめです

ちなみに、今年の3月のダイヤ改正で「サンライズ出雲」91号の所要時間はさらに伸びて、東京駅の発車時刻に変更は無いながらも、出雲市駅の到着時刻が13時07分から13時39分へ変更されました

 

かつて、「日本海」や「あけぼの」が奥羽本線内で”ヒルネ”扱いを行っていましたが、今回のように夜を越さないノビノビ座席の利用はそれを追憶できるものでした

願わくば、今度は東京からシングルDXで乗り通したいですね

 

 

出雲市駅では、隣の2番のりばに「やくも」20号となる”スーパーやくも”が停車中でした

”スーパーやくも”塗色が23年2月に復活してから今年の4月5日引退するまでに、「サンライズ出雲」91・92号が運行されたのは僅かに3シーズンしかなく、かなり貴重なシーンをカメラに収めることができました

 

 

これだけでもお腹いっぱいになりかけていたのですが、さらに岡山からの「やくも」7号に運用変更があったようで、”緑やくも”編成が充当されており、サンライズ×スーパーやくも×緑やくもの奇跡的とも言える共演シーンが出雲市駅で展開されました

 

伯備線の落石で予定が狂ってしまいましたが、そんなマイナスの出来事を全て吹っ飛ばしてくれる絶景で、2023年を最高の形で締めくくることができました