2023年6月30日…JR東海が初めて世に送り出した車両であるキハ85系が定期運用から撤退しました

後の383系や373系に受け継がれる”ワイドビュー特急”の嚆矢となり、「ひだ」と「南紀」で約30年間に渡って活躍を続けてきましたが、後輩に道を譲る形で鉄路から勇退しました

 

「南紀」については、地元を走る列車ということもあって、未公開カットがいくつかあります

せっかくなので、キハ85系が引退したタイミングで彼の雄姿を振り返ろうというわけです

 

 

海を背景に入れることのできる新鹿駅や三瀬谷ダム横の鉄橋なんかで撮ってみたかったのですが、そこまで撮影メインの人間ではないので、駅撮りがメインになります

まずは、宇久井駅を通過する3006D「南紀」6号名古屋行きからです

 

 

駅全体が緩くカーブしていますが、編成全体を捉えることはできないので、何だか中途半端な構図になってしまっていますね

日曜日ということもあって、キハ85形1100番台車が2両連なる3両に増結されています

 

 

桜の見ごろも終盤を迎えていた4月上旬のこと、紀伊勝浦駅の傍らに桜が咲いているのを発見しました

キハ85系と桜の共演をファインダーに収めることができるのは、間違いないなく今年の春が最後になります

 

残念ながら、気付いたのが遅かったので、葉桜になってしまっていますが、これはこれで貴重な記録になったと思います

 

 

引退を約3週間後に控えた6月10日こと、Twitterを見ていると「南紀」1号がトリプルヘッダーの5連で南下しているとの情報を掴み、那智駅へ赴きました

先頭車両が3両連なる様子はいかにもキハ85系らしく、”変態連結”なるワードもすっかりファン層に浸透した感があります

 

 

 

この日は、那智駅で「南紀」1号を撮影した後に、すかさず紀伊勝浦駅へ向かいました

折り返し「南紀」6号名古屋行きとなるため、この駅で30分近く停車するわけですが、やはり引退直前とあってホームや駅周辺はカメラを持った人で大賑わいでした

 

同じ名古屋から観光地を結ぶ特急列車でありながら、注目度や利用者数で「ひだ」の陰に隠れがちな「南紀」ですが、この時ばかりはファンから熱い眼差しが注がれていました

 


227系1000番台がきのくに線の新宮口で運用を開始したのは、2021年3月のダイヤ改正時からで、キハ85系との共演は僅か2年ほどに留まりました

 

 

コロナ禍による利用客減少もあって、2020年11月からは基本編成が2両となっていた「南紀」でしたが、引退を前にトリプルヘッダーを含む5連が多く見られ、同車の活躍に華を添えました

願わくば、最後の3ヶ月だけでもグリーン車を連結して欲しかったですね

 

「南紀」の運行区間のうち、末端部にあたる新宮~紀伊勝浦間はJR西日本の管轄となっており、大阪方面からの「くろしお」と肩を並べるシーンが展開されます

 

しかし、紀伊勝浦駅を発着する「南紀」は僅かに3往復で、回送列車を含めても4往復しかありません

そこに5~6往復しかない「くろしお」との離合を狙うのは、殊の外難しいのです

 

 

あまり光線状態はよくありませんが、13時過ぎの三輪崎駅で3003D「南紀」3号紀伊勝浦行きと61M「くろしお」11号新宮行きが離合します

かつては、名古屋駅で「しらさぎ」として出会っていた車両に、南国の小駅で再び出会うシーンにどんな言葉を交わしたことでしょうか?

 

なお、21年春改正で61Mが289系から287系へ変更されたことで、このシーンは見れなくなってしまいました
 

 

21年春改正までは「くろしお」のうち2往復にオーシャンアローが充当されており、同じく三輪崎駅で3001D「南紀」1号紀伊勝浦行きと51M「くろしお」1号新宮行きがすれ違うシーンも見られました

同じ貫通型先頭車両でありながら良好な眺望性を誇るキハ85系や383系に対して、283系のそれはまったく不可能であり、そこら辺は両社の設計思想の相違といえるでしょう

 

 

本当ならばキハ85形0番台とクロ282形のパノラマ顔同士が並ぶはずだったのですが、この時283系は通称”逆イルカ”と呼ばれる6号車にクロ283形が連結される編成でした

 

 

さきほど三輪崎駅ですれ違った「南紀」1号は紀伊勝浦駅で折り返して、「南紀」6号名古屋行きとなり、「くろしお」1号は新宮駅で折り返して、「くろしお」24号新大阪行きとなります

再び新宮駅で顔を合わせた両車は、紀伊半島の海岸線をなぞり、それぞれの目的地へ向かいます

 

 

世代的にも近く、客室からの前面展望がセールスポイントなキハ85系と283系

HC85系への置き換えにより紀勢東線側では前面展望を楽しむことはできなくなり、283系も不具合が頻発していることを考えると、いつフェードアウトしてもおかしくない状態です

近い将来、紀勢本線から前面展望を堪能できる車両は姿を消してしまう可能性が高そうです