春分の日の恩恵により、年度末のクッソ忙しい仕事がひと段落したタイミングで、とっても貴重な3連休となりました
普段はクルマで遠出しない管理人ですが、3連休の中日ということもあって、3月20日に十津川村は谷瀬の吊り橋まで出かけてきました
なお、今回は往復共に国道168号線(以下、R168)を走行しており、片側1車線でガードレールもないような酷道は攻めていません
普通の人からすれば、R168も十分”酷い道”になるのかもしれませんが…
まずは、那智勝浦新宮道路を走らせて新宮市へ向かい、R168へ針路をとるべく橋本交差点を左折します
県立新宮高校の横を通り過ぎて、程なくすると2008年に開通した新越路トンネルに差し掛かります
R168の場合は、起点が和歌山県新宮市で終点が大阪府枚方市なので、このトンネルがもっとも起点側に位置しているトンネルとなります
なお、真新しい坑口の新越路トンネルに対して、向かって左側にあるのは1964年に開通した越路隧道で、いまは車道を縮小して歩道が設置されているため、現役当時とは少々印象を異にしています
3ケタ山岳国道の代表格…と管理人が勝手に思っている…であるR168とはいえ、決して曲がりくねった隘路ばかりではありません
五條新宮道路の一部としてバイパスが建設された区間もあれば、写真のように穏やかに流れる熊野川沿いを走る区間もあり、のんびりと気負わずにドライブが楽しめます
途中、熊野川町にあるかあちゃんの店で昼食にめはり寿司を購入しました
ここのめはり寿司はおいしいので、R168を走る時はぜひ立ち寄ってみて下さい(そして、肝心のめはり寿司の写真は撮り忘れました)
店内では、めはり寿司3個とおかずがセットになった「めはり定食」が680円でいただけるほか、パックに入っためはり寿司3個セットが400円で販売されています
他にも、茶がゆ定食やカレーライスもあるため、飲食店の少ないR168沿いでは、とても重宝できるお店です
この辺りは河口に近いこともあって、そこまで谷も険しくありません
太地を出発してから1時間20分ほどで熊野本宮大社に到着しました
そういえば、今年はどこにも初詣へ行けていなかったので、谷瀬の吊り橋へ行く前に立ち寄りました
というよりも、実はは本宮大社へ初詣へ行くのが主目的であり、最初は谷瀬の吊り橋まで行くつもりはありませんでした
なにはともあれ、いつものように長い石段を登り、本殿へ向かいます
やはり、この日は3連休の中日ということもあって、境内はかなり混雑していました
社殿の前には参詣者が列を成しており、年始でさえ見たことのない光景に驚かされました
1年間の無病息災をお祈りして、おみくじを引いて本宮大社を後にしました
おみくじには100円,200円,300円と値段によって3種類あり、微妙に中身が異なる…高い商品は縁起のいいおまけが付いてくる…ようですが、ここはもっともオーソドックスな100円のおみくじにしておきました
結果は小吉で、あんまり当たっていないような…
なぜかいつもここへ行く時は、遅い時間帯になりがちなのですが、この日は本宮大社めがけて寄り道せずに来たので、まだ時間に余裕があります
そこで、せっかくなので大鳥居をくぐってみることにしました
もともと、本宮大社は大斎原と呼ばれるこの地にありましたが、1889年の十津川大水害により甚大な被害を被りました
辛うじて被害を免れた上四社のみが現在の高台へ移設され、今日にいたります
残る中四社と下四社については、ついぞ再建されることなく大斎原に石祠が建立されています
なお、大斎原一帯は神域にあたり、基本的に撮影NGなので写真は撮っていません
大斎原を抜けると、ふたたびR168に面したところへ出てきました
こちらの鳥居の横に、何食わぬ顔で佇んでいる石碑がありますが、こちらは本宮村の道路元標です
大正時代に施行された旧道路法により、各市町村に1ヶ所ずつ設置することが義務付けられていたそうですが、いまとなっては道路趣味者以外に気にかける人間は皆無でしょう
さっきも書いたように、本当は本宮大社へ初詣を済ませて、十津川温泉ホテル昴でひと風呂浴びて帰宅するつもりでした
しかし、この時点で時刻はまだ13時半で、お風呂へ行くにしてはまだ早いですし、せっかくここまで来たわけですから、思い切って谷瀬の吊り橋までクルマを走らせることにしました
谷瀬の吊り橋へは、小学生の時に家族で行ったことがありましたが、日帰りで行ったこともあって、ずいぶん遠かったことだけが印象に残っています
しかし、五條新宮道路の整備が進んでいることもあって、Googleマップのナビでは本宮大社から谷瀬の吊り橋まで58分と表示されました
実際にはもっとかかると思いますが、それでも1時間少々で着けるはずです
熊野本宮大社を出発して程なくすると、本宮道路~七色高架橋と続く高規格道路に差し掛かりました
そのほとんどが高架橋とトンネルで構成されており、これまでの熊野川沿いの曲がりくねった道路と比べれば、天と地ほどの差があります
なお、七色高架橋については、現時点で未完成となっており、まだまだ先の方へ延伸できる準備が行われています
完成の暁には全長2,346mになる予定ですが、いまは現道とほぼ直角カーブで接続しているので、スピードの出し過ぎには要注意です
先を急ぎたいところですが、無情にも足が旧道の方へ向いてしまうのが道路趣味者の悲しい性です
とりあえず、七色高架橋と現道が接続している交差点から20mほど入ったところに橋があったので、親柱を撮影しておきました
親柱には「昭和34年1月竣工」と刻まれています
なお、この周辺にはこれよりも古い年代の道路は存在しておらず、それはつまり昭和34年にいたるまで、この近辺にクルマの通行できる道路が存在していなかったことを如実に示しています
ちなみに、この人跡未踏の山間に道路を建設するきっかけになったのはやはり電源開発で、二津野ダムの資材搬入路として、昭和34年8月に開通しました
R168のなかでも、この和歌山・奈良の県境付近は開通が遅かった…R168が建設される前は道らしい道が存在しなかった…ことは、予備知識としてありましたが、日本が高度経済成長期に突入する直前まで、県境付近は分断されていたんですね
快走路が七色高架橋で終わりを告げると、その先は昭和34年に開通して以来、大きな改良が行われていない、いかにも3ケタ山岳国道らしい狭隘区間に入ります
センターラインが途切れることはなく、片側1車線の道幅が確保されているとはいえ、小刻みにアップダウンと曲線が現れるので、お世辞にも走りやすいとは言い難いです
将来的に、この二津野ダム周辺から十津川温泉にかけての、山肌にしがみつくように走る区間は七色高架橋の延伸と十津川道路(二期)の整備によって、解消される見込みです
そうなったら、和歌山県側から十津川温泉へ行きやすくなりそうですね
十津川温泉の街並みを抜けると、今度は全長1,432mに十津川温泉北トンネルを突入し、七色高架橋以来のバイパス区間になりました
この十津川道路(一期)の開通により、十津川村役場と十津川温泉の間は30分から10分へと劇的なスピードアップが図られました
今戸トンネルと大津呂トンネルの間でR425が分岐しているので、特に用事もありませんが、芦廼瀬川ループ橋を下って十津川第一発電所の方へ行ってみます
いま私が立っているのは、日本三大酷道の1つとして有名なR425で、右側には電源開発の十津川第一発電所があります
目の前の坑口は芦廼瀬(あしのせ)隧道で、1992年の開通と比較的新しいトンネルです
そして、十津川第一発電所の運転開始は1960年10月なので、それまでR425は発電所の中を通る経路だったのでしょうか?
トンネル1つとっても疑問が尽きないのが、紀伊半島の道路の面白さではないでしょうか?
本当ならこのままR425を突っ走っていきたいところですが、それはまた次回のお楽しみにします
寄り道もほどほどにして、上を走る十津川道路に戻りたいところですが、あちらにも”そそられる”隧道がありますねぇ
こちらは、逆U字型をした断面が特徴的な滝隧道です
開通したのは1967年で、R425の前身が森林開発公団によって建設された林道であることから、木材を積んだトラックの通行に支障をきたさないように、こうした細長い断面になっているようです
交通量の少ない古いトンネルとはいえ、見通しのよい全長200mあまりのトンネルなので、通行していても怖くありません
十津川道路が開通するまでは、この交差点がR168とR425の交点でした
厳密に言えば、十津川道路の開通に伴い、この滝隧道を含む区間は国道指定が解除されているはずですが、年季の入った青看は更新されておらず、R425のおにぎりも健在です
近くで見ると滝隧道の特徴的な断面が、よく分かると思います
そして、入口にあるR425のおにぎりが、類を見ないミニサイズになっているのも萌えポイントが高いですね
別のアングルから坑口を撮影するとこんな感じです
こちらから見える方の青看は更新されており、その内容が示すように熊野川沿いを走るR168・425の旧道は2011年の紀伊半島大水害の際に被害を被ったまま復旧されていません
沿線に人家もなく、十津川道路が開通したいまとなっては、このまま復旧されずに、廃道となる運命にあるようです
寄り道ばかりしていましたが、本宮大社から1時間20分ほどで谷瀬の吊り橋まで移動することができました
さきほども書いたように、この日は3連休の中日であり、谷瀬の吊り橋も他府県ナンバーで大いに賑わっていました
警備員さんに誘導され、駐車場へクルマを停めて、谷瀬の吊り橋へ向かいます
ちなみに、橋の通行料金は無料ですが、駐車場代500円は必要になります
この案内看板の前も次から次へと観光客がやって来ては記念撮影に興じていたため、帰り際の観光客が少なくなったタイミングを狙って撮影したものです
それでは、橋の撮影もひとしきり済んだところで、対岸へ向けて出発します
橋の全長は297.7m、そして地上までの高さは54mですが、歩いてみるとその数字以上に十津川の水面が遠くに感じます
歩き始めて20mくらいまで行ったところで、怖くて先に進めなくなりました
しかも、この日は観光客も多く、いつにも増して吊り橋は揺れているはずです
橋の途中にへっぴり腰のまま先に進めなくなった私は、やむを得ずいったん引き返すことにしました
とても怖くて下なんか見れたものではありません
いったん橋の袂まで引き返し、橋を渡る人が少なくなってから、再度挑戦しました
が、しかし…やっぱり20mくらい渡ると怖くて先に進めなくなるんですよね
吊り橋の上で呑気にポーズを構えて写真を撮ってる人や、恐怖をものともせず歩き回る子どもが恨めしく感じます
2回目の挑戦が頓挫した時点で、このまま帰ろうかと思いましたが、本宮大社からここまで安くないガソリン代…特にここ最近めっちゃ高いですよね…と駐車場代、それに労力を払ってここまでやって来たわけですから、このまま静々と引き下がるわけにはいきません
そして3度目の挑戦にして、対岸までようやく渡り終えました
橋を渡ってる途中の写真が無いのですが、カメラを振り回す余裕なんかこれっぽちも残っていません
300mを渡り終えた後は、激しい運動をこなしたわけでもないのに、なんだか心臓がバクバクしていました
対岸には売店が1件あり、飲み物や甘味類を販売しています
私もちょうど小腹が空いたので、串こん(こんにゃく)の柚子味を注文しました
ついうっかり写真を撮り忘れましたが、この売店の飲食スペースからは吊り橋を綺麗に望むことができます
特に対岸ですることもないので、このまま引き返したいと思います
引き返すと言っても、そこは吊り橋だけに気持ちが整うまで少し時間がかかります
親柱を見ると、昨年土木学会の選奨土木遺産になったばかりですね
命からがら揺れる橋を渡って元の場所へ戻ってきました
渡り板の部分が小さく、人とすれ違う時に通路の端へ寄るのが怖かったです
気を取り直して、自分のクルマへ戻り、十津川温泉ホテル昴へお風呂を入りに行こうと思います
事前に駐車場から電話で問い合わせてみると、日帰り入浴は行っているものの、受付は17時で終了するとのこと
この時点で時計の針は16時ちょうどを指しており、あと1時間でホテル昴へ行かないといけません
これが高速道路であれば、クルマをぶっ飛ばしていくところですが、生憎ここはそんな甘っちょろい環境ではなく、R168を攻める必要があります
もちろん、走り慣れない道を飛ばすほど、私も無鉄砲ではありません
下の写真のような線形未改良区間は、ゆっくりと安全運転で走ります
この写真は、風屋貯水池の沿岸を走る区間で撮ったものですが、まだまだR168にもセンターラインのない、離合困難な区間が残っていることに驚きました
ちなみに、この風屋ダムから風屋貯水池の沿岸部を走る狭隘区間も五條新宮道路の風屋川津工区の建設により、発展的に解消される見込みです
日帰り入浴のタイムリミットはありますが、風屋大橋から眺める風屋ダムの堤体が美しかったので、しばし撮影に興じました
実は、このすぐ横からダム竣工前の旧道跡…R168に昇格する前の村道…があったのですが、この時は事情を知らずにスルーしてしまいました
今度はR168からR425を少し走って、16時50分にホテル昴に到着しました
時間に余裕があったので、R425の旧道と思しき区間に突っ込んで、記念に撮ったのがこちらの写真です
赤に白抜き文字で転落事故多発と注意を促してくるあたり、紀伊半島の険道の真髄が垣間見えます
ちなみに、このr735をずっと進むと、龍神の方へ抜けることができます
もちろんいまから龍神へは行きませんので、こちらのトンネルをくぐってホテル昴へ向かいます
転落事故多発の看板に、古めかしいトンネル…しばらくここでゆっくりお茶でも飲みたくなる素敵な交差点ですね
こちらは、さきほどのトンネルを抜けてホテル昴から撮影したものです
1998年に新西川トンネルが開通するまでは、こちら側が現役のR425でした
十津川温泉はすべての温泉が源泉かけ流しであることで有名です
こちらのホテル昴のその例に漏れず、源泉かけ流しウリのお宿になっています
日帰り入浴は17時までで、料金は800円となっており、長時間の運転で疲れた体をほぐすにはもってこいです
今回は谷瀬の吊り橋まで行ったことで、あまり旧道探索ができませんでしたが、紀伊半島には酷道や険道が多いので、また機会を探してドライブに行きたいものですね