例年通り、今年も12月の第3金曜日に鉄道各社より来春のダイヤ改正の概要が発表されました

ここですべての項目を取り上げるのは無理なので、各社の気になったポイントを雑感を交えながら紹介していきます

 

●JR北海道

すでに発表がありましたが、22年春の改正より札幌~釧路間を結ぶ「おおぞら」号の車両がキハ261系に統一されます

これに伴い、道東方面の高速化の立役者ともいえるキハ283系が全車引退することになりました

 

思えば、キハ283系も登場から四半世紀が経過し、北海道の厳しい気象条件のなか過酷な運用に就いていたこともあり、先輩格のキハ281系よりも先に引退することになりました

なお、キハ283系からキハ261系へ置き換えらえれる列車については、最高速度が向上(120㎞→130㎞)することから、目立った所要時間の増加はありません

 

それどころか、「おおぞら」9号については札幌~釧路間で所要時間を6分短縮しています

もともと、キハ283系の全盛期よりもずいぶんスジの寝ているダイヤになっているので、今回の非振り子車への置き換えに伴い、「おおぞら」系統が特に遅くなったという印象は受けません

 

ところで、今回のダイヤ改正のプレスリリースに先立ち、同社より快速「エアポート」の指定席料金を値上げすることが発表されました

値上げのタイミングはダイヤ改正日ではなく、22年の4月1日乗車分からが対象で、現行の530円から840円へ大幅な値上げとなります

 

2016年までは310円だったので、その頃から比べると約2.7倍の値上げとなります

札幌~新千歳空港間40分ほどの乗車に対して、840円は割高感が否めないような気もしますが、これがJR北海道の経営に却って悪影響を与えなければいいのですが…

 

「釧路湿原ノロッコ」号や「富良野・美瑛ノロッコ」号も指定席料金が同じく530円から840円へ値上げとなりますが、こちらは車窓がセールスポイントの観光列車であることを考えると、寧ろ妥当といえるでしょう

観光列車の指定席料金値上げは理解できますが、バスと競合している快速「エアポート」の場合、530円くらいがちょうどいいように思えてなりません

 

●JR東日本

ダイヤ改正発表前に、新幹線に準定期列車を設けることが報じられましたが、どうやらマスコミの誤報だったようです

新幹線では、上越新幹線にE7系が増投入されるほか、山形新幹線が全車指定席化されます

 

在来線特急では、「あずさ」「かいじ」「湘南」の各列車について東京駅へ乗り入れる列車が増発されるほか、「ひたち」「ときわ」については従前は上野発着だった上下3本が品川まで延長され、利便性が向上します

しかし、地方線区の在来線特急に目を向けると、厳しい状況が見え隠れします

 

まず、現行のダイヤでは新潟~上越妙高・新井間に1日5往復運行されている「しらゆき」ですが、1往復が廃止され、4往復となります

臨時化や曜日限定での運行ではなく、いきなり1往復が廃止になってしまうほどに、需要が落ち込んでいるのでしょうか?

 

また、「しらゆき」と同じく新潟を発着する「いなほ」ですが、いまは秋田発着便が1日3往復運行されていますが、そのうちの1往復については酒田以北が臨時化されます

 

つまり、酒田~秋田間に限っていえば、定期の特急列車はわずかに2往復のみとなります

旅客流動の谷間にあたる区間とはいえ、山形県・秋田県の日本海沿いを移動するのが不便になりそうです

 

●JR東海

中央西線に315系が投入されるほか、これまでJR東海の在来線特急の代名詞でもあった”ワイドビュー”の愛称がなくなることになりました

22年度から「ひだ」及び「南紀」に投入される予定のHC85系は、前面展望がまったくもって不可能な構造になっていることを踏まえての措置かと思われます

 

●JR西日本

既報通り、紀勢線の「くろしお」、福知山・山陰線を走る「こうのとり」「きのさき」「はしだて」「まいづる」の各特急列車が全車指定席化されることになりました

コロナ禍で厳しい経営環境が続くなか、全車指定席化によって検札を省略し、人件費を圧縮したい思惑が見え隠れします

 

しかし、同社ではみどりの窓口の閉鎖を加速させていることから、場合によっては駅で気軽に指定席特急券を購入できないケースも懸念されます

また、e5489会員であれば、自由席特急料金と同額で指定席を利用することができますが、ネット予約ができない層にとっては実質値上げとなることが避けられそうにありません

 

この他、アーバンネットワーク内では減便が実施された区間があります

その中でも、管理人が一番驚いたのが、琵琶湖線野洲~米原間の新快速が1時間あたり1本のみの運行となる点です

 

この区間には、人口約11万人の彦根市や同じく約8万人を抱える近江八幡市があり、通勤や観光で新快速の恩恵を授かっているだけに利用者からは不満の声が上がりそうです

 

●JR四国

ダイヤ改正のプレスリリースとは別枠ですが、22年3月12日乗車分から「四国まんなか千年ものがたり」のグリーン料金が現行の1,300円から1,500円へ値上げされます

既に、特急格上げ後の「伊予灘ものがたり」についても、グリーン料金が1,500円と発表されていたので、これで整合性がとれることになります

 

アテンダントさんからの手厚いおもてなしがセールスポイントである”ものがたり”列車については、そのサービス内容を鑑みると、1,500円でもお安く感じてしまいます

ところが、不思議なことに「志国土佐時代の夜明けのものがたり」だけは、他の特急列車と同じくグリーン料金が1,300円に据え置かれます

 

他のものがたり列車群と同じような運行体制をとっているにもかかわらず、なぜこの列車だけが値上げの対象外なのか不思議ですね

 

●JR九州

20年9月から運休していた肥薩線を走る「はやとの風」ですが、この度車両を「ふたつ星4047」に転用するため、22年3月21日をもって廃止されることになりました

同列車は04年春に九州新幹線新八代~鹿児島中央間が開業した時に、南九州エリアでは初のD&S列車として運行を開始しました

 

吉松では「いさぶろう・しんぺい」と接続し、SL「人吉」や「かわせみ やませみ」とあわせて回遊ルートを形成していましたが、肥薩線の八代~吉松間は令和2年7月豪雨の影響でいまも不通となっており、今回の「はやとの風」廃止は同線の将来に暗い影を落とすことになりそうです

 

●小田急

以上、JR各社の変更点をお伝えしましたが、それよりもはるかに衝撃的だったのが小田急より同社の看板車両ともいえる50000形VSEの引退を発表したことです

2005年の登場からわずか16年ほど経っておらず、驚きを禁じ得ません

 

同社の発表によると、ホームドアへの対応が難しいほか、主要機器の更新が難しいことも挙げられており、連接車体という特殊性が災いしているようです

50000形VSEの引退に伴い、3000形SE車より脈々と受け継がれていた連接車体の系譜も途絶えることになります

 

関西人からも羨望の眼差しが向けられる小田急ロマンスカーにあって、フラッグシップたる存在であるVSEの引退は衝撃が大きく、まさに美人薄命といえそうです