2014年11月に北海道を初めて訪れてから約7ヵ月後の2015年6月のこと、当分訪れることはないだろうと思っていた北の大地を私は再び踏みしめていました

 

そもそもの事の発端は、知人から「北斗星」へ乗りに行こうと誘われたことにあります

「北斗星」も15年春のダイヤ改正で臨時化…「カシオペア」と隔日運行…となっていましたが、「トワイライトエクスプレス」のような完全廃止だけは避けられており、週3往復ながら8月まで運行を続けることが発表されていました

 

高額なツアー料金で私たちのような庶民には手の届かなくなってしまった”特別なトワイライトエクスプレス”を除くと、「北斗星」は24系客車を使用する最後の寝台特急列車となっていました

そのため、知人からの誘いを断らない理由などどこにもなく、さっそく近所の駅で10時打ちに挑み、見事Bハネを確保することに成功しました

 

この窓口の駅員氏が時報を見ながらマルスを操作してくれたのですが、いやはやこの時の駅員氏には惜しみない賛辞を贈りたいと思います

一番人気のなさそうなBハネとはいえ、2ヶ月後に完全なるラストランを迎えるということで、鉄道にさしたる興味を持たない層からも注目を集めており、寝台券の入手は困難を極めていました

 

さらにはヤフオクなどに出品する転売屋とも戦う必要がありましたが、この寝台券の争奪戦に見事勝利することができました

なお、寝台特急「北斗星」の乗車記につきましては、下記リンクよりご覧ください

 

 

それでは、話を本題に戻しまして…

 

実は、今回北海道を再訪するにあたって、どうしても乗っておきたい車両が1つありました

前回、札幌駅で撮影した動画を家に帰ってから見ていると、「オホーツク」で運用されているキハ183系からキハ181系と似たようなエンジン音をしていることに気付きました

 

よくよく調べてみると、キハ183系0番台の中間車両には、キハ181系に搭載されているDML30HSC形エンジンの改良型であるDML30HSI形エンジンが搭載されていることが分かりました

なぜ、札幌駅で撮影している時に気付かなかったのか不思議ですが、当時はそこまでキハ183系に詳しくなかった…沼が深すぎる…のだと思います

 

ちょうどキハ183系は、初期車を中心に淘汰が進んでいる上に、DML30HZ形エンジンを搭載しているN・NN183系についてもエンジン換装を控えているタイミングだったので、この機会を逃せば次はないと思い、札幌から旭川の間だけですが、「オホーツク」に揺られてきました

なお、列車名やダイヤ、運賃・料金については2015年6月時点のものになっておりますので、ご注意下さい

 

 

※↑↑/↑14年11月撮影

 

ということで、札幌を9時41分に出る「オホーツク」3号に乗り込みます

いまなら間違いなくグリーン車に乗りますが、この頃はそこまでこだわりがなかったので自由席を利用しています

 

この日は、「オホーツク」「スーパーカムイ」「北斗」と3本の特急列車に乗車しているのですが、なぜかほとんど写真を撮っていないので、差し支えのない範囲で14年11月に撮影した分の写真も活用しながら記事を書いていこうと思います

せっかくJR北海道の在来線特急車両に乗車するまたとない機会なので、いまなら車内外くまなく記録を残すところですが、当時の自分がなぜ故記録を怠ったのか、いまとなって知る由もありません

 

幸いにして、「オホーツク」はエンジン音を中心に動画を回していたので、後ほど紹介します

 

 

滝川の手前付近の走行中の車内から、なんとなく車窓をスナップしました

どこまでも広がる原野に初夏の北海道らしさが感じられます

 

 

デッキへ出てみると、381系とまったく同じフォントに彩られたくずもの入れがありました

確かに、キハ183系の量産車は1981年から登場しているので、「くろしお」や「やくも」の381系とちょうど同じ世代の車両に当たります

 

 

 

トイレと洗面所はリニューアルされていますが、素っ気ない蛍光灯カバーや開閉式の窓を備えた洗面所からそこはかとなく国鉄の香りを感じ取れます

トイレの方は、和式から洋式に改装されており、個室の中は登場時の姿を留めていません

 

 

ということで、写真をあまり撮っていないので、車窓やDML30HSC形エンジンの走行音をお楽しみください

何度聞いても、水平対向12気筒エンジンの咆哮は溜りません

 

動画では分かりにくいかもしれませんが、水平対向エンジンはその構造上、ピストンが水平方向に動くため、エンジン始動時に車体が横方向に揺さぶられる挙動が特徴といえます

クルマでも水平対向エンジンを搭載しているレガシィやインプレッサなんかは、ニュートラルで空ぶかしすると、車体が横方向に揺れるので、DML30系の感覚を疑似体験することができます

 

直列エンジンを搭載した車両では味わえない、DML30系エンジンに特有のフィーリングに酔いしれていると、あっという間に旭川に到着しました

ただ、この感覚が味わえる車両は、それほど多く残されていません

 

キハ181系は引退して久しく、キハ183系でも「オホーツク」「大雪」で運用に就くハイデッカーグリーン車のキロ182形500番台車に僅か2両が残るのみとなっています

地元民ならいざ知れず、北海道から遠く離れたところに住んでいる本州民が狙って乗るのはまさに至難の業で、運を天に任せるしか方法がないようでは、残念ながら再度の乗車は叶いそうにありません

 

 

札幌~旭川間136.8㎞を途中3駅に停車して1時間34分で走り抜け、定刻の11時15分に列車は旭川に到着しました

表定速度を計算してみると、88.3㎞となっています

 

「スーパーカムイ」が同区間を5駅に停車して1時間25分で結んでいることを考えると、線形が非常に良好であるにもかかわらず、少々物足りない数字ではあります

同じく気動車で運行されている「スーパー宗谷」は、「オホーツク」と同じく3駅停車で1時間25分ですので、キハ183系の足の遅さが目立っています

 

登場時は高出力エンジンともてはやされたDML30系エンジンをもってしても、停車駅の多い電車特急には敵わないので、技術の進歩は著しいですね

 

 

旭川駅は2011年に高架化が完成したばかりで、私が訪れた時はまだ出来立てほやほやのピカピカの駅でした

 

ホームの上屋と天井が一体化しており、雪国らしくホームの端から端まですっぽりと大きな屋根に覆われているので、これなら雪が降っても安心ですね

いざ完成してみたら、大屋根の開口部が広過ぎて雨が降り込むことが判明した大阪駅よりも完成度は高いと思います

 

この時訪れた旭川がいまのところ、私の旅行の中で最北端であり最東端となっています

果たして、この時の記録を打ち破って稚内や釧路、根室へ行くことができるのはいつの日になるでしょうか?

 

 

このまま思い切って、網走か稚内にでも行きたい気分でしたが、後々の旅程を考えて、今回はここで引き返すことにします

本音を言うと、札幌へ戻るのに「スーパー宗谷」に乗りたかったのですが、朝と夜に1往復ずつしか走っていない列車なのでそれも難しく、「スーパーカムイ」20号に乗って来た道を引き返します

 

↑14年11月に撮影

 

「スーパーカムイ」として華々しくデビューを飾った789系1000番台車ですが、16年春改正で新千歳空港駅への直通運転を取りやめ、翌17年春改正では”スーパー”の接頭辞も外れたので、いまではヘッドマークがスカスカでずいぶん寂しい表記になってしまいました

 

 

旭川から札幌へ戻るときは、指定席車であるuシートを利用しました

uシートの語源は、「"余裕"の旅を"あなた(you)"のためにご用意しました」というもので、その名の通り+520円で自由席とは違う快適な座席が設えてあります

 

「スーパーカムイ」の場合、5両編成中指定席はこの4号車のuシートのみで、残りの4両は自由席です

道内を走る他の特急列車と比べても「スーパーカムイ」は自由席車の比率が高く、短距離利用に主眼を置いた列車の性格を窺い知ることができます

 

いまでも、同じ区間を走る「ライラック」よりも「カムイ」の自由席車の方が1両多いので、座れる確率も後者の高そうです

 

 

789系1000番台は5両固定編成になっており、増解結は行われないため、号車表記はすべてステッカーに表記されています

デッキ周辺はシンプルにまとめられており、uシートの客室ドアは白樺を想起させるような淡い木目を纏っています

 

 

車内には、小糸工業製の回転リクライニングシートが設置されています

さすがに横3列配置ではなく、フットレストもありませんが、シートピッチは自由席の960mmに対して、1050mmとJR東海のワイドビューシリーズよりもゆとりがあります

 

この座席最大の特徴は、789系のグリーン席と同じように、ヘッドレストピローの両端が可動するウィングアップ機能を備えていることです

これにより、頭部が包み込まれるような仕組みなっているのですが、先述したようにuシートは横3列ではなく横4列なので、この機能を発動させると、頭を置くスペースが狭くなってしまうのが欠点なんですよね

 

 

客室ドア鴨居部にはLED表示板が設置されています 

ドット数は細かいですが、車両そのものは2000年代後半の登場ということもあり、フルカラーLEDではない上に、サイズも小振りです

 

 

車内がそこそこ混んでいたのもあるが、往路にも増して復路もほとんど写真を撮っておらず、車窓を記録した唯一の写真がこれ1枚しかありません

原野と防雪林が入り混じる風景は本州民からすると新鮮で、旅人の視覚を絶え間なく楽しませてくれます

 

 

車内の自販機には、北海道限定飲料であるリボンシトロンの広告がありました

本州民にはあまり馴染みがありませんが、実は100年以上の歴史を誇るロングセラー商品となっています

 

 

余談になりますが、旭川駅で購入した北海道産小豆使用の黒糖饅頭がめちゃくちゃ美味しかったです

また旭川を訪れたときには、必ずや買い求めたいですね

 

↑14年11月撮影

 

定刻の13時20分に、列車は札幌駅へ滑り込むように到着しました

旭川〜札幌間を途中5駅に停車して、表定速度は96.5kmの俊足を誇ります

 

主に平野部を走行していることもあり、曲線が少ないことも手伝って、「スーパーカムイ」の乗り心地はすこぶる良好で、揺れも少なく、文字通り線路の上を滑るような快適さでした

これまで私が乗車したことのある在来線特急列車の中でも、乗り心地のよさは3本の指に入ると思います

 

「スーパーカムイ」20号としてはここが終点になりますが、このまま列車名を快速「エアポート」132号に変えて新千歳空港まで直通します

札幌駅では「スーパーカムイ」からの降車客と「エアポート」の乗車客が輻輳し、車内外がにわかに賑やかになります(これが遅延の原因だったわけですが…)

 

この後、札幌から「北斗」12号で函館へ向かって、そこから今回の旅のメインイベントでもある「北斗星」で上野へ行く予定です

 

北海道漫遊記⑥〜キハ183系「北斗」号普通車乗車記〜へつづく