「鬼滅の刃」日本一おめでとうございます。確かに、感動する素晴らしいアニメで、僕も二回鑑賞しました。オタク気質の僕は、JTBに朝一番に並んで、無限城のモデルと言われる福島県の大川荘に行った程です。でも正直に言うと、アニメなら、僕は「君の名は。」が一番なんです。僕個人の好みですが、心の奥底の琴線が激しく震えたのです。ちなみに、初めてアニメもいいと思ったのは、「サマーウォーズ」でした。それまでは、アニメを見ようなんて考えもしませんでした。アニメだからできる表現、世界、何かいいなって。ドラマでは、「仁」や「義母と娘のブルース」に、涙腺が何回も崩壊しました。しかし、全ジャンルを通して断然トップなのは、チェリまほです。
チェリまほのことは、何かの記事を読んで知っていましたが、BLなのでスルーしていました。女性目線のBLの世界は、ゲイにとって決して居心地のいい世界ではないんですよ。共感する部分より、違和感、敗北感、寂寥感などの負の部分が大きいからです。たまたまBSの番組表で見つけて、見てみようかなと思ったのが始まりです。それも、かなり進んでいる第5話でした。派手な展開があまり無く、生身の人間が演じる心温まるドラマで、これって自分の思っていたBL?って思いました。もちろんこの時は、素直で優しい主役の安達さんに心が惹き付けられていました。それで、TVerで第1話を見たのです。
第1話を見て、完全に心が捉えられました。それは主役の安達さんではなく、共演の黒沢さんにです。なぜW主演でないのかと不満なのですが、業界の暗黙のルールなら仕方ありません。もし、男女のラブストーリーならW主演だったとしたら、この壁も打破して欲しいかななんて欲張ってしまいました。ゲイの僕、しかもかなり穢れたゲイから見える心の声は、大勢の皆さんが感動するシーンとはかなり違います。
まず最初に僕の血液が逆流したのは、「安達、いい匂いするな。」です。「うなじにほくろ」ではないんです。うなじのほくろに性的興奮を感じるのは、どちらかと言えば、ストレートな男性のような気がします。黒沢さんを、完全にゲイと位置付けない配慮なのかなと思いました。僕には、匂いについて強烈な体験がいくつもあります。そのうちの一つは、僕が中学二年の時です。友達が僕に、「女の子の匂いに、たまんない!」って言ってきたんです。話は何とか合わせましたが、僕は、あの女性ホルモンの甘い匂い、生理的にダメなんです。男の子の汗臭い匂いには、クラクラと目眩する程なんです。だから、匂いにふれてきたことでゲイ側の視点も考えてくれていると思いました。
二つ目は、ネカフェに泊まるから平気と言う安達さんに、黒沢さんが一歩前に踏み出して、自信なさそうに「泊まっていけば?」と言うシーンです。それまでは、ビジネスライクで自信ありそうな態度の黒沢さんが見せた、一瞬の弱みでした。ネカフェよりは自分を選んでくれるかもしれない、でも断られたら死にたい位悲しくなるとの葛藤の中で、勇気を出して弱々しく叫んだ心の声でした。このシーンの時、僕の頭の天辺からつま先まで、最大級の切ない稲妻が走り抜けました。「あー、よく言えたなあ。黒沢さん、頑張ったな。僕は、黒沢さんを絶対守りたい。」僕は、完全に黒沢さんに堕ちました。ゲイが、ストレートと思われる男性に自分の思いを少しでも表すことの危険性、これは本人にしかわからないと思います。アウティングはもちろんですが、好きな相手に忌み嫌われる断絶の世界は、恐怖でしかありません。自分から近寄らなければ、好きな相手も自分から離れていかないのですから。
マフラーを巻いてあげるシーンも、黒沢さん側からするとかなり危険な行動です。ゲイの僕から見ると、流れの中とはいえ、あそこまでいくのは舞い上がり過ぎな気がしました。でもよく考えると、安達さんという人は、男性との恋愛に嫌悪感を持たない男性であるという、間接的な説明のような気がしました。また、BLや女性目線を意識したサービス的な演出なのかもしれません。だって、僕もあんなかっこいい黒沢さんに優しくマフラーを巻いてもらっら、もう死んでもいいと思うからです。僕は、チェリまほ沼でなく、黒沢さん沼だと改めて思いました。