ひもとく 繙く 紐解く 辞書〈2〉 | tobiの日本語ブログ それ以上は言葉の神様に訊いてください

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 下記の続き。
【ひもとく 繙く 紐解く 辞書】2019-12-01
https://ameblo.jp/kuroracco/entry-12551144943.html


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 家主のエントリー。
===========引用開始
「ひもとく」って、「解明する」の意味で使うんだ、最近は……。
で、そのときは「紐解く」って書くんだ……。 
===========引用終了

 tobi君のコメント。
 珍しくヒトサマの意見に否定的。
===========引用開始
>「ひもとく」って、「解明する」の意味で使うんだ、最近は……。
 イヤな使い方ですが、OKのようです。

>で、そのときは「紐解く」って書くんだ……。
 それはどうでしょう。「解明する」みたいな使い方が最近のもので、最近は「紐解く」が優勢ってことでは。

『広辞苑』によると、「紐解く」と「繙く」は別の言葉で、「紐解く」はムフフな意味です。
【ひもとく 繙く 紐解く 辞書】2019-12-01
https://ameblo.jp/kuroracco/entry-12551144943.html

 現実問題としては、IMEの多くが「紐解く」にしているんで「もうダメ」でしょうね。
「繙」は常用漢字外ですが、「紐」だって外でしょうに。
 かといって「ひも解く」はかなりイヤ。 
 漢字好きの記者ハンだって「ひもとく」にしています。 
===========引用終了

 常用漢字表を遵守するなら、「ひも解く」なのかもしれない。これが嫌われるのは、まぜ書き(これもまぜ書き?)っぽく見えるからなのでは、まぜ書きとマセガキは何かと嫌われがち(誰の子供の頃とかはいわない)。
 ネット検索してみた。
 下記あたりが無難?
 やはり「解明する」の意味の場合は「紐解く」と書くわけではないようだ。「解明する」の意味で使われることが多くなり、「紐解く」と書かれることが多くなった……たまたま時期が一致した、ということらしい。

【(ことばの広場)ひもとく 「ひも」ってどこにある?】
http://www.asahi.com/special/kotoba/danwa/SDI201705316713.html
===========引用開始
加藤 順子
2017年6月2日

(5月31日付朝刊に掲載した「ことばの広場」を再録しました)

 新製品の紹介記事を校閲した際、「専門家が魅力をひもときます」という表現を見ました。この「ひもとく」は、「解説する」という意味のようです。

 「ひもとく」は、巻物などのひもをほどいて書物を読むことをいうのが一般的でした。でも最近は「疑問を解明する」「背景を説明する」といった意味で使われることが増えています。

 「広辞苑」は、「ひもとく」に二つの項を挙げています。一つは「繙く」で、書物の帙(ちつ=カバー)のひもをほどいて読むこと。もう一つは「紐解く」で、下衣のひもをほどくことや、つぼみが開くこととあります。

 他の国語辞書もおおむね似た説明をしています。ただ、「三省堂国語辞典」は「謎を解く」ことも指すと加えています。

 現代では、ひもをほどいて何かを読む機会はほとんどありません。「繙く」ではなく「紐解く」の方から連想が広がり、字面からも「謎解く」につながってきたとも考えられます。 
===========引用終了

【ジャパンナレッジ > 知識の泉 > 第7回 「ひもとく」の新しい意味?】
https://japanknowledge.com/articles/blognihongo/entry.html?entryid=7
===========引用開始
第7回「ひもとく」の新しい意味?

2010年05月17日
 『読売新聞』の朝刊に「日本語日めくり」という、ことばに関する興味深い連載コラムがある。以前そのコラムで「ひもとく」ということばを話題にしていた(2010年3月17日付)。「ひもとく」とは「繙く・紐解く」と書き、本の損傷を防ぐために包む覆い(帙(ちつ))の紐を解く意から、元来は本を読むことをいう。その「ひもとく」に、「調べる」「解明する」といった新しい意味が広まりつつあるというのがコラムの内容である。
 コラム氏は「歴史をひもとく〔=調べる〕」という『三省堂国語辞典』の用例を広まりの根拠として引用しているが、実はこの「歴史をひもとく」という用例は、決して新しいものではない。たとえば森鴎外の『うたかたの記』や夏目漱石の『吾輩は猫である』にもその用例が見られるのである。
 『日国』や漢和辞典によれば、「史(歴史)」は、過去に起こった事象の変遷や発展の経過の意味だけでなく、それらをある観点から秩序づけて記述したものも表していたことがわかる。鴎外・漱石は「調べる」の意ではなく、「過去のことがらを記録したものを読む」という意味で使っていたものと思われる。
 もちろん、「調べる」「解明する」という用法が広まりつつあるという事実を否定するものではない。しかし、『通りをひもとくと京都がわかる』『力学でひもとく格闘技』などというような書名を見ると、どんな意味なんだろうと思ってしまう。
===========引用終了

【「ひもとく」は歴史や謎を解き明かす意味でも使う人が多数】
https://salon.mainichi-kotoba.jp/archives/25238
===========引用開始
「ひもとく」を「解明する」という意味で広く使う人は3割を超え、「歴史をひもとく」など書物が関係する場合に使う人が過半数。「書物を読む」のみという人はわずか1割で、意味は拡大したと判断してよいでしょう。

目次
過半数が「歴史をひもとく」もOK
新旧の用法つなぐ「歴史をひもとく」
伝統用法も元は比喩
40代以下では「解き明かす」が主流
過半数が「歴史をひもとく」もOK
「書物を読む」という意味で使われる「ひもとく」を、より広い意味で使いますか?
書物を読むという意味でのみ使う 11.9%
「歴史をひもとく」など書物に関係する場合は使う 55.6%
「宇宙誕生の謎をひもとく」など解明する意味で広く使う 32.5%


「解明する」という意味で広く使う人は3割を超え、「歴史をひもとく」など書物が関係する場合には使うという人は過半数に達しました。元々の意味の「書物を読む」ことのみに使うとした方はわずか1割。多くの辞書はこの語釈しか載せていないのですが、意味は拡大したと判断してよいでしょう。


新旧の用法つなぐ「歴史をひもとく」
ではその拡大の理由は何か。そして拡大は妥当なのか。国立国語研究所の相澤正夫氏の2013年の論文が参考になります(以下、参照先のページ数は「国語研プロジェクトレビュー」第5巻第2号から)。

論文では「書物を読む」を「伝統用法」、「分析・解明する」を「新用法」とし、「歴史をひもとく」はこの二つの用法を媒介すると指摘します。この「歴史をひもとく」には、「歴史書を読む」「歴史書(記録・文書)を参照して調べる」「多様な手段で歴史を解明する」という3段階があります。

段階を経るに従い、ただ「読む」だったものが「解明する」に変化し、またその対象が「歴史書」から「歴史」(過去の出来事)に変化しています(p.83)。ここまで来ると、あとは対象が「宇宙誕生の謎」や「天才画家の人生」に応用されるだけ。伝統用法と新用法はこのように連続性を持っているのです。


伝統用法も元は比喩
また、「事件のもつれた糸をほどく(=解明する)」といった類似の比喩表現が既に定着していることや、「解き明かす」「解きほぐす」といった表現が「ひもとく」の「とく」と重なることから、「ヒモトクがこれらの複合動詞と連想・類義の関係に入り、徐々に安定した地位を築きつつある」(p.79)のではないかと推定しています。

つまり新用法はとっぴな突然変異ではなく、十分な素地の上に進化を重ねてきた結果と言えるのです。そもそも伝統用法の「ひもとく」も比喩である(ひもをほどいて終わり、ではなく、その先の読む行為を暗示している)わけですし、現代の書物については実際にひもをほどくわけですらありません。新用法も一種の比喩ですから、おかしな表現だと切り捨てることは難しいでしょう。


40代以下では「解き明かす」が主流
論文では、「ひもとく」をどういう意味で使うかの年代別調査も紹介しています。20~40代では「書物を読む」「歴史書を読む」よりも「歴史を解き明かす」「宇宙の謎を解き明かす」の意味で使う人が明らかに多いという結果でした(p.85)。今後も新用法の拡大は続くでしょう。

伝統用法はもはや論文の言う「古風な文章語あるいは教養語」(p.79)で、「意識的な学習によってのみ維持される」(p.85)使い方なのです。言葉に保守的であるべき新聞といえど、伝統用法にこだわっていては時代錯誤と思われるかもしれません。今回のアンケートの結果を見ても、新用法が市民権を得るのはそう遠くないのではないかと感じます。

(2019年02月05日)

質問に際して
まず、「ひもとく」が「書物を読む」という意味であるということに驚かれた方もいるのではないでしょうか。岩波国語辞典7新版では「本をひらいて、読む。巻物のひもを解く意から」とあります。元々は文字通りひもを解いていたのです。

多くの辞書がこの意味しか載せていませんが、用例を見ると「歴史をひもとく」(大辞泉2版)を載せるものが散見されます。書物を読むということと完全に一致はせずとも、文献を調査するなど親和性は高いでしょう。ウェブ版のデジタル大辞泉では「書物などで調べて真実を明らかにする」と、もう少し意味が拡大されています。

しかしさらに広く使える言葉だと解釈する辞書も出てきています。三省堂国語辞典は2014年の7版で「なぞを明らかにする。『真実をひもとく』」と追加。広辞苑は18年の7版で「隠れた事実を明らかにする。『天才画家の人生をひもとく』」と加えました。書物を完全に離れたところにまで「ひもとく」を応用できるという立場です。

毎日新聞では特に使い方に決まりはありませんが、書物を調べることからあまりに遠い場合は校閲から「解き明かす」などの言い換えを提案することがあります。みなさんが違和感なく受け取る「ひもとく」の範囲はどれくらいでしょうか。

(2019年01月17日)
===========引用終了

 ちなみにコミュで問題提起したのは下記。
【「紐解く」と「繙く」の違い】2007年05月15日
https://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=6251&id=18459809