【助詞の話──「へ」と「に」(改)】 | tobiの日本語ブログ それ以上は言葉の神様に訊いてください

tobiの日本語ブログ それ以上は言葉の神様に訊いてください

 フリーランスの編集者兼ライターです。
 主として日本語関係のことを書いています。

 下記の仲間。 
日本語アレコレの索引(日々増殖中)【22】 
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1971566092&owner_id=5019671 

mixi日記2019年06月06日から 

 下記の話を書いたのはmixi日記2009年10月19日。 
【助詞の話──「へ」と「に」(仮) 独り言です44くらい】 
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-736.html 

 いろいろアラも目につくし、辞書も古いようなんで、全面的に書き直す。 

 大前提として、助詞の話はむずかしい。ヘタに踏み込まないほうがいい。 
「ヘ」と「ニ」の使い分けは、助詞の問題のなかでは比較的簡単だけど、それでも十分むずかしい。  

 いきなりだけど、結論を書く。 
 世間では「方向のヘ」「目的地(帰着点)のニ」などと言われる。 
 おおざっぱな理解はそれでいいと思う。初級者への説明ならそれで十分。解説らしきものもネットに多数転がっている(詳細は↓のリンク先参照)。 
 ただ、もう少し踏み込むとよくわからない話になる。「方向のヘ」「目的地(帰着点)のニ」は、「そういう解釈が一般的」ってくらいのニュアンスってだけで、実はたいていの場合は「どちらも同じように使える」。 

 まずネット辞書の『大辞泉』(goo辞書)を確認する。どちらも多彩な意味をもつ助詞なんで、一部を抜粋する。 
https://dictionary.goo.ne.jp/jn/197857/meaning/m1u/%E3%81%B8/ 
===========引用開始 
への意味 

[格助]《現在では「え」と発音する》名詞に付く。 
1 動作・作用の移動・進行する目標地点・方向を表す。…の方向に向かって。…の方へ。「西へ向かう」 

「今日 (けふ) 、車、京―とりにやる」〈土佐〉 

2 動作・作用の行われる場所・帰着点を表す。…に。「庭へ物を捨てるな」「父も母も留守のところへ訪ねてきた」 

「十月十四日、関東―下着 (げちゃく) 」〈平家・八〉 
===========引用終了 

https://dictionary.goo.ne.jp/jn/166083/meaning/m0u/ 
===========引用開始 
にの意味 

【1】[格助]名詞、名詞に準じる語、動詞の連用形・連体形などに付く。 
1 動作・作用の行われる時・場所を表す。「三時に間に合わせる」「紙上に発表する」 

「熟田津 (にきたつ) ―舟 (ふな) 乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな」〈万・八〉 

「二十一日、卯 (う) の時ばかり―船出 (い) だす」〈土佐〉 
2 人・事物の存在や出現する場所を表す。「庭に池がある」「右に見えるのが国会議事堂です」 

3 動作・作用の帰着点・方向を表す。「家に着く」「東に向かう」 

「蟻のごとくに集まりて、東西―急ぎ、南北―走 (わし) る」〈徒然・七四〉 
===========引用終了 

「方向のヘ」というのは、↑の〈1 動作・作用の移動・進行する目標地点・方向を表す。…の方向に向かって。…の方へ。「西へ向かう」〉のことだろう。 
「目的地のニ」というのは、↑の〈3 動作・作用の帰着点・方向を表す。「家に着く」「東に向かう」〉の「帰着点」のことだろう。 
 ところがもう少しよく読むと、 
「ヘ」には〈2 動作・作用の行われる場所・帰着点を表す。…に。「庭へ物を捨てるな」「父も母も留守のところへ訪ねてきた」〉という使い方もある。これは「目的地のヘ」と言える。 
「ニ」の〈3〉にいたっては〈動作・作用の帰着点・方向を表す〉のだから、「方向のニ」とも言える。 
 つまり、辞書的にはどっちを使っても「間違い」ではない。 
 興味がある人はほかの辞書もひいてみてほしい。『大辞泉』の記述とほとんど同じはずです。 

 ここから先は余談と考えてほしい。 
 これで終わるとアンマリなんで、もう少し付け加える。次の例で考える。 
1)「駅ヘ行く」か「駅ニ行く」か 
 ※これはちょっと曖昧かもしれない。〈「駅ヘ着く」か「駅ニ着く」か〉の二択のほうが明快かも。 
2)「駅方面ヘ行く」か「駅方面ニ行く」か 
3)「北海道ヘ行く」か「北海道ニ行く」か 

 辞書に沿った解釈はすでに書いたので、以下は個人的な感覚で書く。 たまにはこういうのもいいだろう。
1)「駅ヘ行く」か「駅ニ行く」か 
 どちらもおかしくないが、ニのほうが自然だろう。これが〈「駅ヘ着く」か「駅ニ着く」か〉なら、圧倒的にニだろう。理由は……やはり「目的地(帰着点)」はニのほうが自然に感じる。 
 ただし、「駅ヘ行く」と言う人も相当数いる気がする。「駅ヘ着く」は異和感があるが、辞書にもあるんだから「間違い」とは言えない。 
2)「駅方面ヘ行く」か「駅方面ニ行く」か 
 どちらもおかしくないが、ヘのほうが自然だろう。理由は……やはり「方向」はニのほうが自然に感じる。(※いかんなあ。〈やはり「方向」はヘのほうが自然に感じる〉だ) 
3)「北海道ヘ行く」か「北海道ニ行く」か 
 理由はまったくわからないが、行き先が具体的な地名の場合は、「ニ」って気がする。これが「北」なら「北ヘ行く」だろう。

 具体的な地名であれば「ニ」、漠然とそっち方面なら「ヘ」になる。「最果ての地」だと、微妙になるが、どちらかと言うと「ニ」だろうか。 

 さらに話をややこしくすると、「行く」ではなく「向かう」だと、「ヘ」のほうが自然な気がする。文法的には「行く」と「向かう」に違いはないだろうから、理由はわからない。おそらく、「向かう」のほうが方向性を強く意識するからだと思う。 

【20150503追記】 
 アルクの2サイトは勉強になる。 
【引用のご作法12 「に」と「へ」】 
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2853.html 

【20160904追記】
http://www.nhk.or.jp/bunken/research/kotoba/20160501_3.html


【20171125追記】 
〈方向の「ヘ」、目的地の「ニ」〉の例外になりそうな例を思いついた。 
「{右/左}ヘ寄ってください」は、方向だと思うがたぶん「ニ」のほうが自然。 
「前へ進んでください」「後ろへお下がりください」は、微妙だけど「ヘ」のほうが自然な気がする。

 

 

#日本語 #敬語 #誤用 #慣用句 #言葉 #問題 #間違い #二重敬語 #参考書 



語学(日本語) ブログランキングへ